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長良川鉄道沿いの地形・地質編 その10 国道156号木尾橋下の長良川とチャート :母野駅~木尾駅間、母野駅から出発して約1分後、右車窓より

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  長良川鉄道下りにおいて、母野駅出発後1分弱でトンネルを通り、抜けるとすぐに短い橋梁を渡ります。その時、国道156号の木尾橋と並行に走っています。木尾橋は長良川を渡るためではなく、長良川の右岸に川を避けるように架けられている橋です。直接確認しているわけではありませんが、岐阜県中濃消防組合の消防署員に聞いたところによると、この木尾橋の下の水深が長良川の中で一番深く、20mほどあるようです。3年前の10月13日「長良川鉄道の車窓からみた岩石その2」で紹介していますが、再度紹介します。 木尾橋の下は、河川の攻撃斜面(カーブの外側)であるため流れが速く、浸食が激しいです。また、この場所の周辺は、メランジュと呼ばれる基質となる泥岩の中に大小の岩塊が入っている地質体からなっています。特に橋の近くにはチャートが分布していて、チャートは非常に硬いです。地質図を見ると、この地点(×地点)周辺は灰色( Mmx )が分布し、×のすぐ下(南)には東西に長細くオレンジ色( Mch )が分布します。灰色はメランジュからなる地層で、オレンジ色はおもにチャートからなる地層です。この地質図は基本的に5万の1の縮尺で作成されていますので、メランジュの中の巨大な岩塊(数100m以上)は表現されていますが、数10m以下の岩塊は表現されていません。そのため、灰色( Mmx )で表されている部分(メランジュからなる地層)には、地質図に表されているチャート(オレンジ色( Mch ))、珪質泥岩(そら色( Msi ))、玄武岩質火山岩類(緑色( Mbs ))、砂岩(黄色( Mss ))の巨大岩塊だけではなく、もっと小さな(小さなと言っても数10mオーダーのものもあり)岩塊が多く含まれています。メランジュの中にチャートなど硬い岩石が含まれていると、メランジュの基質である泥岩の部分が主に浸食され、チャートの部分は削られることなく残ることになります。その結果、河川の攻撃斜面で激しい浸食のため形成した深い穴が保存されたと考えられます。 写真が四種類ありますが、上と中上の写真は列車の車窓から木尾橋と川を撮ったものです。中下の写真は長良川鉄道トンネルの北口の東で見られるチャート層です。下の写真は、木尾橋から長良川鉄道の列車(下り)を撮ったものです。トンネルを出てすぐのところを北から撮りました。中下の写真は、「長良川

長良川鉄道沿いの地形・地質編 その9 洲原駅の北周辺の長良川の蛇行 :洲原駅~母野駅間、洲原駅から出発してからトンネルを抜けるまで(約1分間)、前方または右車窓より

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  現在の河川は、人工的な堤防に囲まれた中を流れていることが多いです。もちろん、洪水、川の氾濫を防ぐため堤防の中を流れるようにしているのですが、そのため、河川は真っすぐに流れるものというイメージがあります。しかし、本来河川は曲がりながら(蛇行しながら)流れ、流量が増えると洪水を起こし、流路を変えながら流れるものです。現在の河川は本来の河川というよりも、用水に近いです。しかし、河川の流路はヒトが生きているはるか昔より、水がより低いところへ移動する流れとして形成されたものです。そのため、地形図や空中写真などマクロの目で見ると、どの河川もかなり蛇行しているのがわかります。長良川も蛇行をしながら流れているのですが、国道156号や長良川鉄道から見る長良川はあまり蛇行しているようには感じません。それは蛇行している部分をショートカットして進んでいるためです。長良川鉄道洲原駅の周辺で長良川は大きく蛇行しています(地質図の赤線で囲った部分)。洲原駅を出発すると右車窓からは長良川が見え、約30秒後には前回「 長良川鉄道沿いの地形・地質編その8 」で紹介した玄武岩質溶岩の露頭も見えます。しかし、それから少しの間(約1分間)は長良川が見えませんが、トンネルを通過後、見にくいですが右車窓から長良川が見えます。その長良川が見えない間は約700mですが、実際には長良川は蛇行していて約2800mを流れています。長良川鉄道はトンネルによってショートカットしているのです。 地質図を見ると、洲原駅の北周辺にはいろいろな岩石が分布していることがわかります。白色( a )と薄空色( th )は第四紀の堆積物で、平地を構成しています。緑色( Mbs )、空色( Mlm )、黄色( Mss )、灰色( Mmx )、オレンジ色( Mch )、青紫色( Mto )はいずれも美濃帯堆積岩類で、それぞれおもに玄武岩質火山岩類からなる地層、おもに石灰岩からなる地層、おもに砂岩からなる地層、メランジュからなる地層、おもにチャートからなる地層、珪質粘土岩(黒色泥岩をはさむ)からなる地層です。写真が五種類あります。上と中上、真中の写真は、いずれも列車内から撮ったものです。上の写真は長良川鉄道(下り)の洲原駅出発から30秒ほどたったところで前方の車窓から、中上の写真はトンネルに入るところ(洲原駅出発後約1分後)で前方の車窓か

