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露頭と立体視その11(鍾乳洞と立体写真)

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   「露頭と立体視その5石灰岩内のカレンなどの溶食地形の立体写真」では、石灰岩中の特殊な地形を立体視で見ることについて述べました。石灰岩が弱い酸性の水によって溶かされ、その水の中の成分が沈着して成長したものが鍾乳石です。そして、その鍾乳石が多く見られる洞窟が鍾乳洞で、観光資源となっています。 鍾乳洞は自然が造りだした立体の造形美です。上から垂れ下がるつらら石や、下から伸びる石筍などの鍾乳石は重力の関係で垂直方向に延びるものが多く、直線的な美しさをもっています。また、水の中に溶けていた炭酸カルシウムが沈着して成長したものであるため、形としてなめらかな美しさ、およびすべすべした表面の美しさをもっています。立体視で見ることによって、成長している方向がよりわかり、三次元的な拡がり、特に洞窟や鍾乳石の奥行きが感じられ、迫力と美しさが理解できると思います。 上3種類の写真は、岐阜県内の鍾乳洞の写真です。上と中の写真は郡上市八幡町の大滝鍾乳洞、下の写真は同じく郡上市八幡町の美山鍾乳洞です。立体視で見ることによって、鍾乳洞内の鍾乳石の立体感や表面のなめらかさがわかると思います。 上3種類の写真は、沖縄県の玉泉洞を撮ったものです。立体視で見ることによって、洞窟や鍾乳石の奥行きが感じられ、洞窟の空間の広さが実感できると思います。 いずれの写真も、写真の下方にある白丸または黒丸を、左の写真は左目で、右の写真は右目で見て、重ね合わせるようにすると立体的に見えます。 美濃地学 - 地学のおもしろさを、美濃から (minotigaku.com)

露頭と立体視その10(足跡化石と立体写真)

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  足跡化石は、泥層などの表面を動物が移動するために足跡という凹みをつけ、そこに砂層や火山灰などが覆い保存されたものです。足跡は人間のものも含め、現在でも割合多く見られます。しかし、しばらくすると風や雨などで地面(表面)の粒子が移動し、足跡を消し去ってしまいます。足跡がついた直後に、洪水などで移動した砂によって足跡が覆われたり、火山灰などが飛来して覆われたりすると、足跡が地層の中に保存されるのです。恐竜の足跡やゾウ、サイ、シカなどの哺乳類の足跡が残されると、大きさや形、歩幅、力の加わり方、重なり方などによって、足跡をつけた動物の種類や体の大きさ、移動の仕方やスピード、単体または集団の移動かなどがわかるのです。 足跡化石も漣痕と同様、本来露頭で見られるものですが、本物が見られることはめったにありません。そのため、足跡化石が発見された場合、レプリカを作成し博物館の展示物として見られることがあります。特に、最近は各地で見つかる足跡化石が各地の博物館に展示されることがよくあります。 下の写真は、岐阜県博物館のロビーに展示してある恐竜の足跡化石で、岐阜県白川村で見つかった漣痕上に残された足跡化石です。凹みの部分が立体視によってよりわかると思います。写真は2種類ありますが、写真の下方にある●を 、左の写真は左眼で、右の写真は右眼で見て、重ね合わせるようにすると立体的に見えます。 滋賀県立琵琶湖博物館には、古琵琶湖層群で見つかった哺乳類の足跡が多く展示してあります。立体視をすることによって、足跡の凹みの深さや立体的な形を実感することができます。 ミエゾウの足跡化石 サイの足跡化石 サイの足跡化石 ミエゾウの足跡化石 シカ科の足跡化石 鳥類の足跡化石 ワニ類の足跡化石 福井県立恐竜博物館にも、勝山産の恐竜(鳥脚類)の足跡化石が展示されています。 美濃地学 - 地学のおもしろさを、美濃から (minotigaku.com)

露頭と立体視その9(漣痕と立体写真)

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 漣痕(リップルマーク)は、堆積層の表面を水などが流れることにより、周期的な波状の模様ができたものです。本来露頭で見るものですが、なかなか露頭で本物を見ることはありません。しかし、漣痕が化石として発見された場合、レプリカが作成され、博物館の展示物として見ることができる場合があります。岐阜県博物館には、高山市荘川町御手洗で発見されたジュラ紀の漣痕が展示されています。この漣痕は波によって形成されたもので、波高が1cmもなく、実物を肉眼で見てもそれほど立体感が感じられるわけではありません。そこで、左眼用と右眼用写真の間を両眼の幅(約6cm)以上離して撮り、立体写真を作成しました。それを立体視することによって立体感が強調されます。下の4種類の写真を立体視すると、漣痕の断面形がわかると思います。立体視するには、写真の下方にある白丸を 、左の写真は左眼で、右の写真は右眼で見て、重ね合わせるようにします。   下の写真は、豊橋市自然史博物館に展示されている漣痕(リップルマーク)です。ヒマラヤ山脈をつくる先カンブリア時代の地層(カリガンダキ層)です。立体視によって、凸凹がわかると思います。 下の写真は、漣痕ではありませんが、地層の底についたソールマーク(底痕)の中のフルートキャスト(堆積時の流れの方向がわかる跡)です。宮崎県の日南層群内のもので、つくば市の地質標本館に展示されています。ソールマークは、水流や移動した礫によって海底面が削られてできた溝や模様が、その上に堆積した砂層の底面に痕跡として残ったものです。表面の凸凹がわかると思います。 美濃地学 - 地学のおもしろさを、美濃から (minotigaku.com)

