露頭と立体視その14(遠景の立体写真)
「露頭と立体視その1航空写真による立体視」で紹介しましたが、左眼用写真と右眼用写真を離して撮影をし、それを立体視すれば、地形の凸凹を強調して見ることができます。航空写真は垂直方向からの撮影ですが、水平方向でも、左眼用写真と右眼用写真を離して撮れば、遠景の被写体を立体視することができるはずです。しかし、実際はなかなか難しいです。それは、撮りたい遠景の被写体の前方に違う被写体が写り込むことが多いためです。片方の写真にのみ前方の被写体が写ったり、両方の写真に前方の被写体が写るものの大きく離れたりして、立体視に違和感が出て見にくくなるのです。そのため、遠景の立体写真を撮る場合は、被写体の前方に違う被写体がないことが大切です。航空写真では、前方の被写体は雲だけなので問題はありません。前方の被写体が邪魔になれば、遠方の被写体のみをトリミングしてもよいですが、遠方の被写体に前方の被写体がかぶっているとトリミングもできません。このように、遠方の被写体のみを写す場所を見つけることが、遠景の立体写真の難しさだと思います。
「遠くの被写体を立体的に撮影する場合は、被写体までの撮影距離の2~3%程度(=1/30)が目安となる(ウィキペディア“ステレオグラム”より)」と書かれたものがありますが、山の遠景において谷と尾根の凸凹などは、左眼用写真と右眼用写真の間の距離が被写体までの距離の1/100(1%)程度までであればよさそうです。下に写真が4種類ありますが、いずれも岐阜市の忠節橋から金華山を望んで撮った写真です。長良川に架かっている忠節橋から金華山頂までの水平距離は約3kmです。その遠景の金華山を、左眼用写真と右眼用写真の間の距離を変えながら撮ってみました。左眼用写真と右眼用写真の間の距離は、上の写真が100m(1/30)、中上の写真が60m(1/50)、中下の写真が30m(1/100)、下の写真が10m(1/300)です。岐阜城がそびえ立つ金華山は、忠節橋から見ると城の下方に幅の広い谷、左下にも谷があります。その谷地形が明瞭に見えるかどうかで立体視をすると、上と中上、中下の写真は割とはっきり谷の凹地形がわかります。下の写真も凹地形がわかりますが、それより麓のビルや長良川周辺の立体がはっきりわかります。遠景の谷地形を被写体とすると、左眼用写真と右眼用写真の間の距離は、被写体までの撮影距離の1%程度(=1/100)で立体視できそうです。
下の3種類の写真は、遠方の被写体を立体視ができるようにと撮った写真です。上と中の写真は東海北陸道ひるがのSAから大日ヶ岳を撮ったもので、地形図で見ると大日ヶ岳のリフト乗り場まで約3.5km、頂上まで約7kmです。左眼用写真と右眼用写真の間の距離を測って撮ったわけではないですが、15mほど離れて撮りました。下の写真は横浜港内のクルージングで撮った写真で、横浜ベイブリッジまで2.5kmほどのところで撮ったものです。左眼用写真と右眼用写真の間は何m離れたか測って撮ったものではないですが、立体視ができると思います。
コメント
コメントを投稿