長良川鉄道沿いの地形・地質編 その8 洲原駅の北から見える玄武岩質溶岩 :洲原駅~母野駅間、洲原駅を出発して約30秒後、右車窓より

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  長良川鉄道沿線で有名な史跡、寺社は何ヶ所かありますが、洲原駅の近くの洲原神社もその一つです。洲原神社は、奈良時代に泰澄によって建立されたと伝えられていて、全国に四十九社ある洲原神社(または須原神社)の本山のようです。白山を信仰の山としていて、白山の前宮として、長滝白山神社、白山中居神社とともに白山信仰の対象です。その洲原神社の南( 長良川右岸 )に見られる 島状の 岩は、玄武岩質溶岩です。3年前の8月3日 「長良川沿いの玄武岩質溶岩」、10月12日「長良川鉄道の車窓からみた岩石その1」、一昨年の10月25日「長良川本流沿いの露頭その28」で紹介しましたが、再度紹介します。 美濃帯堆積岩類は美濃地方に広く分布しますが、2億9000万年~1億4000万年ほど前に海洋で噴出したり堆積したりしたものが、海洋プレートに運ばれ、プレートの沈み込みによって大陸の縁(現在の日本列島)に付加した岩石です。そのため、火山から噴出した玄武岩質溶岩などの火山岩類も含まれます。洲原神社の南には玄武岩質溶岩が分布し、突出している岩にはくずれた楕円の形をした岩がいくつも積み重なっているように見えるところがあります。枕状溶岩と呼ばれるもので、玄武岩質溶岩のような粘性の低い(粘り気の少ない)溶岩が海中で噴出したり、噴出後海中へ入ったりしたときにできる特徴的な溶岩です。 地質図において、この玄武岩質溶岩の露頭(×地点)および北東には緑色( Mbs )が分布しますが、緑色はおもに玄武岩質火山岩類(緑色岩とも呼ぶ)からなる地層です。×地点の北東に小規模に分布するそら色( Mlm )はおもに石灰岩からなる地層、対岸(左岸)の黄色( Mss )はおもに砂岩からなる地層です。写真が四種類ありますが、上の写真は、長良川鉄道(下り)の洲原駅を出発して30秒ほどたったところで、右車窓から撮ったものです。ほぼ真中に写っている岩が玄武岩質溶岩です。手前の道路は国道156号です。中上の写真は実際にその岩に近づいて南から横長で撮ったもので、左側の島状に露出している岩と右側に続いている岩は玄武岩質溶岩で、手前に分布しているのは砂岩層です。中下の写真は中上の写真の左側に写っている玄武岩質溶岩を撮ったもので、上の写真に写っている岩の左部分です。下の写真は、中下の写真の中央右少し離れているところに写っているハンマーの左側

長良川鉄道沿いの地形・地質編 その7 湯の洞温泉口駅~洲原駅間の鉄橋(第一長良川橋梁)下の砂岩、砂岩泥岩互層 :美濃市湯の洞温泉口駅~洲原駅間、湯の洞温泉口駅出発後1分30~45秒後、左車窓より下方を望む

