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板取川沿いの地質、露頭 その20 関市洞戸通元寺向橋上流右岸の泥岩

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関市洞戸事務所前の交差点から北へ700mほど進むと、右手に通元寺向橋があります。近くに車を止め、右岸を川へ下りると、橋の20mほど上流に黒っぽい露頭があります。位置的には、洞戸通元寺と栗原の境界付近です。岩石は肉眼で確認する限り、泥岩です。 美濃帯堆積岩類中の泥岩層は、砂岩と同様に陸側から川によってもたらされた泥がもとになっています。そのため、海洋でゆっくり堆積した珪質泥岩層とは異なり、放散虫などの遺骸が混ざっているわけではありません。泥岩層と珪質泥岩層は、同じように黒色に近い色をしていて泥が固まった岩石ですが、供給源や堆積場所が大きく異なっています。ここの泥岩は暗灰色~黒色をしています。やや赤紫色っぽくもありますので、熱変成も受けているかもしれません。  地質図において、×地点が露頭の位置ですが、うす茶色( Mal )の中にあります。うす茶色は砂岩および泥岩の互層からなる地層です。砂岩および泥岩の互層中の泥岩だと思われます。写真は五種類ありますが、上の写真は露頭を北東からパノラマで撮ったもので、中上の写真は上の写真の中央付近を撮ったものです。真中の写真は、上の写真(または中上の写真)に写っているハンマーの左を近づいて撮ったものです。中下の写真は同じ露頭を北(ななめ右側)より撮ったもので、写っている橋が通元寺向橋です。下の写真は岩石の割った面を接写したもので、写真の縦は3cmです。スケールとして置いてあるハンマーの長さは約28cmです。中上と真中、中下の写真は、同じような写真が2枚並んでいますが、写真の下の白丸を、左の写真は左目で、右の写真は右目で見て、重ね合わせるようにすると立体的に見えます。(地質図はHP「ジオランドぎふ」より 岐阜県博物館提供) 美濃地学 - 地学のおもしろさを、美濃から (minotigaku.com)

板取川沿いの地質、露頭 その19 関市洞戸通元寺のメランジュ2(メランジュ中の石灰岩礫) :関市洞戸通元寺の板取川右岸河床露頭(2ヶ所の露頭)

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  前回「板取川沿いの地質、露頭その18」で紹介した関市洞戸通元寺のメランジュの露頭は連続露頭で、南側(下流側)には石灰岩の礫(岩塊)が入っている箇所が2ヶ所あります。今回はその2ヶ所の露頭を紹介します。 メランジュは、日本列島の多くの部分を占める付加体堆積物に特徴的な地質体で、さまざまな岩石が変形し、混合した状態にあるものを指します。フランス語の「混合」を意味していて、「メレンゲ」が語源です。ただし、付加体堆積物である美濃帯堆積岩類中の メランジュは、単にごちゃごちゃに混ざっているわけではなく、あくまでも海洋プレート層序(下位から玄武岩質火成岩類(→石灰岩)→チャート→珪質泥岩→砂岩・泥岩)を基本として、層序を反映しながら混ざっている場合が多いようです。 石灰岩は、海洋上のサンゴ礁がもとになった岩石です。サンゴ礁は温かく浅い海において、サンゴ、貝類、石灰藻、有孔虫、コケムシなどの炭酸カルシウムを主成分とした殻をもつ生物が礁を形成したものです。そのため、石灰岩にはサンゴ礁が形成された当時に生きていた化石が残っていることが多いです。ここでは、フズリナが密集している礫とウミユリの茎の部分が見られる礫が見られます。 地質図において、×地点が露頭の位置ですが、白色( a )の中にあり、白色は第四紀の堆積物です。東(右)には灰色( Mmx )が分布していて、メランジュからなる地層です。第四紀の堆積物の下に分布している岩石が露出しているのです。写真は五種類ありますが、上の写真は石灰岩礫が入った露頭を東からパノラマで撮ったもので、中上の写真は上の写真の中央付近を南東から(左斜めから)撮ったものです。真中の写真は、石灰岩礫を接写したもので、数 mm の径をもつ丸っこいフズリナが密集しているのがわかります。写真の縦は3 . 5cmです。中下の写真も石灰岩礫(170cm×100cm)が入っている露頭で、北からパノラマで撮りました。その石灰岩礫を接写したのが下の写真です。写真の縦は3cmですが、ウミユリの茎部がわかります。スケールとして置いてあるハンマーの長さは約28cmです。中上の写真は、同じような写真が2枚並んでいますが、写真の下の白丸を、左の写真は左目で、右の写真は右目で見て、重ね合わせるようにすると立体的に見えます。(地質図はHP「ジオランドぎふ」より 岐阜県博物館提

