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板取川沿いの地質、露頭 その9 美濃市乙狩口本の珪質粘土岩と層状チャート :美濃市乙狩口本の左岸河床露頭

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  美濃市から関市洞戸に向かう県道81号美濃洞戸線で、美濃和紙会館をさらに2kmほど西へ進むと、左手に上牧橋があります。そこを渡らずに県道81号をそのまま400mほど進んだところで、徒歩であれば川へ下りることができます。車の整備工場の南100mほどの地点です。車は近くに止めます。川原まで進み、上流を望むと河床に連続して黒っぽい露頭があります。美濃帯堆積岩類の珪質粘土岩が変形したり、破砕したりしている露頭と、層状チャートがブロックとして入っている露頭が見られます。 珪質粘土岩は粘土鉱物からなる岩石で、美濃帯堆積岩類においては チャート層に伴って存在し、中に黒色の珪質泥岩をはさむことを特徴としています。調査研究によって、中生代三畳紀の層状チャートの基底部に存在することがわかっていて、三畳紀初期における酸素が少ない状態の海洋で堆積したものだと考えられています。ここで見られる珪質粘土岩と珪質泥岩は、1cm~10cm厚の淡黄灰色をした珪質粘土岩と1cm~数cm厚の黒色をした珪質泥岩が互層をしていて、全体的に褶曲が激しいです。ブロック状になっている部分もあります。また、南北に25mほど、東西に10mほどのブロック状の層状チャートも見られ、暗灰色~黒色をした数cm~7cm厚のチャート層に1mm~数mm厚の灰色をした泥岩層がはさまっています。 地質図において、×地点が露頭の位置ですが、白色( a )の中にあり、白色は第四紀の堆積物です。周囲は黄色( Mss )が広く分布していて、おもに砂岩からなる地層です。砂岩層の中に、珪質粘土岩と層状チャートがブロックで入っていると思われます。写真は五種類ありますが、上の写真は、珪質粘土岩が褶曲している露頭を北西からパノラマで撮ったものです。中上の写真は、上の写真の中央少し右を撮ったものです。真中の写真は、上の写真(または中上の写真)の露頭から南東へ7mほど進んだところにある露頭を南西(左側)から撮ったものです。珪質粘土岩が見やすい露頭です。その露頭にもう少し近づいて撮ったのが、中下の写真です。下の写真は、上の写真(または中上の写真)の露頭から南南東に15mほど離れたところの露頭を南東から撮ったものです。層状チャートで、25m×10mほどの露頭です。スケールとして置いてあるハンマーの長さは約28cmです。中上と真中、下の写真は、同じような