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  長良川には、長良川鉄道の鉄橋(40m以上)が15ヶ所にあります。長良川鉄道の鉄橋の中で、長良川の最も下流に架かる橋が第一長良川橋梁です。第一長良川橋梁の上には、東海北陸道の立花橋が架かっています。長良川鉄道では、列車が長良川沿いを走っている時に、車窓から長良川沿いに露出している岩石を見ることもありますが、一瞬しか見られない場合が多いです。ただし、鉄橋で川を横切る時に見られる露頭は、けっこう長い時間見ることができます。 湯の洞温泉口出発後1分30秒~1分45秒後あたりで、第一長良川橋梁を通ります。列車から長良川を眺めると、川底も見え、川の中に岩が露出しているのも確認できます。直接確認はしていませんが、岩石の状態や右岸の露頭の岩石から判断すると、川の中の岩石は砂岩層、砂岩泥岩互層だと思います。橋梁(鉄橋)を渡り終えるとすぐにトンネルに入りますが、その手前で左車窓から下方を見ると、長良川の右岸側(北側)に砂岩泥岩互層が露出しているのがわかります。その露頭は、一昨年の9月30日「長良川本流沿いの露頭その13」で紹介している露頭です。 砂や泥などは、陸地から川によって浅海に運ばれます。砂と泥の混じったものが海底の斜面で移動し、より深い海底へ流れ込む時、粒子の粗い砂は下方に堆積し、その上に粒子の細かい泥が載ります。何回も繰り返して流れ込むと、砂と泥が縞状になって堆積するのです。それが砂泥互層で、固結し岩石になると砂岩泥岩互層です。ここで見られる砂岩泥岩互層は、数cm~20cm厚の暗青灰色をした砂岩層に、1cm~数cm厚の黒色をした泥岩層がはさまっている状況ですが、全体的には砂岩層が目立っています。 地質図を見ると、第一長良川橋梁の下には黄色( Mss )が分布していて、その北のトンネル部はオレンジ色( Mch )が分布しています。黄色はおもに砂岩からなる地層、オレンジ色はおもにチャートからなる地層です。写真が五種類ありますが、上の写真は第一長良川橋梁を通っている最中に車窓から前方を撮ったものです。線路の先にトンネルが見えます。中上の写真は橋梁を渡っている最中に右車窓から撮ったもので、真中の写真は左車窓から下方を撮ったものです。湯の洞温泉口駅出発後1分30秒~45秒ほどのところです。中下の写真は、鉄橋下(長良川右岸)に露出する砂岩泥岩互層を近づいて北からパノラマで

長良川鉄道沿いの地形・地質編 その6 湯の洞温泉口駅近辺で見える美濃市立花地区の還流丘陵 :湯の洞温泉口駅~洲原駅間、湯の洞温泉口駅近辺と出発後50秒ほど、左車窓より

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 長良川沿いには、還流丘陵が見られる場所が何箇所かあります。還流丘陵は、かつて川が曲流して流れ、その後ショートカットしたため、旧河道と新河道にはさまれ小山として残った地形です。長良川鉄道沿線でも見られ、3年前の10月19日 「 長良川鉄道の車窓からみた岩石その5(郡上市美並町根村)」、同じく10月29日 「 長良川鉄道の車窓からみた岩石その12(郡上市八幡町西乙原)」で紹介しました。板取川沿いでも、3年前の11月23日「板取川沿いの岩石その5(関市洞戸大野ほか:還流丘陵)」で紹介したように見られます。 美濃市立花地区にも、長良川の右岸側(西側)に還流丘陵があります。還流丘陵は、上述したように 現在流れている河川の流路と、かつて流れていた河川の流路に囲まれている丘陵(小山)です。河川は真っ直ぐに流れるものだと考えがちですが、曲がりくねって流れる(蛇行と呼ぶ)のが本来の姿です。長良川本流の大部分は、美濃帯堆積岩類と呼ばれる岩石の中を流れています。美濃帯堆積岩類は付加体堆積物であるため、チャートのような浸食に強い岩石と、泥岩や砂岩のような浸食にそれほど強くない岩石が接して分布しているところがあります。一概には言えませんが、浸食しにくいチャート層より、浸食しやすい部分(泥岩層や砂岩層など)を主に削りながら曲がりくねって河川は流れます。しかし、曲がり方が大きくなると、流路はショートカットしてもとの流路につながってしまいます。そうすると、蛇行部分が流路から切り離されることになります。その結果、曲がった流路の跡が低地となり、残った部分が丘陵となります。そのため、残った還流丘陵は、浸食しにくいチャート層でできていることが多いです。 地質図において、黄色( Mss )はおもに砂岩からなる地層で、オレンジ色( Mch )はおもにチャートからなる地層です。赤丸に囲まれた部分が立花地区の還流丘陵です。チャートでできているのがわかります。写真が四種類ありますが、上の写真は湯の洞温泉口駅を出発した直後(数秒後)に左車窓から撮ったもので、中上の写真は湯の洞温泉口駅を出発後50秒ほどのところで左車窓からやや後方を撮ったものです。立花地区の還流丘陵は、長良川鉄道の車窓からは短い時間しか見ることができません。郡上市美並町根村地区、郡上市八幡町西乙原地区の還流丘陵は、列車内からしばらく見え、また

