一枚の写真から その6 貫入岩中の流理構造

 

以前、郡上市美並町の中学校に勤務していた先輩教員から、「珪化木のように年輪のようなものが見える石が学校に以前から置いてあり、美並町内で採集したということだけれど、何だと思う?」と聞かれ、実物を見せられました。どっしりした柱状の石でした。縦に平行の細かい縞模様が何本もあり、年輪のように見えましたが、縞模様の中に細かい石英の粒が点在していることは確認できましたので、「石英が入っているので、流紋岩質の溶岩で流理構造が年輪のように見えていると思う。」と答えました。しかし、美並町に流紋岩質の溶岩ってあったかなぁ、とそのときは疑問をもちながらも、流理構造は溶岩にのみ見られるものだと決めつけていました。それから10年以上だった後に、その珪化木のような石の正体を突き止めたとともに、流理構造は貫入岩でも見られることに気付かされました。

上の1枚の写真は、郡上市美並町下田の南の長良川右岸で撮ったものです。貫入岩である花崗斑岩に見られる流理構造だと思われます。流理構造は、中に入っている鉱物の結晶などが平行に配列して縞模様をなす岩石の構造です。粘性の高い流紋岩質マグマが流動している場合、粘性が高いためマグマは均質になることなく、引き伸ばされたり、押し縮められたりすることによって、中に入っている鉱物などが平行に並び、不均質が縞模様として残るのです。流紋岩という言葉自体、流理構造を示す岩石という意味です。そのため、溶岩で見られる構造と思い込んでいましたが、ここでは花崗斑岩という貫入岩で見られるのです。

流理構造は、他の岩石(ここでは美濃帯堆積岩類中の混在岩)との接触部から40cm~75cmの幅で存在しています。流理構造の見られる部分は、鉱物結晶は1mm以下でわかりにくいです。この流理構造の見られる部分は接触部近辺であるため、他の部分と比べると冷えやすく、粘性をもちながら流動し、その跡が縞として残ったのだと思います。

下の写真は、流理構造が見える露頭を少し離れて撮ったもので、下半分の黒い岩石は混在岩(泥岩の中に砂岩などの岩塊が混ざっている岩石)、上半分の白っぽい岩石は花崗斑岩です。


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