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長良川鉄道沿いの地形・地質編 その42 美濃白鳥駅~白鳥高原駅間の山際の崖(白鳥流紋岩) :美濃白鳥駅~白鳥高原駅間、美濃白鳥駅出発後約3分35秒~3分50秒後、右車窓より

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  昨年の10月25日 「長良川本流沿い露頭編その171」で紹介した 郡上市白鳥町二日町中切の南で見られる 岩壁は、列車の車窓からも見られますので再度紹介します。美濃白鳥駅を出発して約3分35秒~50秒の間、右車窓から山際に岩壁が見えます。この一帯は白鳥流紋岩が分布していて、岩石としては主に溶結凝灰岩です。 白鳥流紋岩は、火山からの噴出物が火砕流となって移動し、堆積したものです。岐阜県の約1/4を占める濃飛 流紋岩に似ていますが、現在では濃飛流紋岩の活動後に活動したと考えられている奥美濃酸性岩類(岐阜県北西部の奥美濃地方~福井県東部にかけて分布)、庄川火山-深成複合岩体(岐阜県北西部の庄川上流域に分布)、大雨見山層群(飛騨市古川町東部~高山市上宝町東部にかけて分布)と同様の時期に活動した火山噴出物と考えられています。しかし、他の火山噴出物とは異なり、詳細には調べられていません。 白鳥流紋岩の主体をなす溶結凝灰岩は、一見すると溶岩や貫入岩のように見えますが、でき方が異なります。 火砕流として噴出すると、中に含まれるガラス分(火山灰)は一度空中で冷やされ粉のように細かい固体となり、気体(火山ガス)と一緒に高速で移動し堆積します。しかし、大量のものが堆積すると、自身がもつ熱と重量によって、ガラス分が柔らかくなり(軟化し)、かつ圧縮されます。その後、冷え固まるわけですが、降り積もった火山灰が固まった岩石(凝灰岩)とは異なり、軟化したガラス分が圧縮されてくっつくため、非常に硬い岩石となります。それを溶結凝灰岩と呼びます。ガラス分がくっつき硬い岩石となるため、溶岩や貫入岩のように見えるのです。 地質図において、この崖(×地点)は、 黄土色で横線あり( SR )の中にあって、黄土色で横線ありは白鳥流紋岩です。詳細には調べられていないため、黄土色一色で表現されています。写真が五種類ありますが、上の写真は列車の右車窓から撮ったものです。美濃白鳥駅を出発して3分50秒ほどのところで撮りました(地質図の矢印)。ほぼ真中に写っているのが崖(岩壁)です。中上の写真は、もう少し近づいて岩壁を西から撮ったものです。真中の写真は、中上の写真の中央左下を撮ったものです。中下の写真は、岩壁により近づいて北からパノラマで撮ったものです。黄色の線が入っていますが、1mのスケールを強調しました。

