飛騨地方の露頭編 その5 高山市滝町の上宝火砕流堆積物 :高山市滝町の岩滝トンネル南口付近

 高山市滝町に南北方向に170mほどの岩滝トンネルがあります。その南口に柱状の岩石(上宝火砕流堆積物)が広く露出しています。以前は採石場でしたが、現在は採石作業が行われていなく、そのままの状態ですので、上宝火砕流堆積物の中では観察しやすい露頭です。上宝火砕流堆積物は、新生代第四紀更新世中期(約64万年前)に、高山市奥飛騨温泉郷(旧上宝村)福地の南方にある貝塩給源火道と呼ばれる火口から噴出したものです。おもに西方へ向かって、高山市街地周辺まで流れました。旧上宝村から旧丹生川村、旧高山市東部、旧朝日村にかけて、約500km2にもおよぶ広い地域に分布します。上宝火砕流堆積物の大部分は流紋岩質の溶結凝灰岩からなり、硬いためしばしば絶壁をつくるようです。

地質図において、この露頭(×地点)は、茶色(KMp)の中にあり、茶色は上宝火砕流堆積物です。茶色の近くに分布するうす茶色(YHn)は、丹生川火砕流堆積物(今の槍・穂高連峰の位置にあったカルデラ火山が噴火し、噴出した大規模な火砕流の堆積物)です。また、緑色(Mbs)、オレンジ色(Mch)、そら色(Msl)などは美濃帯堆積岩類で、それぞれおもに玄武岩質火山岩類(緑色岩)からなる地層、おもにチャートからなる地層、珪質泥岩からなる地層です。写真が五種類ありますが、上の写真は岩滝トンネルの南口周辺を南からパノラマで撮ったもので、中上の写真は上の写真の中央部を撮ったものです。トンネル周辺の柱状(柱状節理)の岩石は、上宝火砕流堆積物の大部分を占める溶結凝灰岩です。真中の写真は、トンネル南口の右側(東)の柱状節理を撮ったものです。写真の中央から下方にかけてスケールが写っています(見にくいです)が、長さは1mの折れ尺です。中下の写真は柱状節理の表面を接写したもので、写真の縦は5cmです。下の写真は、切り出されてあった溶結凝灰岩を撮ったもので、写真の縦は13cmです。暗灰色のレンズ状のものは、流紋岩質マグマの中に入っていたガラス片や軽石などが、堆積後に自重と高熱によって引き伸ばされ密着した(溶結した)ためにできたもので、本質レンズと呼ばれています。中上と真中の写真は同じような写真が二枚並んでいますが、それぞれの写真の●を、左の写真は左目で、右の写真は右目で見て、重ね合わせるようにすると立体的に見えます。(地質図はHP「ジオランドぎふ」より 岐阜県博物館提供)







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