板取川沿いの地質、露頭 その18 関市洞戸通元寺のメランジュ1 :関市洞戸通元寺の板取川右岸河床連続露頭

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  2020年11月24日付け「板取川沿いの岩石その6」で紹介した洞戸通元寺のメランジュの露頭を再度紹介します。この露頭は、詳しく調査されていて、「市場のメランジュ露頭」として知られていますが、場所としては洞戸通元寺の右岸河床です。 美濃市から関市洞戸に向かう県道81号美濃洞戸線を西進し、関市洞戸に入り、突き当りである関市洞戸事務所前交差点まで進みます。交差点の手前にある橋が洞戸橋ですが、橋から北側を見ると、板取川沿いに岩石が露出しているのがわかります。その場所が紹介する露頭です。交差点を右折して国道256号を300mほど進み、東(右)に延びる細い道(通元寺のバス停のすぐ北の道)を入ります。車を停めて、川原の方に進むと、上流右岸に多くの露頭が広がっています。 美濃帯堆積岩類の中には、地質としての連続性がなく、泥岩などの細粒の基質の中にいろいろな大きさや種類からなる礫や岩塊を含むような地質体が見られます。それを「メランジュ」と呼びます。砂岩・珪質泥岩・チャート・石灰岩・火山岩類(玄武岩質溶岩等)などの礫や岩塊が、泥岩の基質の中に埋められたように含まれている岩石(岩石名としては混在岩としておきます)です。関市洞戸通元寺の板取川右岸には、100mほど連続的に岩石が露出しています。全体としては、黒色の泥岩の中にチャートや珪質粘土岩、砂岩泥岩互層の比較的大きな岩塊を伴っているメランジュです。 写真は五種類ありますが、上2枚(上、中上の写真)は連続露頭の北端に分布するチャート層の変形を、下3枚(真中、中下、下の写真)はチャート層の変形の南に分布する混在岩を撮りました。上の写真は変形したチャート層を北からパノラマで撮ったもので、中上の写真は上の写真の中央付近を撮ったものです。真中の写真は混在岩の露頭を西からパノラマで撮ったもので、中下の写真は真中の写真の中央付近を撮ったものです。下の写真は、真中の写真(または中下の写真)に写っているハンマーの50cmほど左を近づいて撮ったものです。砂岩やチャートの角ばった、もしくはレンズ状の礫が多く入っているのがわかります。スケールとして置いてあるハンマーと定規の長さは、それぞれ約28cm、約17cmです。中上と中下の写真は、同じような写真が2枚並んでいますが、写真の下の●を、左の写真は左目で、右の写真は右目で見て、重ね合わせるように

板取川沿いの地質、露頭 その17 関市洞戸市場の砂岩層中の貫入岩 :関市洞戸市場の板取川曲流部付近の右岸露頭

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  板取川は蛇行をしながらおもに南へ流れ、洞戸市場で支流の菅谷川と合流し、東に向きを変え美濃市街地の北で長良川と合流しています。菅谷川と合流し、東に向きを変える付近に露頭があります。露頭表面が風化し、植物もかなり生えているため、観察しにくいですが、砂岩層の中に貫入岩が見られます。貫入岩は淡青緑灰色で、肉眼ではほとんど鉱物が確認できませんが、1mm前後の径の石英が少し入っているのが確認できますので、フェルサイト(珪長岩)だと思います。ただし、詳しく検討しているわけではありませんので、ここでは貫入岩としておきます。 板取川は関市洞戸市場~美濃市蕨生にかけて、おもに砂岩層が分布しているところを流れているため、砂岩層の露頭が多く見られます。この周辺にも砂岩層が広く分布しています。板取川沿いの特徴として、長良川沿いとは異なって奥美濃酸性岩類と呼ばれる火山岩類や花崗岩が見られます。その火山活動の一環で、マグマがそれ以前に堆積した岩石を貫いて、地表へ出ることなく地下で冷え固まることがあります。その貫入岩がこの露頭では見られます。露頭で観察する限り、貫入岩の幅は2m以上、砂岩層との境界は北北西-南南東を走向として、東北東へ50°ほど傾いています。貫入岩には節理面が1方向に発達していますが、その向きも砂岩層との境界と調和的で、北西-南東を走向として、北東へ50°ほど傾いています。 地質図において、露頭(×地点)は黄色( Mss )の中にあり、黄色はおもに砂岩からなる地層です。貫入岩は小規模であるため表現されていませんが、×地点の北東に見られる濃いピンク色( OKg )と同様のものだと思います。濃いピンク色は奥美濃酸性岩類の貫入岩類です。写真は五種類ありますが、上の写真は南からパノラマで撮ったもので、中上の写真は上の写真の中央付近を撮ったものです。真中の写真は上の写真(または中上の写真)に写っているハンマー付近を近づいて撮ったものです。ハンマーのグリップ部分が砂岩層と貫入岩の境界部です。中下の写真は、中上の露頭の数m南の露頭を北から撮ったもので、左側が砂岩で右側が貫入岩ですが、写真ではわかりません。下の写真は岩石を割って接写したもので、左が砂岩で、右が貫入岩です。写真の縦は3cmです。スケールとして置いてあるハンマーの長さは約28cmです。中上と真中、中下の写真は、同じような写

