投稿

5月, 2026の投稿を表示しています

一枚の写真から その24 「ジオ(Geo)」が世の中により広がることを願って

イメージ
  上の写真は、今から13年前に出版された「観光地の自然学-ジオパークでまなぶ- 小泉武栄 古今書院」の表紙と目次の一部を撮ったものです。「はじめに」に次のことが書かれてあります。 「有名な観光地に行くと、観光客にガイドが何か説明していることがよくあります。ただ、そのほとんどがそこの歴史に関するものか、「あの岩は獅子岩といいます」といった……。目の前に雄大な景色が展開しているのに、そのでき方についての解説などないのが普通ですし、不思議な地形を見て、なぜこんな地形ができたのかという説明もありません。珍しい植物があっても、ただ名前を教えてもらってそれでお終いです。…」この本は2013年に出されたものなので、現在とは状況が少し違いますが、観光地の大地のでき方や、地形と地質の関わりについてより、歴史に関するものや名称についての説明が多いというのはその通りだと思っています。ただし、最近はジオパークについての理解も進み、特にジオパーク内ではその場所の成り立ちや背景についての説明がなされています。 ジオパークの「ジオ( Geo )」は、ギリシャ語の「大地」や「地球」を意味する接頭語です。観光地にジオが関わっていることは多いです。でも、その観光地が地球の歴史の中のどこでどのように形成されてきたものなのか、それが地形・地質的に何を意味しているかなど、知らないことが多いのではないでしょうか。 この本の「おわりに」に書かれてありますが、「この岩はなぜここにあるのだろうか、この海岸のこの岩はなぜこんな形をしているのだろう、この滝はどうしてできたのか、ここに砂丘があるのはなぜ、この植物はなぜここに生えているのだろう。」これらの視点が重要だと思うのです。観光地は、自然、歴史、文化の背景があって成り立っていて、その理解が重要です。「おわりに」にはこのようにも書かれてあります。「…残念なことに日本人は、学校教育で、たとえば氷河時代のことや動植物の分布、自然景観の成り立ちといった、自然史について学ぶことがほとんどありません。このため、身のまわりの自然や景観がどのようにしてできたかという点について、ほとんど知らないまま大人になっています。…」身のまわりの自然や景観は、地形・地質に裏打ちされたものが多いのです。 自分がブログ「美濃地質」で、県外編を書いているのも、上記のように考え...

一枚の写真から その23 川原の石により興味をもってもらえるように

イメージ
  上の写真は、今から24年前(西暦 2002 年)に、木曽川に架かる愛岐大橋下で川原の石観察会を行ったときの写真です。「岐阜県の地学を学ぶ会」の活動の一環です。地質を学んできた先輩や同年代の方々(主に教員)と1998年(平成10年)に「岐阜の地学を学ぶ会」という会を立ち上げ、一般を対象に地学に関する講演会と岐阜県内の地質見学会を年に2回ずつ行ってきました。14年間続きました。その中で、身近な川原の石についても、一般の方に石の見方を伝え、石に興味を持ってもらおうというねらいで、長良川沿いや木曽川沿いで数回川原の石観察会を行いました。 自然観察というと、植物観察、昆虫観察、野鳥の鳴き声を聞くバードウォッチング、夜空の天体観測、川や海の生物調査(カワゲラウォッチングなど)があげられます。なかなかそこに岩石や地層などが入りません。岩石の観察には、地質学的な知識が必要となり、専門的で少しハードルが高いと感じられるのかもしれません。しかし、岩石や地層の観察は、地球が歩んできた歴史の一部を観察しているのです。まさに自然観察です。地球の歩みの一部を理解するには、岩石や地層を知ることは欠かせないはずです。そのためにも岩石(石ころ)や地層の理解をもっと広めていかないと…と思うのです。 石(岩石)は、前回( 一枚の写真からその22 )も書きましたが、成り立ち(成因)に基づいて名前がつけられているため、岩石に残されている成り立ちを読み取ることができなければ、名前はなかなかわからないのです。図鑑による岩石の写真だけでは、成り立ちをなかなか読み取ることができません。そのため、川原の石の場合、次の2点が大切になってきます。 ・どのような成り立ちが石のどこに表れているか、特徴を知った上で観察すること ・川の上流に石のふるさとがあるので、上流部がどのような地質でできているかを把握すること 後者については、川の上流の地質図が不可欠となります。全国的には産総研地質調査総合センターが地質図を整備しています。岐阜県の地質は、他の県と比べても詳しく調査研究されていますが、その今まで研究結果は岐阜県全体の詳細な地質図として整理され、かつそれを誰でも見られる形で Web の地質図として公開( 2015 年)されました。その立役者が岐阜大学の小井土名誉教授(故人)で、「ジオランドぎふ」...