長良川鉄道沿いの地形・地質編 その41 美濃白鳥駅~白鳥高原駅間の平地 :美濃白鳥駅~白鳥高原駅間、美濃白鳥駅出発後約2分後、両車窓より

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  長良川鉄道は、美濃市「湯の洞温泉口駅」から終点の郡上市白鳥町「北濃駅」にかけて長良川に沿って山地の中を走っています。地質図を見ると、「湯の洞温泉口駅」から「郡上八幡駅」までは灰色、オレンジ色、黄色、緑色、空色、青紫色、ピンク色などいろいろな色が見られます。岩質の異なる岩石が混じりながら分布しています。しかし、「郡上八幡駅」より北の長良川沿いには、限られた色しか見られません。特に「郡上大和駅」から「万場駅」の間は黄色のみが、「美濃白鳥駅」から「白鳥高原駅」の間は 黄土色で横線あり のみが分布しています。黄色はおもに砂岩からなる地層(美濃帯堆積岩類)で、 黄土色で横線あり は白鳥流紋岩です。「郡上大和駅(大和町)」から「万場駅(大和町)」の間(以降「大和地区」と表現)の平地については、「 長良川鉄道沿いの地形・地質編その38 」に載せました。 「美濃白鳥駅(白鳥町)」から「白鳥高原駅(白鳥町)」の間(以降「白鳥地区」と表現)も、大和地区と同じように長良川沿いに同じくらいの幅で平地が広がっています。大和地区も白鳥地区も分布する岩石が一種類であり、浸食の度合いが同じであるため同じくらいの幅で谷が形成され、そこを堆積物が埋めているため平地の幅が一様であると思われます。しかし、白鳥地区は大和地区と比べると平地の幅が狭いです。平地の幅が狭いのは、大和地区はおもに砂岩からなり、白鳥地区はおもに白鳥流紋岩(火山岩類)からなるという岩質の違いと、長良川の水量の違いが反映していると考えられます。長良川は白鳥町で支流の牛道川と合流するため、上流の白鳥地区より下流の大和地区の水量が多くなります。 地質図が三種類、写真が二種類あります。上の地質図は湯の洞温泉口駅(美濃市)から北濃駅(白鳥町)の間の地質図で、真中の地質図は白鳥地区を拡大したもの、下の地質図は大和地区を拡大したものです。真中と下の地質図は、縮尺は同じです。平地は白色、またはうす空色の中に記号ありで示されていますが、白鳥地区の平地が大和地区の平地より幅が狭く、両方とも幅はほぼ一様であることがわかります。 真中の地質図の赤丸で囲った部分を列車の中から撮ったものが上と下の写真で、上の写真は白鳥駅を出発して約2分後に左車窓から西を、下の写真は白鳥駅を出発して約2分5秒後に右車窓から東を撮ったものです。線路の両側に平地が広が

長良川鉄道沿いの地形・地質編 その40 美濃白鳥駅~白鳥高原駅間の鉄橋下流側河原の石ころの並び(インブリケーション(覆瓦構造)) :美濃白鳥駅~白鳥高原駅間、美濃白鳥駅出発後約1分40秒後、左車窓より

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  終点の北濃駅に向かって美濃白鳥駅を出発します。1分40秒ほどすると長良川を渡ります。左車窓から下流側右岸を見ると、規模は大きくないですが河原の石ころが広がっているのが見えます。露頭はありませんが、河原の石ころ(礫)の並びについて紹介します。 列車の上からでは確認できませんが、河原の石に近づいて見てみると、割合規則的に石が並んでいるのを確認することができます。まるい石が広がっていれば、どの河原でも見られる現象ですが、石が傾いて並んでいます。このような並びをインブリケーション(覆瓦構造)と呼びます。河原の石は角が取れていますが、球形ではなくつぶれた形になっている場合が多いです。そのような形の石が水に流されて、堆積する時は、流れに逆らうことなく石の上流側が下がり下流側が上がるという状態になります。逆に石の上流側が上がり下流側が下がるという状態では、水流によってめくられてひっくり返ってしまいます。石の上面が上流側に向いた状態です。それが石にとって安定した状態なのです。そのような石の並びは、瓦を敷き詰めたような状態なので、日本語では覆瓦構造と呼びます。また、石があると水の流れがさえぎられるため石の前面の土が掘られ、石の上流側が下がり、より石の上流側が下がり下流側が上がるという状態になります。  礫層が見られる場合、その礫一つ一つが一定方向に傾いていることがあります。地層の中でもインブリケーションを示しているのです。これを観察することによって、礫が堆積した当時の水流の方向がわかります。インブリケーションは礫に限らず、砂でも見られることがあり、顕微鏡レベルで観察することによって流れの方向が見出せる場合もあります。 地質図において、この場所(×地点)は白色の中にあり、第四紀の堆積層です。写真が五種類ありますが、上の写真は長良川鉄道下りにおいて、美濃白鳥駅を出て1分40秒ほどで長良川を渡る際に左車窓から撮ったものです。赤丸で囲った部分を川の対岸から(東から)撮ったのが中上の写真です。石ころに混じってコンクリートブロックもあります。真中の写真は、中上の写真とほぼ同じ場所をもう少し広く撮ったものです。中下の写真は中上の写真とほぼ同じ場所を撮ったものですが、インブリケーションがわかるように 上流側が下がり下流側が上がっていることがわかる石に赤線で印をつけました。 下の写真は