長良川鉄道沿いの地形・地質編 その5 湯の洞温泉口駅の南西にあるトンネル(チャート層) :梅山駅~湯の洞温泉口駅間、梅山駅出発後3分強

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  長良川鉄道の起点である美濃太田駅から終点の北濃駅の間には、トンネルが12あります。美濃太田駅からはじめてのトンネルは、湯の洞温泉口駅の南西(湯の洞温泉口駅の手前)にあります。地質図にはトンネルの位置を×で示しましたが、オレンジ色( Mch )が分布していて、オレンジ色はおもにチャートからなる地層です。チャートは、岐阜県ではそこら中にあって、ただの石の代表のようなものです。しかし、チャートは岐阜県の「県の石」です。日本地質学会が創立125周年を迎えるにあたって、全国47都道府県において、その県に特徴的に産出する、あるいは発見された岩石・鉱物・化石をそれぞれの「県の石」として選定したのです。2018年のことです。美濃地方に広く分布しているチャート層は、古生代のペルム紀(2億9000万年~2億4500万年前)から中生代のジュラ紀(2億800万年~1億4600万年前)の時期に、砂や泥が流れ込まないような陸地から離れた深海底に堆積したものです。径が1mmより小さい放散虫などの生物の遺骸等が、1000年に数mmといわれるほどゆっくり堆積して形成された地層です。それが、海洋プレートに載って移動し、日本列島の一部として付加したものを見ているのです。 河川が曲流する場合、外側(攻撃斜面とよぶ)は、流れのスピードが速いため削る力が大きいです。一方、内側(滑走斜面とよぶ)は、流れのスピードが遅いため、浸食より堆積が起こる場合が多いです。小学校5年の理科で習ったと思います。×地点はトンネルの位置ですが、長良川の攻撃斜面にあたり、浸食の場であり、平地がほとんどありません。そのため、それまで平地や緩斜面を走っていた列車は、この場所をトンネルで通過します。 写真が三種類ありますが、上の写真は西から東へ抜けるトンネルの入口を車窓前方から撮ったもので、梅山駅出発後3分強の場所です。中の写真はトンネルを東へ抜けた列車を北より撮ったものです。下の写真は、中の写真の右下のさらに数m右のところを北から撮ったもので、ハンマーの位置にチャート層が露出しています。スケールとして置いてあるハンマーの長さは約28cmです。(地質図はHP「ジオランドぎふ」より 岐阜県博物館提供) 美濃地学 - 地学のおもしろさを、美濃から (minotigaku.com)

