長良川本流沿い露頭編 その62 美並町黒地の花崗斑岩でみられる急冷周縁相 :郡上市美並町大原黒地左岸露頭

   昨年の9月28日「長良川沿いの花崗斑岩その2」で紹介した美並町黒地の花崗斑岩でみられる急冷周縁相について、再度紹介します。郡上市美並町黒地の長良川左岸には、チャートを貫いて花崗斑岩が露出しています。花崗斑岩は多くの場合、石基と呼ばれる細かい鉱物の結晶やガラス質の中に、斑晶と呼ばれる大きな鉱物の結晶が入っています。この露頭をよく観察すると、チャートとの接触部付近では花崗斑岩を構成する鉱物の粒が全体的に細かく、接触部から離れた花崗斑岩には大きな鉱物の結晶(斑晶)が入っているのがわかります。花崗斑岩のように貫入した岩体において、貫入された岩石との接触部付近では鉱物の結晶が細かいことが多く、その岩相を急冷周縁相と呼びます。マグマが貫入して板状に固まったものを岩脈といいますが、花崗斑岩などの岩脈では、より大きな結晶が岩脈の中央部に集まる傾向が知られています。冷え固まる前の岩脈の中をマグマなどの液体が流れて移動する際、他の岩石との接触部では低温と摩擦のため低速(流れがゆっくり)になりますが、中央部は高速のまま(流れが速い)です。すると、高速である中央部に大きな結晶が移動するのです。そのため他の岩石との接触部では、大きな結晶は移動してしまい、かつ急冷のため鉱物が成長することもできないので、結晶は細かいかガラス質なのです。

ここで見られる花崗斑岩(貫入岩)は地質図でも表現がしてあり、この露頭が見られる×地点はピンク色(Okg)の中にあります。Okgは奥美濃酸性岩類関連の岩脈(貫入岩)です。写真が五種類ありますが、上の写真は花崗斑岩の露頭を西からパノラマで撮ったもので、左側の白っぽい露頭が花崗斑岩で、右に露出しているのがチャートです。中上の写真は上の写真の中央部を西から、真中の写真は上の写真の左上の部分を南から撮ったものです。中下の写真は、上の写真の中央下縁部分を近づいて西から撮ったものです。急冷周縁相がわかる部分で、右側は鉱物全体が細かいですが、左側は粗い鉱物が入っています。下の写真はその鉱物の大きさがよりわかるようにした写真で、右側は接触しているチャート層の近くの花崗斑岩(急冷周縁相の部分)で、左側は接触部から離れた場所の花崗斑岩です。写真の縦は10cmです。スケールとして置いてあるハンマー、黄色の定規の長さはそれぞれ約28cm、約20cmです。中上と真中の写真は同じような写真が二枚並んでいますが、それぞれの写真の●を、左の写真は左目で、右の写真は右目で見て、重ね合わせるようにすると立体的に見えます。(地質図はHP「ジオランドぎふ」より 岐阜県博物館提供)







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