長良川鉄道沿いの地形・地質編 その39 郡上大和駅~万場駅間の鉄橋上流左岸の砂岩層 :郡上大和駅~万場駅間、郡上大和駅出発後約2分30秒後、右車窓より

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  昨年の7月20日「長良川本流沿い露頭編その160」で紹介した長良川鉄道橋梁の上流の左岸の露頭が、長良川鉄道の車窓から見えますので紹介します。上の写真の赤丸で囲まれた露頭で、南北10mほど、東西7mほど、高さ4mほどの砂岩層です。淡灰色をしたおもに中粒砂からなる砂岩層で、5mm以下の泥質岩片が点在もしくは多く入る部分があります。岩片の径が1cmを超えるものもあります。 美濃帯堆積岩類中の砂岩層は、 河川によって陸地から海洋へ運ばれた砂がもとになっています。美濃帯堆積岩類には、砂岩や泥岩などのように岩石が細かく砕かれた砕屑物の他に、玄武岩質火山岩類や石灰岩、チャート、珪質泥岩などがあります。玄武岩質火山岩類や石灰岩、チャート、珪質泥岩などは、海洋で噴出したり堆積したりしたものですが、それらは海洋プレートにのって陸地側へ移動し、大陸の縁(現在の日本列島)に付加しました。そして、陸地から海洋へ運ばれた砂などの砕屑物も一緒に付加しました。そのため、美濃帯堆積岩類の中では、砂岩(泥岩も含む)が一番新しい堆積物です。 地質図において、この露頭(×地点)は黄色( Mss )の中にあり、黄色はおもに砂岩からなる地層です。写真が四種類ありますが、上の写真は長良川鉄道下りにおいて、郡上大和駅を出て2分30秒ほどたったところで長良川を渡りますので、その時に右車窓から撮ったものです。中上の写真は、上の写真の赤丸で囲まれた露頭に近づいて、東からパノラマで撮ったものです。左側には、長良川鉄道の橋梁が写っています。中下の写真は中上の写真の中央部を撮ったもので、下の写真は中上の写真(または中下の写真)に写っているハンマー付近をより近づいて撮ったものです。中上と中下の写真は、「長良川本流沿い露頭編その160」でも使用しています。スケールとして置いてあるハンマーの長さは約28cmです。中下と下の写真は同じような写真が二枚並んでいますが、それぞれの写真の白丸を、左の写真は左目で、右の写真は右目で見て、重ね合わせるようにすると立体的に見えます。(地質図はHP「ジオランドぎふ」より 岐阜県博物館提供) 美濃地学 - 地学のおもしろさを、美濃から (minotigaku.com)