板取川沿いの地質、露頭 その8 美濃市乙狩新河の砂岩層 :美濃市乙狩新河の右岸露頭

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 美濃市から関市洞戸に向かう県道81号美濃洞戸線で、美濃和紙会館をさらに2kmほど西へ進むと、上牧橋があります。上牧橋を渡り、右折して70mほどのところにある細い堤防道路に入ります。直進し、右折したところから250mほど進むと、川原へ降りる道がありますので、そこを下りて車を止めます。上流へしばらく進むと、右岸河床に砂岩層が露出しています。河川に沿って、幅10mほどで長さ50m強のほぼ連続した露頭で、灰色~暗灰色をした細粒から中粒の砂からなる砂岩層です。約5cm幅の黒色の泥岩層を挟む部分もあります。挟まれた泥岩層は、ほぼ東西を軸として、北に 55°ほど傾斜しています。  板取川は、関市洞戸市場より上流はほぼ北から南へ蛇行しながら流れていますが、洞戸市場から下流は向きを変え、西から東、もしくは北西から南東へ流れ、美濃市街地の北で長良川と合流しています。美濃帯堆積岩類は、地質図によると、いろいろな堆積物(砂岩、泥岩、チャート、珪質泥岩、石灰岩、玄武岩など)が複雑に分布していますが、大まかに見ると、同じ岩相が東-西、もしくは南東-北西に伸びている地域が多いです。そのため、河川が南北方向に流れていると、異なる岩相を貫くように流れることになりますが、東西に流れていると、同じ岩相の中を流れることになり、河川沿いの岩石(露頭)が同じような岩石からなっていることが多いです。美濃市蕨生地区から関市洞戸市場地区にかけてはチャートも部分的に分布しますが、主には砂岩層が分布しています。そのため、砂岩層の露頭が多く見られます。  地質図において、×地点が露頭の位置ですが、白色( a )、空色の中に記号あり( a2 )の中にあり、白色と空色の中に記号ありは第四紀の堆積物です。周囲は黄色( Mss )が広く分布していて、おもに砂岩からなる地層です。第四紀の堆積物の下に分布している砂岩層が露出しています。写真は五種類ありますが、上の写真は北西から(下流を向いて)パノラマで撮ったもので、中上の写真は上の写真の中央少し左を撮ったものです。真中の写真は、上の写真(または中上の写真)のハンマー付近を近づいて撮ったものです。中下の写真は、泥岩層が挟まっている場所を南西から撮ったものです。下の写真は露頭の表面(砂岩)を接写したもので、写真の縦は5cmです。 スケールとして置いてあるハンマーの長さは約28

板取川沿いの地質、露頭 その7 美濃市蕨生西屋敷の砂岩層 :美濃市蕨生西屋敷の左岸露頭

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 美濃市から関市洞戸に向かう県道81号美濃洞戸線で、片知川を越えて1 . 3kmほど進むと、左に蕨生大橋があります。そこを渡らずに県道81号をそのまま700mほど進むと、北から流れている矢坪谷を渡る小さな橋(和紙橋)があります。近くに車を停め、橋の手前から川原に下り、上流(西)へ150mほど進むと板取川左岸に岩石が露出しています。東西に40mほど、南北に30mほどの露頭です。美濃帯堆積岩類の砂岩層です。この露頭は、2020年11月19日「板取川沿いの岩石その4」でも紹介しています。 美濃帯堆積岩類中の砂岩層は、河川によって陸地から海洋へ運ばれた砂がもとになっています。陸地から離れた海洋で噴出したり堆積したりした玄武岩質火山岩類、石灰岩、チャート、珪質泥岩などが、海洋プレートにのって陸地側へ移動し、大陸の縁(現在の日本列島)に付加しました。その際に、陸地側から海洋へ運ばれた砂(砂層)も一緒に付加しました。そして、その砂(砂層)が固結し、美濃帯堆積岩類中の砂岩層となりました。ここで見られる砂岩層は、おもに中粒の砂粒からできていて、細粒の砂粒も一部には見られます。全体的には灰色です。また、割れ目があり、いくつかの面を構成しています。走向、傾斜を測ったところ、北北西-南南東~西北西-東南東を走向として、西南西~南南西に40°~45°の傾斜面が多く、北東を走向として、北西に45°の傾斜面もあります。  地質図において、×地点が露頭の位置ですが、白色( a )の中にあり、白色は第四紀の堆積物です。周囲は黄色( Mss )が広く分布していて、おもに砂岩からなる地層です。第四紀の堆積物の下に分布している砂岩層が露出しているのです。写真は五種類ありますが、上の写真は西からパノラマで撮ったもので、中上の写真は上の写真の中央少し右を撮ったものです。真中の写真は上の写真の露頭を北北西(左側)からパノラマで撮ったもので、中央付近を撮ったのが中下の写真です。下の写真は砂岩を接写したもので、写真の縦は3cmです。 スケールとして置いてあるハンマーの長さは約28cmです。中上と中下の写真は、同じような写真が2枚並んでいますが、写真の下の白丸を、左の写真は左目で、右の写真は右目で見て、重ね合わせるようにすると立体的に見えます。(地質図はHP「ジオランドぎふ」より 岐阜県博物館提供) 美濃地学

