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長良川鉄道沿いの地形・地質編 その15 みなみ子宝温泉駅北の長良川左岸沿いで見られるメランジュ(混在岩) :みなみ子宝温泉駅~大矢駅間、みなみ子宝温泉駅から出発して約30秒後、左車窓より

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3年前の10月19日 「長良川鉄道の車窓からみた岩石その4」、昨年の1月16日「長良川本流沿い露頭編その72」で紹介した混在岩の露頭を再度紹介します。「長良川本流沿い露頭編その72」では層状チャートの露頭も紹介していますが、列車の車窓からでは確認が難しいため、混在岩のみを紹介します。前回の「長良川鉄道沿いの地形・地質編その14」で紹介した露頭の数100m上流左岸の露頭です。目印は河原へ降りる階段の下にある露頭で、混在岩からなっています。 混在岩は、美濃帯堆積岩類などの付加体堆積物に特徴的な岩石です。基質となる黒色の泥岩の中にチャートや砂岩などの大小の礫(岩塊)が入っています。礫が入っている岩石なので、礫岩のように思われがちですが、礫岩は河川が運んできた礫がおもに堆積した岩石で、礫の間を埋めるのは砂粒です。混在岩は礫(岩塊)の間を泥が埋めていて、通常の礫岩ではありません。また、礫(岩塊)は小さいものは数mm~数cm、大きいものは数100m~数kmもあり、大きい岩塊は地質図(5万分の1)にも表現されています。露頭規模(数10mオーダー)ではチャートの岩体であっても、一つの大きな岩塊であり、周りを基質である泥岩が取り巻いていることがあります。そのような地質体をメランジュと呼びます。メランジュは、海洋プレートの上に堆積したものが陸側のプレートの下にもぐりこむ際、剥ぎ取られ混ざり合いながら陸側のプレートにくっついていく(付加する)場合の特徴的な地質体です。 この露頭では、黒色~暗灰色の泥岩の中に、径が数cm~数10cmの灰色~暗灰色の砂岩が入っています。北へ30mほど進んだところには、層状チャートが露出しています。この層状チャートは周囲がわかりませんが、大きな岩塊だと考えられます。 地質図において、車窓から見える混在岩( ×地点)は灰色( Mmx )の中にあり、灰色はメランジュからなる地層です。 写真が四種類ありますが、上の写真はみなみ子宝温泉駅から出発(下り)して約30秒後に、列車の左車窓より撮ったものです。赤丸で囲んだ露頭が混在岩で、目印は前述したように長良川左岸にある階段のすぐ下です。中上の写真は、上の写真の赤丸で囲んだ露頭に近づいて、東からパノラマで撮ったものです。中下の写真は中上の写真の中央部を撮ったものです。下の写真は中下の写真の露頭から東へ5mほどの

長良川鉄道沿いの地形・地質編 その14 みなみ子宝温泉駅出発直後に見える層状チャートと珪質泥岩層 :みなみ子宝温泉駅~大矢駅間、みなみ子宝温泉駅から出発して約20秒後、左車窓より

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3年前の10月15日 「長良川鉄道の車窓からみた岩石その3」、昨年の1月16日「長良川本流沿い露頭編その71」で紹介した層状チャートと珪質泥岩層が接している露頭を再度紹介します。みなみ子宝温泉駅は、温泉施設が併設された駅です。途中下車をして、温泉につかり一服できる駅で、長良川鉄道で行くと温泉施設の割引があります。弱アルカリ単純温泉で、肌の不要な角質をとる美肌効果があると言われています。この温泉施設(子宝の湯)の近くには、昔から子授け、安産の守り神として信仰されてきた勝原の子安神社があり、それが温泉の名前の由来になったようです。また、平成2年の国勢調査での人口の重心地がこの近くだった(現在は東へ移動)ため、日本のへそにあたるということから、子宝に恵まれるようにとの思いも込めて子宝の湯と付けられたようです。 この温泉施設は、長良川の左岸沿いにあります。そのため、みなみ子宝温泉駅から出発すると、左車窓からすぐ(約20秒後)長良川沿いの岩(露頭)が目に入ってきます。長良川に支流が合流している地点が見えますが、その10m弱南に層状チャートと珪質泥岩層が接している露頭があります。 層状チャートと珪質泥岩層は、美濃帯堆積岩類を構成する主要な岩石です。美濃帯堆積岩類は、海洋で噴出したり堆積したりしたものが海洋プレートによって移動して、陸地から運ばれた砕屑物(砂や泥など)と混じり合って、大陸の縁(現在の日本列島)に付加したものです。チャートは砂や泥が届かないような陸地から離れた深海底で堆積したものですが、珪質泥岩は陸地に近づいたところで堆積したものです。そのため、珪質泥岩はチャート形成のもとになっている放散虫などの珪質の殻をもった生物の遺骸と、泥の粒がまざっている岩石です。  地質図において、車窓から見えるこの露頭地点(×地点)はそら色( Msi )である珪質泥岩からなる地層と、オレンジ色( Mch )であるおもにチャートからなる地層の境界付近にあります。写真が四種類ありますが、上の写真は層状チャートと珪質泥岩層が接している露頭を車窓から撮ったものです。中上の写真は、この露頭に近づいて東からパノラマで撮ったものです。中上の写真に写っている場所は、上の写真では赤丸で示しました。また、中上の写真には、層状チャートと珪質泥岩層の境界を示してあります。中下の写真は中上の写真の中央