板取川沿いの地質、露頭 その16 関市洞戸大野の砂岩層 :関市洞戸大野の下洞戸橋近辺の左岸河床露頭

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  前回「板取川沿いの地質、露頭その15」で紹介した洞戸大野の還流丘陵から西へ300mほど進むと、左手に下洞戸橋があります。その下洞戸橋の周辺には、板取川左岸河床に岩石が露出しています。その露出する岩石は、還流丘陵で見られるチャート層とは異なり、砂岩層です。 美濃帯堆積岩類中の砂岩層や泥岩層は、陸地から河川によって海洋へ運ばれた砂や泥がもとになっています。他の玄武岩質火山岩類、石灰岩、チャート、珪質泥岩などは、陸地から離れた海洋で噴出したり堆積したりしたものが、海洋プレートにのって陸地側へ移動し、大陸の縁(現在の日本列島)に付加したものです。その際に、海洋へ運ばれた砂(砂層)や泥(泥層)も一緒に付加しました。そして、その付加した砂(砂層)が固結し、美濃帯堆積岩類中の砂岩層となりました。ここで見られる砂岩層は、全体的に灰色で、おもに中粒の砂粒からできています。層理は見たところわかりません。ただし、割れ目が一方向に卓越している部分があり、割れ目の面の走向傾斜を測ったところ、北東-南西を走向として、北西に70°ほどの傾斜です。 地質図において、露頭(×地点)は黄色( Mss )の中にあり、黄色はおもに砂岩からなる地層です。写真は五種類ありますが、上の写真は北西からパノラマで撮ったもので、赤い橋は下洞戸橋です。中上の写真は上の写真の中央付近を撮ったもので、真中の写真は上の写真(または中上の写真)に写っているハンマー付近を近づいて撮ったものです。中下の写真は、割れ目が一方向に卓越している部分を南西から撮ったものです。下の写真は砂岩の風化面を東から接写したもので、写真の縦は3cmです。スケールとして置いてあるハンマーの長さは約28cmです。中上と真中、中下の写真は、同じような写真が2枚並んでいますが、写真の下の白丸を、左の写真は左目で、右の写真は右目で見て、重ね合わせるようにすると立体的に見えます。(地質図はHP「ジオランドぎふ」より 岐阜県博物館提供) 美濃地学 - 地学のおもしろさを、美濃から (minotigaku.com)

板取川沿いの地質、露頭 その15 洞戸大野の還流丘陵ほか :関市洞戸大野、市場、飛瀬

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  河川は、本来直線的に流れるものではなく、曲がりくねって流れることが多いです(曲流、または蛇行といいます)。平野において、河川が曲流し、その後曲流したところがショ-トカットされ、曲流部が三日月状の水たまりとして残ることがあります。三日月湖と呼びます。それと同じことが長良川、板取川沿いでもありますが、平野ではありませんので、三日月湖として残るのではなく、丘陵(小高い山)と平地がペアになって残っています。残った小高い山を還流丘陵と呼びます。板取川沿いの還流丘陵は2020年11月23日「板取川沿いの岩石その5」で紹介しましたが、再度紹介します。 板取川も長良川と同様で、主に美濃帯堆積岩類の中を流れています。 美濃帯堆積岩類は付加体堆積物のため、チャートのような浸食に強い岩石と、砂岩のような浸食にそれほど強くない岩石が隣り合って分布しているところがあります。一概には言えませんが、チャートなどの浸食に強い部分があると、川は浸食しやすい部分(砂岩など)をおもに削りながら曲がりくねって流れます。しかし、曲がり方が大きくなりすぎて、流路(川)はショートカットしてもとの流路につながってしまうことがあります。そうすると、蛇行部分が流路から切り離され、丘陵として残るのです。そして、その残った丘陵部分は浸食に強いチャートなどでできている場合が多いです。洞戸大野においても、丘陵部はチャートでできていて、周囲は砂岩からできています。次回「板取川沿いの地質、露頭その16」で、洞戸大野の還流丘陵の近くに露出する砂岩層を紹介します。  美濃市から関市洞戸に向かう県道81号美濃洞戸線で美濃市と関市の境界を越し、さらに1 . 2kmほど進むと、洞戸の大野地区が道路の右(北側)に広がります。中濃消防組合洞戸出張所が右手にありますが、その北西の山が還流丘陵です。 還流丘陵は、洞戸大野(赤丸)のほかに 洞戸市場(青丸)や飛瀬(緑丸)でも見られます。 地質図において、〇印が還流丘陵です。写真は五種類ありますが、上の写真は下洞戸橋から北東側を望んで大野の還流丘陵を撮ったもので、中上の写真は上の写真の中央付近を撮ったものです。その還流丘陵に近づいて、南からチャート層を撮ったのが真中の写真です。県道81号沿いにある中濃消防組合洞戸出張所の西に墓地がありますが、その脇でチャート層が見られます。スケールとし