板取川沿いの地質、露頭 その6 美濃市蕨生下屋敷対岸の砂岩層(漣痕?) :美濃市蕨生下屋敷対岸(右岸)河床露頭

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 「板取川沿いの地質、露頭その1、2」で紹介した美濃市蕨生下屋敷対岸の河原から、上流へ数10m進んだところに南北に23mほど、東西に17mほどの河床露頭があります。砂岩層です。  ここの砂岩は灰色で、主に中粒砂からなります。 砂岩層は褶曲していて、層理面は一定していませんが、水平に近い面もあり、その一部にうっすらですが波状の模様が見られます。美濃帯堆積岩類の砂岩層は、河川によって陸地から海洋へ運ばれた砂がもとになっていますが、海洋プレートにのって運ばれてきた堆積物などと混ざり合って、陸地へ付加したものです。そのため、美濃帯堆積岩中の砂岩層には、波状を示す漣痕などは非常に残りにくいはずです。そのようなことから、漣痕と思われる部分を写真で示しておきますが、はっきりしたことはわかりません。また、淡灰色 ~ 灰色の泥岩が層ではなく、レンズ状に入っている部分があります。長さ3 . 3mほど、幅1 . 2mほどです。砂岩も入り込んではいますが、全体的にはレンズ状の泥岩です。  地質図において、×地点が露頭の位置ですが、白色( a )の中にあり、白色は第四紀の堆積物です。周囲は黄色( Mss )が広く分布していて、おもに砂岩からなる地層です。この露頭は、第四紀の堆積物の下に分布している砂岩層が露出したものです。写真は五種類ありますが、上の写真は漣痕?が見られる砂岩層を中心にして南からパノラマで撮ったもので、中上の写真は上の写真の中央付近を撮ったものです。真中の写真は、上の写真(または中上の写真)に写っているハンマーの右側を近づいて南から撮ったものです。ハンマーの右側少し離れた部分に、うっすら縦に波状を示す痕が見られます。数mmの高さの違いですが、平行な高い部分と低い部分はが3列確認でき、波長(高いところから高いところの幅)は、7~11cmです。中下の写真は、波状を示す痕を西上から横長で撮ったもので、定規(約17cm)の左側に写っています。下の写真は、上の写真のハンマーの位置から南へ3mほどの露頭を撮ったものです。砂岩の中にレンズ状の泥岩が入っています。スケールとして置いてあるハンマーと定規、黄色の折れ尺の長さは、それぞれ約28cm、約17cm、1mです。中上と真中の写真は、同じような写真が2枚並んでいますが、写真の下の白丸を、左の写真は左目で、右の写真は右目で見て、重ね合