長良川鉄道沿いの地形・地質編 その38 郡上大和駅~万場駅間の平地の広さ :郡上大和駅~万場駅間、郡上大和駅出発後約1分30~40秒後、左右車窓より

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長良川鉄道において、美濃市の「湯の洞温泉口駅」~郡上市大和町の「徳永駅」の間は、おもに長良川沿いを通ります。ただし、川は蛇行しているため、それを避けるため橋で長良川を渡ったり、ショートカットをしてトンネルで通過したりしています。そのため、 車窓から見える景色は変化に富んだものとなり、 長良川やいろいろな山の姿、河床の岩(露頭)など自然の景観を眺めながらの旅となります。 郡上市大和町の「徳永駅」から北は、平地が割合広く、長良川をほとんど望むことができず、長良川の近くを通過しても、または鉄橋で横切っても、露頭はなかなか見られません。河川の上流は一般的には川幅が狭く、平地も狭いと思われがちですが、長良川沿いにおいては上流の大和町の方が、下流側にある八幡町、美並町よりも一定の幅の平地が連続しています。上の地質図は、美濃市の「湯の洞温泉口駅」~郡上市大和町の「万場駅」周辺の地質図です。「湯の洞温泉口駅」~「徳永駅」にかけて、特に「湯の洞温泉口駅」~「郡上八幡駅」にかけては、長良川は蛇行をしていて、灰色やオレンジ色、黄色、緑色などいろいろな岩石が分布しています(灰色:メランジュ、オレンジ色:チャート、黄色:砂岩、緑色:玄武岩質火山岩類)。しかし、「徳永駅」~「万場駅」にかけては、白色やうす空色の平地をつくっている堆積物以外は、黄色(砂岩)一色です。このような地質の違いが、川の蛇行や平地の広さを決めています。 地質図が2種類ありますが、上の地質図は上述したように、長良川鉄道の「湯の洞温泉口駅」~「万場駅」に沿っての地質図です。「郡上八幡駅」あたりを境にして、南側と北側の地質の違いが色によってわかると思います。下の地質図は、「郡上大和駅(下りにおいて、「徳永駅」の次の駅)」~「万場駅」にかけて、周辺の地質を示したものです。白色( a )、うす空色で中に記号あり( a2 )は第四紀の堆積物で、平地をつくり出している堆積物です。それらの堆積物の下や周辺は大部分が黄色( Mss )で、おもに砂岩からなる地層です。 写真が二種類ありますが、下の地質図の赤丸付近を長良川鉄道の車窓から撮ったものです。上の写真は、「郡上大和駅」を出て1分30秒ほどたったところで、右車窓から東側を撮りました。下の写真は、「郡上大和駅」を出てから1分40秒ほどたったところで、左車窓から西側を撮ったものです。

長良川鉄道沿いの地形・地質編 その37 山田駅~徳永駅間対岸の砂岩泥岩互層、砂岩層 :山田駅~徳永駅間、山田駅出発後約1分10秒~20秒後、左車窓より

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  昨年の7月5日「 長良川本流沿い露頭編その152 」で紹介した 郡上市大和町野口の砂岩層、砂岩泥岩互層の露頭が、長良川鉄道の車窓から見えますので紹介します。3年前の8月31日「長良川沿いの砂岩、泥岩その4」、11月11日「長良川鉄道の車窓からみた岩石その17」でも紹介している場所です。山田駅出発後1分10秒ほどたったところで、長良川対岸に特殊造形物の製造工場が見えますが、その上流(北)の長良川河床に露頭があります。 砂 岩層と砂岩泥岩互層が分布しています。途中手前の建物の陰で見えなくなりますが、10数秒間見えます。 美濃帯堆積岩類中の砂岩層や泥岩層(砂岩泥岩互層も含む)は、陸地から川などによって海洋へ運ばれた砂や泥がもとになっています。砂や泥の混じったものが海底の斜面で混濁流となってより深い海底へ流れ込む時、1回の流れ込みによって、粒子が粗い砂は下に、その上に粒子の細かい泥が堆積します。それが何回も繰り返すと、砂と泥が交互に重なって縞状に見える砂泥互層を形成します。それが固結したものが砂岩泥岩互層です。ここの砂岩泥岩互層は、層厚数cm~10cmほどの青灰色をした中粒~細粒砂岩層と、層厚数cm~6cmほどの暗灰色をした泥岩層が交互に堆積しています。 地質図において、この露頭(×地点)は、黄色( Mss )の中にあり、黄色はおもに砂岩からなる地層です。写真が五種類ありますが、上の写真は長良川鉄道下りにおいて、山田駅を出て1分15秒ほどたったところで左車窓から撮ったものです。赤い線で囲まれたところが紹介する露頭です。特殊造形物の製造工場が写真の左側に写っています。中上の写真は砂岩層と砂岩泥岩互層が見られる露頭を近づいて北東からパノラマで撮ったもので、真中の写真は中上の写真の中央左を撮ったものです。ハンマーが置いてある黒っぽい岩石が砂岩泥岩互層で、その上方に広がっている灰色の岩石が砂岩層です。中下の写真は、真中の写真に写っている露頭から北西へ5mほどのところにある露頭を南東から撮ったものです。中上の写真の右上隅に写っている露頭です。ハンマーの位置は砂岩泥岩互層で、ハンマーの右少しはなれたところの灰色の岩石は砂岩層です。砂岩泥岩互層と砂岩層の境界部は明確で、水がしみこみやすいためか、植物が連続的に生えています。下の写真は、中下の写真のハンマー付近をより近づいて撮っ