長良川鉄道沿いの地形・地質編 その4 南からしばらく見える松鞍山 :関市役所前駅~関下有知駅間、車窓前方より

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  長良川鉄道の起点である美濃太田駅から関下有知駅の間は、ほぼ平地を走りますが、関下有知駅より北は主に山地の間や山地の中を走ります。関市役所前駅~関下有知駅間は、進行方向(北)にそれほど高くはないですが、隣り合った山頂が2つあって鞍のように見えなくもない「松鞍山」がずっと見えています。地質図を見ると、松鞍山(赤丸の中)はチャート層(オレンジ色( Mch ))の間に砂岩層(黄色( Mss ))が入り込んで分布しています。チャート層は硬く侵食を受けにくく、砂岩層はそれほど硬くなく侵食を受けやすいため、チャートの部分が高く、砂岩の部分が低くなり、南の方から見ると両方のチャートの部分が高く、真中の砂岩の部分が低いという鞍のような山の形になるのです。ただし、見る角度によっては、右側(東側)のチャートは高いですが、左側(西側)のチャートが真中の砂岩の部分とあまり高さが変わらないようにも見えます。 チャート層は陸から遠く離れて砂などが届かないような深海で堆積したもので、砂岩層は陸の近くで陸側から流れ込んだものが堆積したものです。地質図上でオレンジ色( Mch )と黄色( Mss )が接している松鞍山のような場所は、堆積した場所と構成するものが全く異なる堆積層が隣り合った状態で分布しているのです。チャート層と砂岩層が繰り返して堆積したわけではなく、陸地の近くで堆積した砂岩層が、海洋プレートに載って移動してきたチャート層などと一緒に、大陸の縁(現在の日本列島)に付加したものがもとになっています。繰り返して堆積したように見えるのは、付加したときに単に混ざり合うのではなく、チャート層と砂岩層がシート状になって、断層に境されながら、お互いにはさまれるような関係になるためです。そのため、隣り合って繰り返して堆積しているように見えるチャート層と砂岩層は、堆積した場所も年代も全く違うものなのです。もちろん、シート状になってはさまっているのは、チャート層や砂岩層だけでなく、泥岩層のような他の堆積層も同様です。 写真が4種類ありますが、上の写真は長良川鉄道の前方の車窓から撮ったものです。市役所前駅を出てから15秒後ほどの写真で、正面の山が松鞍山です。市役所前駅に着く前にも見えています。中上の写真は、関下有知駅の南700mほどの位置(地質図の×地点)から列車と松鞍山を撮ったものです。中下の写真

長良川鉄道沿いの地形・地質編 その3 せきてらす前駅の南の大きなカーブ :関市市街地の関口駅~せきてらす前駅間、関口駅出発後30秒~1分強、車窓前方より

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  鉄道は前回述べたように段差や坂が得意ではありませんが、大きなカーブも得意ではありません。最小の曲線半径も最高速度の区分に応じて定められているようです。 地質図を見るとわかるように、関市において津保川以北には平地が広がっています。うす空色で小さな多角形入りの a2 は、第四紀の堆積物です。そこに北西-南東に延びた硬いチャート層( Mch )(珪質粘土岩( Mto )をはさむ)がところどころに分布しています。チャート層が山として平地の中に突出しているのです。そのため、鉄道はそのチャート層を避けながら通っています。せきてらす前駅(旧刃物会館前駅)の南で急カーブして、それまで東西に走っていた列車は南北に方向を変えて走りますが、チャートの間を通過しながら北へ向かっています。関口駅を出発して1分少し経ったところから大きくカーブします。地形図から判断すると、曲線半径は300mほどです。大きくカーブをし、西から北へ向きを変えて数10秒でせきてらす前駅に着きます。 写真が5枚ありますが、上の写真は大きくカーブする手前を車窓の前面から撮ったもので、関口駅出発から約30秒後の地点です。中上の写真は、大きくカーブしている地点で車窓の前面から撮ったものです。真中の写真も、大きくカーブしている地点で車窓の前面から撮ったものです。真中の写真に写っている踏切の左側で、列車を西から撮ったのが中下の写真です。下の写真は、中下の写真に写っている踏切近くから北を望んで列車を撮ったものです。中下と下の写真を撮影した場所は、せきテラス(関市の施設)の駐車場の近くです。(地質図はHP「ジオランドぎふ」より 岐阜県博物館提供) 美濃地学 - 地学のおもしろさを、美濃から (minotigaku.com)