板取川沿いの地質、露頭 その5 美濃市片知片知渓谷千畳岩の溶結凝灰岩 :美濃市片知の片知渓谷左岸露頭

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片知渓谷は板取川の本流沿いではありませんが、溶結凝灰岩の見やすい露頭がありますので、紹介します。この露頭は、3年前の11月18日「板取川沿いの岩石その3」でも紹介しました。板取川やその支流沿いのところどころには、奥美濃酸性岩類と呼ばれる火山岩類が分布しています。岐阜県には、県の約1/4の面積を占めるほど巨大な濃飛流紋岩が分布しています。濃飛流紋岩の西側に分布する火山岩類が奥美濃酸性岩類です。奥美濃酸性岩類は、濃飛流紋岩よりも1500万年ほど若い時期に形成された岩体で、現在は美濃市北部、関市洞戸~板取、郡上市八幡町西部などの山頂や尾根上などの標高の高いところに点在するように分布しています。もとは現在分布するよりももっと大きな岩体であったと考えられますが、長い間に多くが浸食されてしまったようです。そのため、岩体の比較的深部が残されて、現在は7つの岩体に分かれて分布しています。 美濃市から関市洞戸に向かう県道81号美濃洞戸線は、板取川の左岸沿いを通っています。美濃市長瀬地区を越して進むと、板取川の支流である片知川を渡ります。渡ってすぐを右折し、片知川の上流に向かってしばらく車を走らせます。片知の集落を越えて、右折したところから7.2kmの左手に川へ下りる細い道がありますので、近くに車を止め徒歩で川へ下ります。以前はその場所に「千畳岩入口」の表示板がありましたが、現在はありません。右折したところから6 . 3kmのところに「片知渓谷遊歩道入口」の表示板がありますが、そこではなく、さらに0 . 9km進んだところです。川へ下りると、両岸や河床に岩石が露出していますが、奥美濃酸性岩類の洞戸岩体(7つの岩体の一つ)です。岩石名としては、溶結凝灰岩です。 火山活動で噴出した大量の火山灰が、自らの重みと熱のために互いにくっつき合ってできた硬い岩石です。溶結凝灰岩には、長石や石英、黒雲母などの鉱物の他に、つぶれて扁平になった軽石(本質レンズと呼ぶ)や噴出時に取り込まれた美濃帯堆積岩類の破片(異質岩片と呼ぶ)が入っていることが多いです。 地質図において、片知渓谷の露頭地点(×地点)は黄土色に横線あり( OK3 )の中にあり、黄土色に横線ありは奥美濃酸性岩類の洞戸岩体の上部層(高賀山層・片知山層)です。写真は五種類ありますが、上の写真は南東からパノラマで撮ったもので、その中央付近を

板取川沿いの地質、露頭 その4 美濃市片知穴洞の北の花崗斑岩(貫入岩) :美濃市片知穴洞の北の右岸露頭(片知川と板取川の合流地点より下流へ100mほどの対岸)

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3年前の11月17日「板取川沿いの岩石その2」で紹介した美濃市片知穴洞の北の右岸で見られる花崗斑岩を再度紹介します。前回「板取川沿いの地質、露頭その3」の上流250mほどの露頭です。県道81号美濃洞戸線の穴洞橋の上流に城山橋があります。その城山橋を西へ渡り、しばらく進むと三叉路があります。近くで車を止め、三叉路を左折し250mほど進みます。板取川の右岸を下流に向かって進むことになります。川へ下りる細い道がありますので、そこを下り、川の右岸をさらに200mほど下流へ進むと、南北に数10mの露頭があります。片知川と板取川の合流地点の下流へ100mほど進んだ対岸の位置です。露出しているのは、美濃帯堆積岩類に貫入している花崗斑岩です。淡灰色をしていて、数 mm ~5 mm の大きさのカリ長石が目立ちます。節理が目立つ場所があり、走向(傾きの軸)は東北東-西南西で、南南東に30~35°傾いています。  地質図において、この露頭(×地点)は濃いピンク色( Okg )の中にあり、濃いピンク色は奥美濃酸性岩類関連の岩脈(貫入岩)です。写真は五種類ありますが、上の写真は花崗斑岩の露頭を南南西(下流側)からパノラマで撮ったもので、中上の写真は上の写真の中央少し右を撮ったものです。真中の写真は北北東(上流側)からパノラマで撮ったもので、中下の写真は真中の写真の中央右を撮ったものです。節理が右上から左下に発達しているのがわかります。また、真中の写真で中央の上部に小さく写っている露頭は、「板取川沿いの地質、露頭その3」で紹介したチャート層の露頭です。下の写真は花崗斑岩の割った面を接写したもので、写真の縦は3cmです。スケールとして置いてあるハンマーの長さは約28cmです。中上と中下の写真は同じような写真が2枚並んでいますが、それぞれの写真の下の黒丸または白丸を、左の写真は左目で、右の写真は右目で見て、重ね合わせるようにすると立体的に見えます。(地質図はHP「ジオランドぎふ」より 岐阜県博物館提供) 美濃地学 - 地学のおもしろさを、美濃から (minotigaku.com)