長良川鉄道沿いの地形・地質編 その2 美濃加茂市加茂野町の坂(木曽川泥流堆積物) :前平公園駅~加茂野駅間、前平公園駅出発後30秒~1分強、左右車窓より

鉄のレールの上を鉄の車輪によって走る鉄道にとって、弱点の一つは勾配です。そのため、段差や坂がある場合は必ず何らかの工夫がされています。日本の鉄道は原則として、1km(1000m)進むと25mの高さを上るという25‰(パーミル、千分率)を限度としてきたようです。25‰は、角度でいくと1.4度です。鉄道では、この程度の勾配でも距離があると難所となるのです。

平地部に坂、段差がある場合、その坂、段差には地質的な意味があることが多いです。美濃太田駅を出発して、最初の駅は前平公園駅です。前平公園駅を出てから、30秒~1分強は上り坂を進んでいます。地質図を見ると、美濃加茂市加茂野町にはうすピンク色(KmfKD)が広がっています(うす黄色(ST2)も線路の北には分布しています)が、KDは木曽谷層で、Kmfは木曽川泥流堆積物です。木曽川泥流堆積物は、木曽谷層にはり付くように分布しています。特に木曽川泥流堆積物は、他の第四紀の堆積層と異なりやや硬いため、周囲の地層と比べて浸食がされにくく段差を形成します。同じ状況が各務原市の多くを占めている各務原台地の東縁で見られ、木曽川泥流堆積物が各務原層(木曽谷層)にはり付いた状況で分布するため、崖が形成されています。

木曽川泥流堆積物は、中に入っていた木片で年代測定がなされていて、約5万年前の堆積物であることがわかっています。御嶽火山の活動中に発生した大規模な山体崩壊に由来する堆積物で、最初は岩屑なだれとして御嶽山東麓の末川流域に広がって、さらに西野川・王滝川へ下りながら泥流となって木曽川に沿って流れたことがわかっています。中津川市坂下の河岸段丘に載り、美濃加茂市加茂野だけでなく、各務原市まで200kmも流下し、台地を形成している木曽谷層(各務原層)を覆っています。各務原市の木曽川泥流堆積物については、一昨年の3月18日「県内美濃地方編その3」に掲載してあります。

 写真が四種類ありますが、上の写真は地質図の×地点あたりで右側車窓(進行方向に対して)から北を撮ったもので、中上の写真は左側車窓から南を撮ったものです。列車は段差を急に上がることはできませんので、地面に盛り土をしてなだらかな坂をつくっています。列車が周りの地面より高いところを通っているのがわかると思います。中下の写真は×地点(北側)で列車を北北東から撮ったもので、周囲より高いところを通っています。写っている列車の下は、ちょうど歩行者用のトンネルです。この列車から北を見ると、上の写真の景色が見えます。下の写真は、中下の写真と同じ場所からパノラマで撮ったもので、線路の部分に盛り土をして高くなっているのがわかると思います。右が西ですので、右に緩い上り坂になっています。(地質図はHP「ジオランドぎふ」より 岐阜県博物館提供)






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