一枚の写真から その16 溶結凝灰岩のレンズ状の本質物

 

この写真は、郡上市高鷲町穴洞の長良川右岸露頭を撮ったものです。露頭までのアクセスはよく、穴洞にある温泉施設(湯の平温泉)の駐車場から川原へ下りた所で見られる露頭です。白鳥流紋岩と呼ばれる岩体中の露頭で、岩石は溶結凝灰岩です。火山から噴出し、堆積したものです。この写真では、緑灰色をした数cm~10数cmの長さのレンズ状のものが横方向に多く入っています。このレンズ状のものは、火山から噴出した時は軽石として空中で一度冷え固まり、それが堆積後につぶされレンズ状になったものです。堆積後につぶされるのは、火山噴出が大規模で、多くの噴出物が火砕流となって移動し、その大規模なゆえに、一度空気中で冷え固まった軽石が全体の堆積物の熱によってやわらかくなり、また全体の重さによってつぶされたためです。そのため、レンズ状のものはすべて同じ方向を向いているのです。このレンズ状のものを、同じマグマでできた(本質物でできた)レンズ状をしたものということで、「本質レンズ」と呼びます。すべての溶結凝灰岩に本質レンズが多く入っているというものではなく、多くの本質レンズが見られるのは限られています。このレンズ状の形は、つぶされた方向に対し垂直に近い面で見られますが、つぶされた方向から見ると、下の写真のように楕円形に近い形に見えます。この形の本質レンズも、ここの露頭で見られます。

火山灰や軽石などの火山噴出物が堆積して固まった岩石は凝灰岩ですが、その中で溶結凝灰岩と呼ばれるものは、前述しましたが、火山噴出が大規模のゆえ、一度堆積したものが自らの熱と重さによってつぶされたものです。そのため、全体的に火山灰(火山ガラス)もつぶされているのですが、それは岩石薄片を作成し顕微鏡で見ないとなかなかわかりません。肉眼で観察する場合、本質レンズがあれば溶結凝灰岩であるとわかります。ですから、本質レンズは、溶結凝灰岩であるかを見分ける指標になります。

また、溶結凝灰岩が堆積する時は水平に堆積し、本質レンズも水平につぶされます。現在分布する溶結凝灰岩中の本質レンズが傾いていたり、垂直に立っているような場合は、堆積後の地殻変動によって傾いたり、垂直に近くなったりしたと考えられます。そのため、本質レンズの傾きを測ることによって、堆積後の地殻変動を調べることができます。

岐阜県には、濃飛流紋岩をはじめ、奥美濃酸性岩類など多くの溶結凝灰岩がありますが、このように本質レンズが見事に見える露頭は限られています。


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