一枚の写真から その22 関市(岐阜県)の成人学校講座を受けもつことになって

イメージ
 あるきっかけで、令和8年度前期に関市生涯課主催の成人学校講座の講師を頼まれました。1回90分を4回分。一般の方を対象に、基本的には座学でできること、ということでした。1回は外へ出ることも可能ということで、関市の関観光ホテル前の川原(長良川右岸)での川原の石と露頭の観察も入れて、「長良川の石ころ観察と岐阜県の大地」という題目で4回の講座を実施することにしました。上の写真は、関観光ホテル前の川原で撮ったもので、美濃帯堆積岩類の砂岩泥岩互層の露頭が中央に写っています。  私は大学の教育学部で地学(特に地質)を学び、中学校の教員になってからも地学分野にこだわり、研究授業は理科の先生が好んでは行わない地学を進んで行ってきました。また、時間があるときは、長良川沿いなどで見られる露頭(岩石や地層が露出しているところ)を探し、観察をしていました。そのような中で、考えていたことがありました。 岩石や地層が露出しているところ(露頭)はなかなか身近ではないけれど、岩石や地層が砕けた石ころと呼ばれるものは身近にいっぱいあります。いっぱいあるからこそ、興味をもたれないのかもしれないですが、何とか、少しでも多くの人が身近にある石ころに興味をもてるようにならないだろうか、と。教員時代も、その思いで理科の中の地学の授業を行っていました。 中規模の本屋で自然に関する図鑑を探すと、動物、植物の図鑑は数十冊あり、昆虫や樹木など種類別でも何冊もあります。しかし、岩石(鉱物も含む)は数冊しかありません。岩石や鉱物の図鑑は少ないのです。かつ、植物や動物は、写真やスケッチが載っていれば、比較してどうにか名称を知ることができます。今では、スマホのアプリで、写真を撮るだけで検索ができます。しかし、岩石の図鑑はあっても、川原など身近にある石を写真と見比べてもなかなかわからない、見かけだけで判断することがなかなかできないのです。 石は見かけではなかなかわからない、なぜでしょう。科学的根拠に基づいて名前をつけるからには、石は成り立ちに基づいて名前をつけることが重要で、実際に成り立ちに基づいて名前がつけられています。だから、成り立ちを読み解くことができなければ石の名前はわからないのです。石に残された組織などから成り立ちを読み解くことができれば、名前がわかるのです。また、特に川原にある石は、川の上流から流さ...

県外編 その37 熊本県山都町の五老ヶ滝 :熊本県上益城郡山都町城原

イメージ
熊本県山都町内にはいくつも滝がありますが、その中で最大級の滝が五老ヶ滝です。高さ50mほどのようです。歩道にかかるつり橋から滝の全景を見渡すことができ、天気のよい日には虹を見ることもできます。 滝の成因はいくつかありますが、その中でも代表的なでき方の1つは、造瀑層と呼ばれる硬い岩石層がある場合です。水の浸食に対する抵抗性の異なる岩石や地層が重なっているところを川が流れる場合、浸食の度合いによって段差を生じるのです。抵抗性の高い硬い岩石層が上部にあり、抵抗性の低い軟らかい岩石層が下部にあると、下部の軟らかい岩石はどんどん削られますが、上部の硬い岩石は削られにくいです。そのため、下部だけが掘り込まれ、上部が残ってしまい、崖(段差)ができます。この場合、硬い崖となる岩石層のことを造瀑層と呼びます。この五老ヶ滝もそのような滝のようで、真中の写真で滝の下部が写っていますが、滝壺のすぐ上の層だけ異なった岩石層のように見えます。全体(上部)は、阿蘇火砕流堆積物の溶結凝灰岩でできており、基本的には硬く浸食しにくい岩石です。 近くには、通潤橋と呼ばれる石造りのアーチ橋があります。江戸時代末期の1874年(嘉永7年)、水不足に悩む台地に水を送るため、矢部(現在の山都町)の惣庄屋・布田保之助によって造られた日本最大級の石造アーチ水路橋です。石造アーチ橋の中で唯一放水ができる橋です。橋の長さは約78m、橋の幅は6 . 6m、橋の高さは約21 . 3m、アーチの半径は約28 . 1mです。約6km離れた笹原川の上流から水を引き、水路の総延長は約42kmにも及びます。灌漑面積は約100haで、今も現役で、台地の棚田を潤しているのです。2023年、土木構造物としては全国初となる国宝に指定されました。(熊本県公式観光サイト「もっと、もーっと!くまもっと。」より) 写真は五種類ありますが、上3枚の写真は五老ヶ滝、下2枚は通潤橋を撮ったものです。上の写真は滝をパノラマで、中上の写真は滝の全体を、真中の写真は滝の下部を撮りました。中上と真中の写真は、滝の右の滝壺にうっすら虹がかかっているのがわかります。真中の写真で、滝つぼの上の茶色っぽい地層は岩質が異なる地層だと思われます。中下の写真は通潤橋を撮ったものですが、川面にも通潤橋が写っています。下の写真は放水中の通潤橋を撮ったものです。上の写真...