露頭と立体視その8(節理と立体写真)

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節理は、火成岩(溶岩や火砕流堆積物、深成岩など)が冷却する過程で収縮をし、そのため割れ目(すき間)ができたものです。岩石の特徴や形成過程によって、柱状や板状、方状(直方体状)などの節理ができます。しかし、板状節理のように、形成過程や理由が明確にはわかっていないものもあります。  岐阜県には、大規模火砕流堆積物である濃飛流紋岩が広く分布します。また、濃飛流紋岩に似た岩石も何箇所かに分布します。岩石としては、噴出した火山灰などが自らの重さと熱によって、つぶされくっついた溶結凝灰岩が主体です。その溶結凝灰岩も冷却する中で収縮し、柱状節理を形成します。写真は、郡上市和良町鹿倉の濃飛流紋岩中の柱状節理(上、中上の写真)、郡上市高鷲町穴洞の白鳥流紋岩中の柱状節理(中下、下の写真)です。この柱状節理はいずれも溶結凝灰岩中のものですが、六角柱状のものではなく、四角柱状(直方体など)や三角柱状のものが多いようです。柱状節理は直線による造形美なので、平面写真でもその美は味わうことができます。立体視によってより露頭の状況がわかり、柱状節理の出っ張りの違いがわかります。 柱状節理で有名なものの1つは、兵庫県豊岡市の玄武洞公園内の玄武岩質溶岩に見られる節理です。下に4種類の写真がありますが、上、中上、中下3種類は、玄武洞公園内の玄武洞、青龍洞、白虎洞の柱状節理です。下の写真は、京都府福知山市夜久野町やくの玄武岩公園内の柱状節理です。いずれも玄武岩に見られる柱状節理です。 美濃地学 - 地学のおもしろさを、美濃から (minotigaku.com)

露頭と立体視その7(立体がわかる地層と立体写真)

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地層は平面で見ることが多いですが、本来は空間的な広がりをもっています。地層が平面ではなく、空間的な広がりがわかる露頭、または地層が一方向から見えるだけではなく、二方向から見える露頭があります。そのような露頭の立体視用写真を作成できれば、その写真を立体視することで、よりリアルに地層の広がりを感じることができます。 下の3種類の写真は、関市洞戸阿部地区の北で見られる板取川左岸河床の層状チャートを撮ったものです。層状チャートは褶曲をしていますが、熱変成を受けているためか、節理が発達していて、直方体に割れています。そのため、褶曲の軸の部分を2方向から見ることができます。立体視ができるように、左眼用と右眼用の写真を並べてあります。 写真の下の●を、左の写真は左目で、右の写真は右目で見て、重ね合わせるようにすると立体的に見えます。 上の写真は、少し離れて南から露頭を撮りました。その露頭に近づいて、南東から撮ったものが真中の写真で、南南東から撮ったものが下の写真です。真中の写真と下の写真を見ると垂直面に近い面には上に閉じた褶曲が見られ、その続きが水平面に近い面にも表れています。 岩石は自然の中では露頭で見られますが、都会では石材としてビルや施設の壁、床などで見られます。装飾のため、大理石(石灰岩を含む)や花崗岩などが使われています。大理石は、石灰質の殻などをもった生物の遺骸が堆積したものがもとになっていますので、アンモナイトやサンゴなどの化石が含まれているのです。名古屋駅前のゲートウォークの壁は、ドイツ産のジュラマーブルイエローという石材でできていて、アンモナイトやべレムナイト、カイメン、石灰藻などの化石が多く含まれています。その化石たちは普通一方向の断面でしか見られませんが、中には壁の角に化石があり、二方向から断面を見られる場合があります。 下の写真は、ゲートウォークの壁で見られるアンモナイトの断面です。アンモナイトの化石が壁の角にあり、二方向から見られます。立体視をすることによって、よりリアルにアンモナイトの断面を見ることができるとともに、どのような立体かを想像することができます。 写真の下の白丸を、左の写真は左目で、右の写真は右目で見て、重ね合わせるようにすると立体的に見えます。 美濃地学 - 地学のおもしろさを、美濃から (minotigaku.com)