長良川鉄道沿いの地形・地質編 その2 美濃加茂市加茂野町の坂(木曽川泥流堆積物) :前平公園駅~加茂野駅間、前平公園駅出発後30秒~1分強、左右車窓より

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鉄のレールの上を鉄の車輪によって走る鉄道にとって、弱点の一つは勾配です。そのため、段差や坂がある場合は必ず何らかの工夫がされています。日本の鉄道は原則として、1km(1000m)進むと25mの高さを上るという25‰(パーミル、千分率)を限度としてきたようです。25‰は、角度でいくと1 . 4度です。鉄道では、この程度の勾配でも距離があると難所となるのです。 平地部に坂、段差がある場合、その坂、段差には地質的な意味があることが多いです。美濃太田駅を出発して、最初の駅は前平公園駅です。前平公園駅を出てから、30秒~1分強は上り坂を進んでいます。地質図を見ると、美濃加茂市加茂野町にはうすピンク色( Kmf 、 KD )が広がっています(うす黄色( ST2 )も線路の北には分布しています)が、 KD は木曽谷層で、 Kmf は木曽川泥流堆積物です。木曽川泥流堆積物は、木曽谷層にはり付くように分布しています。特に木曽川泥流堆積物は、他の第四紀の堆積層と異なりやや硬いため、周囲の地層と比べて浸食がされにくく段差を形成します。同じ状況が各務原市の多くを占めている各務原台地の東縁で見られ、木曽川泥流堆積物が各務原層(木曽谷層)にはり付いた状況で分布するため、崖が形成されています。 木曽川泥流堆積物は、中に入っていた木片で年代測定がなされていて、約5万年前の堆積物であることがわかっています。御嶽火山の活動中に発生した大規模な山体崩壊に由来する堆積物で、最初は岩屑なだれとして御嶽山東麓の末川流域に広がって、さらに西野川・王滝川へ下りながら泥流となって木曽川に沿って流れたことがわかっています。中津川市坂下の河岸段丘に載り、美濃加茂市加茂野だけでなく、各務原市まで200kmも流下し、台地を形成している木曽谷層(各務原層)を覆っています。各務原市の木曽川泥流堆積物については、一昨年の3月18日「県内美濃地方編その3」に掲載してあります。  写真が四種類ありますが、上の写真は地質図の×地点あたりで右側車窓(進行方向に対して)から北を撮ったもので、中上の写真は左側車窓から南を撮ったものです。列車は段差を急に上がることはできませんので、地面に盛り土をしてなだらかな坂をつくって

長良川鉄道沿いの地形・地質編 その1 美濃太田駅の西の低位段丘崖 :美濃太田駅~前平公園駅間、美濃太田駅出発後1分20秒ほど、左車窓より

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  岐阜県内を中心とした地質見学場所(露頭)を紹介しはじめて2年半ほどたち、前回で450回となりました。今回から長良川鉄道沿いの地形・地質、または車窓から見られる露頭を美濃太田駅より出発して北濃駅まで紹介していきたいと思います。3年前の10月12日~11月11日の「長良川鉄道の車窓からみた岩石その1~17」に紹介した場所、露頭も再度紹介しますが、今回は岐阜県の地質図(HP「ジオサイトぎふ」の詳細地質図)上に見学ポイントを載せて紹介します。また、「長良川本流沿いの露頭編」で紹介した露頭のいくつかも繰り返し紹介することになります。 長良川鉄道の起点である美濃太田駅は、美濃加茂市の平地部の中央やや南にあります。美濃加茂市の平地部の南には木曽川、東には飛騨川があり、河岸段丘が発達しています。河岸段丘は段丘面の高度によって、高位段丘・中位段丘・低位段丘に分けられますが、高い段丘ほど古い時代に形成されたものです。美濃加茂市の段丘面は、調査研究がされており、高位段丘は2面、中位段丘は2面、低位段丘は5面に分類されています。美濃太田駅は低位段丘の上から4段目の段丘面上にあり、美濃太田駅の次の駅である前平公園駅は低位段丘の一番上の段丘面上にあります。 美濃太田駅の西方に高度差5m~10mの崖が連続しますが、この崖は低位段丘の上から2段目と4段目の境界の段丘崖に相当するようです。低位段丘内の段丘崖としては高度差が大きな段丘崖です。長良川鉄道の列車内からも見ることができます。美濃太田駅を出て1分20秒ほどで国道41号の陸橋をくぐりますが、その近辺で南(進行方向に対して左側)を見ると、短い間ですが、段差がわかります。 地質図において、×の場所は長良川鉄道と国道41号の交差部で、この周辺で写真を撮りました。×地点はうす空色に小さな多角形( a2 )の中にありますが、主に低位段丘堆積層(第四紀堆積層)からなっています。周囲のうすピンク色に点( KD )は木曽谷層、うすピンク色に線やマル( Kmf )は木曽川泥流堆積物、明るい空色( th )は主に高位段丘堆積層で、いずれも第四紀の堆積層です。また、うす黄色( ST2 )は土岐砂礫層、深緑色にv( M1 )は瑞浪層群蜂屋累層、深緑色に横線と点( M2 )は瑞浪層群中村累層です。写真が四 種類ありますが、上の写真は進行方向に対して左側車