露頭と立体視 その1(航空写真による立体視)
X(エックス、旧ツイッター)では、1年間と少し、「名古屋の街化石」と「立体視ができる写真」をほぼ毎日ポストしてきました。「名古屋の街化石」については、ブログでも「都市で見られる化石」と題して、2024年1月5日~5月8日にかけて、26回に分けて紹介してきました。そこで、「立体視ができる写真」についても、ブログでまとめていきたいと思います。
立体視ができる写真(立体写真)は古くから知られており、2眼の立体視用のカメラで撮った2枚の写真を使って立体視をします。しかし、2眼の立体視用のカメラは両眼(右と左のレンズ)の距離が固定のため、近景の被写体は立体に見えますが、遠景の被写体はあまり立体には見えません。例えば、人の右眼と左眼の距離は約6cmですが、人の眼では数m~10mほどの被写体は立体に見えますが、それより遠方の被写体(景色など)はほとんど立体には見えません。つまり、右と左のレンズが6cmほど離れている立体視用のカメラでは、数m~10mほどの被写体はしっかり立体感がわかりますが、遠方の被写体(景色など)は立体に見えにくいのです。しかし、左眼用の写真と右眼用の写真を大きく離して撮影をし、その写真を左右に並べて立体視をすると、肉眼では立体に見えない遠方の被写体も立体に見ることができるのです。2眼同時に撮影しなくても、被写体が動かないものであれば、カメラ一台で左眼用と右眼用に写真を撮ればよいのです。ただし、そのためにはカメラを平行に移動し、被写体を2回撮影する必要があります。その仕組みを使って撮影したものが立体視用航空写真です。
地形や地質を学ぶ、もしくは研究する者にとって、航空写真を使った立体視によって地形を読み解くのは、重要な作業です。最近の航空写真を使って立体視もされますが、現在は土地の大規模開発が進んでいて、本来の地形の姿がわからない地域も多いです。そこで、まだ開発が行われていなかった時期に撮られた写真が使われることが多いのです。それが、第二次世界大戦直後に撮影された米軍による航空写真(白黒写真)です。航空写真による立体視によって、活断層や断層地形の認識、段丘面の範囲や高低差、地すべり地形の認識、火山の形、火山噴出物の分布などを、読み取ることができます。つまり、航空写真による立体視は地形を読み解くのに欠かせない重要な作業、むしろ調査なのです。
写真が2種類ありますが、両方とも岐阜県美濃市の近年の航空写真です。同じような写真が2枚並んでいますが、写真の下の白丸を、左の写真は左目で、右の写真は右目で見て、重ね合わせるようにすると立体的に見えます。上の写真は、美濃市立花地区周辺の航空写真です。立体視をすると、中央上部にある還流丘陵(平地に残された丘陵)や周囲の山々の尾根や谷が立体で見えます。また、還流丘陵の周りの平地は旧流路ですが、その蛇行の様子もわかります。下の写真は、長良川と板取川の合流部(美濃市曽代、安毛地区)の航空写真です。立体視をすると、山々の尾根や谷が立体で見えるとともに、合流部の下と左下に周囲の平地と比べて少し高い段丘面があるのがわかります。
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