長良川鉄道沿いの地形・地質編 その13 八坂駅~みなみ子宝温泉駅間の鉄橋(第二長良川橋梁)から見える花崗斑岩と混在岩(長良川左岸側) :八坂駅~みなみ子宝温泉駅間、八坂駅から出発して30秒ほど(第二長良川橋梁の上)、左車窓より

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  前回「長良川鉄道沿いの地形・地質編その12」では、右車窓から見える珪質粘土岩等を紹介しました。ほぼ同時刻(八坂駅から出発して30秒ほど)に列車の左車窓から外を眺めると、赤い橋(勝原橋)と長良川左岸沿いに黒っぽい岩や白っぽい岩が露出しているのが見えます。これらの岩(露頭)については、3年前の9月8日「長良川沿いのメランジュその3」、 9月29日 「長良川沿いの花崗斑岩その3」、一昨年の12月26日「長良川本流沿い露頭編その65」で紹介しました。黒っぽい岩は混在岩で、やや白っぽい岩は花崗斑岩です。 黒っぽく見える混在岩は、メランジュからなる地層中に特徴的な岩石です。基質である黒っぽい泥岩の中に、砂岩やチャートなどのさまざまな大きさの礫(岩塊)が入っています。この長良川左岸に見られる露頭では、暗灰色~黒色の泥岩の中にさまざまの大きさの砂岩の礫(岩塊)が入っています。大きいものとしては、4m×1 . 5m×1 . 5mほどの砂岩も入っています。「中上の写真」のハンマーのうしろに写っている岩石です。また、白っぽく見える花崗斑岩は、1mmほどの長石が点在し、石英も少し見えます。 地質図上に、列車から見た方向が→で表してあります。→の先の周辺には灰色( Mmx )が分布します。灰色は、メランジュからなる地層です。露頭としては花崗斑岩が存在しますが、規模的には大きくないため、地質図には表現されていません。ただし、花崗斑岩( Gp 、朱色)は→の少し北には分布していますので、一連のものだと思います。写真が五種類ありますが、上の写真は、鉄橋(第二長良川橋梁)の位置で列車の左車窓から長良川を眺めて撮ったものです。中央上に写っている赤い橋が勝原橋です。鉄橋から勝原橋にかけて、混在岩、花崗斑岩、混在岩が分布しています。中上の写真は、上の写真に写っている手前の方の混在岩を近づいて南(鉄橋側)から撮ったものです。真中の写真は、混在岩を同じく南からより近づいて撮ったものです。黒っぽいのが基質部の泥岩で、灰色の礫が砂岩です。数cmオーダーの砂岩の礫が、黒っぽい泥岩の中に多く入っているのがわかります。このような岩石を混在岩と呼びます。中下の写真は、上の写真の中央右に写っている花崗斑岩の露頭に近づいて同じく南から撮ったものです。下の写真は、河原から鉄橋と列車を撮ったものです。なお、中上と真中

長良川鉄道沿いの地形・地質編 その12 八坂駅~みなみ子宝温泉駅間の鉄橋(第二長良川橋梁)から見える珪質粘土岩と花崗斑岩など(長良川右岸側) :八坂駅~みなみ子宝温泉駅間、八坂駅を出発して30秒弱、右車窓より下方を望む

