長良川本流沿い露頭編 その172 白鳥町中切の南の溶結凝灰岩に見られる本質レンズ(白鳥流紋岩) :郡上市白鳥町二日町中切の南の左岸河床露頭(二日町の建設会社の南にある「仏岩」石碑対岸)

 前回「長良川本流沿い露頭編その171」の岩壁から、下流へ(南へ)50mほどにある左岸河床の溶結凝灰岩の露頭を紹介します。今まで上流に向かって露頭を紹介してきましたが、前回紹介した岩壁が目印になりますので、この露頭を岩壁の後に紹介します。位置としては、二日町中切のつり橋から下流に440mほどの左岸河床で、右岸堤防にある「仏岩」の石碑の対岸です。

溶結凝灰岩は、火山灰や軽石などの火山からの噴出物が堆積した後、自らの重さと熱によって、含まれているガラス分が柔らかくなり(軟化し)圧縮されることによって、硬くなった岩石です。ただし、中に入っている石英などの鉱物は溶けることはありません。そのため、見かけは火山灰が固まった凝灰岩というよりは、マグマが直接冷え固まった火山岩のように見えます。実際に、今から50年以上前は石英斑岩と考えられていました。岩石をうすく研磨して、偏光顕微鏡などの顕微鏡で観察すると、ガラス成分である火山灰がつぶれた状態が見えます。また、肉眼では、軽石がつぶれてレンズ状になったものが入っているのが確認できる場合があります。他の岩石(異質物)が混ざったのではなく、自らの中に入っている軽石(本質物)がつぶれてレンズ状になっているため、本質レンズと呼びます。本質レンズが確認できる場合、堆積面に平行につぶれるため、現在地殻変動のため傾いていたとしても、本質レンズの傾きを調べれば、堆積したときの面(水平面と考えられる)がわかります。この露頭での本質レンズは緑灰色~灰色をしていて、幅数mm~1cmで、長さ1cm~5cmです。本質レンズが並んでいる面は、北北西-南南東を軸として、東北東に10°~15°傾いています。

地質図において、この溶結凝灰岩の露頭(×地点)は、黄土色で横線あり(SR)の中にあって、黄土色で横線ありは白鳥流紋岩火山岩類です。写真が五種類ありますが、上の写真はこの溶結凝灰岩の露頭を南からパノラマで撮ったもので、中上の写真は上の写真の中央部を撮ったものです。真中の写真は、上の写真(または中上の写真)に写っているハンマーの右を近づいて撮ったものです。ハンマーの右にいくつか写っている黒っぽくて細く短い線のようなものが本質レンズです。中下の写真は、真中の写真のハンマーの右をより近づいて撮ったものです。下の写真は溶結凝灰岩の割った面を接写したもので、写真の縦は2cmです。ガラスのように見える無色透明の鉱物は石英で、三角形になっているものがありますが、激しい噴火の際に砕けたため見かけ上三角形になっています。スケールとして置いてあるハンマーの長さは約28cmです。中上と真中の写真は同じような写真が二枚並んでいますが、それぞれの写真の白丸を、左の写真は左目で、右の写真は右目で見て、重ね合わせるようにすると立体的に見えます。(地質図はHP「ジオランドぎふ」より 岐阜県博物館提供)







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