露頭と立体視その6(甌穴と立体写真)

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地形における凸凹はいろいろありますが、露頭規模において凹地形として代表的なものに甌穴があります。甌穴は、流れのある河川沿いにおいて、流されてきた礫(石ころ)が岩盤の凹みなどに引っかかり、水流によって回転し、岩盤を削り、掘り下げた穴です。礫の回転によって削られ掘り下げられるので、やわらかい岩盤の方がよいように思われがちですが、穴が保存するためには硬い岩盤であることが必要です。やわらかい岩盤は削られやすいですが、縁がくずれてしまい深い穴にはならないのです。実際に、岐阜県に広く分布する美濃帯堆積岩類中の甌穴は、硬いチャート層中にできていることが多いです。 岐阜県では、甌穴は飛騨川沿いで見られる飛水峡の甌穴群が有名ですが、チャート層に掘り込まれた穴です。写真は3種類ありますが、いずれも甌穴の写真です。 同じような写真が2枚並んでいますが、写真の下の白丸または黒丸を、左の写真は左目で、右の写真は右目で見て、重ね合わせるようにすると立体的に見えます。 上の写真は層状チャート中にあいている甌穴を撮ったもので、真中付近の甌穴に近づいて撮ったものが真中の写真です。また、下の写真は別の甌穴を撮ったものです。立体視で見ることによって、上の写真では層状チャートの表面の凸凹がわかります。真中の写真では、甌穴に水が入っているためややわかりにくいですが、表面近くでは大きな凹みが、より深くには割と小さな穴が開いているのがわかります。その穴より少し小さな丸い石も写っていて、穴を開けた石だろうと想像できます。下の写真の甌穴は、奥へも掘り込まれていることが立体視によってよくわかります。 下の4枚の写真は、郡上市美並町母野地区の長良川左岸沿いの露頭で見られる甌穴を撮ったものです。チャート層に掘られた甌穴で、2m以上垂直に掘り込まれた甌穴もあります。上の写真は、甌穴が見られるところを南から撮ったものです。立体視ができると、甌穴の部分だけではなく、露頭全体が凸凹しているのがわかると思います。上の写真のハンマーの右に写っている甌穴が深さ2 . 4mほどあるもので、それを西から撮ったものが中上の写真で、近づいて上方から撮ったものが中下の写真です。ほぼ円形で直径は90cmほどです。立体視で中下の写真を見ると、全体的には右側は上部から垂直に近く掘り込まれ、左側は上部がやや漏斗状になっていることがわかります。下の写...

露頭と立体視その5(石灰岩内のカレンなどの溶食地形の立体写真)

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岐阜県美濃地方に広く分布する美濃帯堆積岩類中の石灰岩は、海洋で形成した過去のサンゴ礁が岩石になったものです。石灰岩はおもに炭酸カルシウム(CaCO 3 )からなるため、酸性の溶液に溶けます。雨水は、大気中の二酸化炭素を溶かし込んでいて弱い酸性になっています。そのため、石灰岩が露出している場合、雨水などに溶かされ、他の岩石には見られない地形(カルスト地形)をつくりだすことがあります。 カルスト地形にはいろいろありますが、地面を覆っている石灰岩が溶かされ、一部が溶けずに残ると、その部分だけが地面から突出したように柱状に残ります。このような地形をピナクルと呼びます。また、溶食が進んだ石灰岩の表面には溝が形成されます。その溝のことをカレンと呼びます。 写真は3種類ありますが、いずれも大垣市赤坂金生山の岩巣公園内の石灰岩を撮ったものです。岩巣公園内のピナクルと石灰岩表面のカレンを撮りました。同じような写真が2枚並んでいますが、写真の下の白丸を、左の写真は左目で、右の写真は右目で見て、重ね合わせるようにすると立体的に見えます。 上の写真は、岩巣公園内のピナクルを撮ったものですが、立体視をすることによって、石灰岩の凸凹が臨場感たっぷりに目に飛び込んできます。 真中の写真は、石灰岩の表面にカレンが発達している場所を撮ったもので、まるで険しい山脈のミニチュア版を見ているようです。立体視で見ることができると、尖っている尾根や深い谷、U字状にくぼんだ部分がわかります。 下の写真は、石灰岩の表面にできた溝状の地形(カレン)が発達しているところを近づいて撮ったものです。溝状の地形を正面から撮ったものですから、立体視で見ることで、溝はU字状をしていて、溝と溝の間は尖った山状になっているのがわかります。いずれか一方の写真を見ていてはなかなか伝わらないでしょう。 美濃地学 - 地学のおもしろさを、美濃から (minotigaku.com)