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  長良川鉄道八坂駅出発後30秒もたたないうちに、鉄橋を通り長良川を渡ります。その鉄橋が第二長良川橋梁です。長良川を渡る手前、右車窓から下方を望むと、河床に岩が露出しているのがわかります。花崗斑岩、珪質粘土岩などです。一昨年の12月23日「長良川本流沿い露頭編その64」に紹介した露頭ですが、再度紹介します。 美並町八坂にある第二長良川橋梁の橋脚から下流へ20mほどの右岸河床には花崗斑岩などが、40mほどの河床には珪質粘土岩などが露出しています。珪質粘土岩の露頭は、淡灰色の珪質粘土岩に黒色の珪質泥岩がはさまっているため、縞模様のように見えます。ただし、車窓からは残念ながら縞模様までは見えません。露頭に近づけば、縞模様を切って貫入岩が複数入り込んでいるのもわかります。 珪質粘土岩は、美濃帯堆積岩類に特徴的な岩石で、礫、砂、泥などをほとんど含まず、粘土鉱物だけからなる岩石です。チャート層に伴って存在し、中に黒色の珪質泥岩をはさむことを特徴としています。詳しい調査研究によって、中生代三畳紀の層状チャートの基底部に存在することがわかっていて、三畳紀初期における酸素が少ない状態の海洋で堆積したものだと考えられています。貫入岩は、肉眼で1mm以下の長石が点在するのを確認できます。近くに花崗斑岩が露出しているので、同じマグマが冷え固まってできた微小の鉱物粒からなる珪長岩だと思いますが、顕微鏡などで鉱物を確認しているわけではないため、ここでは貫入岩としておきます。 地質図において、列車の車窓から見えるこの露頭(×地点)は灰色( Mmx )の中にあります。灰色はメランジュからなる地層です。この珪質粘土岩は、メランジュの中の岩塊と考えられます。写真が五種類ありますが、上の写真は右車窓から下方を望んで撮ったもので、中上の写真は拡大モードにして撮ったものです。真中の写真はこの露頭に近づいて、南西からパノラマで撮ったものです。中央上部に写っている4本の柱状のものは第二長良川橋梁の橋脚です。中下の写真は真中の写真の中央下部を撮ったもので、下の写真は中下の写真(または真中の写真)に写っているハンマー付近をより近づいて撮ったものです。下の写真に写っているのは珪質粘土岩です。真中と中下、下の写真は、「長良川本流沿い露頭編その64」でも使用しています。スケールとして置いてあるハンマーの長さは

長良川鉄道沿いの地形・地質編 その11 木尾駅~八坂駅間のトンネル通過後対岸に見える黒地地区の花崗斑岩 :木尾駅~八坂駅間、木尾駅から出発して約1分50秒後(トンネル通過後)、右車窓より

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  3年前の9月28日 「長良川沿いの花崗斑岩その2」、一昨年の12月21日「長良川本流沿いの露頭編その62」で紹介した美並町黒地地区の花崗斑岩の露頭が、長良川鉄道の列車からでも見られますので紹介します。長良川鉄道下りにおいて、木野駅出発後1分10秒ほどで右車窓から長良川が見えてきます。途中でトンネルに入りますが、トンネルを抜けてすぐ右車窓から長良川対岸(左岸)を眺めると、長良川のカーブの内側に花崗斑岩の露頭が見えます。木尾駅出発後約1分50秒後です。 郡上市美並町黒地地区の長良川左岸には、チャートを貫いて花崗斑岩が露出しています。近づかないとわかりませんが、ここの花崗斑岩は、チャートとの接触部付近では花崗斑岩を構成する鉱物の粒が全体的に細かく、接触部から離れた花崗斑岩には大きな鉱物の結晶(斑晶)が入っています。鉱物の細かい部分を急冷周縁相と呼びます。でき方など詳しくは、一 昨年の12月21日「長良川本流沿いの露頭編その62」をご覧ください。 ここで見られる花崗斑岩(貫入岩)は、地質図にも描かれてあります。⇒の先に露頭があります。地質図上ではピンク色( Okg )で、 Okg は奥美濃酸性岩類関連の岩脈(貫入岩)です。写真が五種類ありますが、上の写真は長良川鉄道の列車内から撮ったものです。それを拡大したものが中上の写真です。赤丸で囲ってある露頭は、急冷周縁相がわかる花崗斑岩です。真中の写真は花崗斑岩の露頭に近づいて西からパノラマで撮ったもので、左側の白っぽい露頭が花崗斑岩で、右に露出しているのがチャートです。中下の写真は真中の写真の中央少し左を撮ったもので、下の写真は真中の写真の中央下縁の少し左をより近づいて撮ったものです。急冷周縁相がわかる部分で、右側は鉱物の粒が全体的に細かいですが、左側は大きな鉱物の結晶が入っています。真中と中下、下の写真は、「長良川本流沿いの露頭編その62」でも使用しています。スケールとして置いてあるハンマー、黄色の定規の長さはそれぞれ約28cm、約20cmです。中下の写真は同じような写真が二枚並んでいますが、写真の下部の●を、左の写真は左目で、右の写真は右目で見て、重ね合わせるようにすると立体的に見えます。(地質図はHP「ジオランドぎふ」より 岐阜県博物館提供) 美濃地学 - 地学のおもしろさを、美濃から (minotigaku.c