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板取川沿いの地質、露頭 その33 関市洞戸尾倉と阿部の境界付近の珪灰石、チャート石灰岩互層の痕跡と甌穴 :関市洞戸尾倉と阿部の境界付近の右岸河床露頭(「板取川沿いの地質、露頭その32」の北方数10mの露頭)

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 前回「板取川沿いの地質、露頭その32」で紹介した珪灰石の露頭から北へ数10m進んだところに、珪灰石に甌穴ができている露頭、およびチャート石灰岩互層が熱変成によって珪灰石に変化していると思われる露頭(チャート石灰岩互層の痕跡)がありますので、紹介します。 珪灰石は化学式で書くと CaSiO 3 で、石灰岩( CaCO 3 )に珪酸( SiO 2 )が加わってできた変成鉱物です。化学反応式で表すと、 CaCO 3 + SiO 2 → CaSiO 3 + CO 2  です。チャート石灰岩互層は、チャートと石灰岩が交互に積み重なっている地層です。石灰岩の主な成分は CaCO 3 で、チャートの主な成分は SiO 2 です。そのため、チャート石灰岩互層が熱変成を受けることによって、珪灰石 CaSiO 3 が形成されるようです。チャート石灰岩互層が熱変成を受けたと思われる露頭を観察する限り、石灰岩の部分が珪灰石になっているようです。石灰岩が熱変成を受けると結晶化し方解石になりますが、方解石か珪灰石か詳しく観察をしているわけではありませんので、石灰岩の部分がすべて珪灰石になっているかどうかはわかりません。 地質図において、×地点が露頭の位置ですが、オレンジ色( Mch )の中にあり、オレンジ色はおもにチャートからなる地層です。写真は五種類ありますが、上の写真は露頭を少し離れて南から撮ったものです。写真の中央部に甌穴が写っています。甌穴の大きさは南北180cmほど、東西160cmほどで、上下は175cm以上です。下はやや泥がたまっていて、深さはわかりません。中上の写真は、その甌穴を中心にして北東からパノラマで撮ったものです。甌穴に近づいて撮ったものが真中の写真です。中下の写真は甌穴の北方3 . 5mほどの場所を東から撮ったもので、チャート石灰岩互層が熱変成を受けたものだと思われます。中上の写真の右下の部分にあたります。立体視で見ることができれば、地層で凸部分と凹部分がわかると思いますが、凸部分が元チャート層で、凹部分が元石灰岩層です。観察すると、凹部分が珪灰石になっています。下の写真は、中下の写真に写っているハンマーのグリップの左から左下にかけて近づいて撮ったものです。スケールとして置いてあるハンマーと黄色の折れ尺、定規の長さは、それぞれ約28cmと1m、約17cmです。

板取川沿いの地質、露頭 その32 関市洞戸尾倉と阿部の境界付近の珪灰石 :関市洞戸尾倉と阿部の境界付近の右岸河床露頭

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  2020年12月1日「板取川沿いの岩石その11」で紹介した洞戸尾倉の北(尾倉と阿部の境界付近)で見られる珪灰石を再度紹介します。板取川沿いには長良川本流沿いと同様、主に美濃帯堆積岩類が分布しています。そのため、長良川本流沿いに分布する岩石と同様のものが露出しているはずです。しかし、板取川沿いの岩石は近くに分布する奥美濃酸性岩類による高熱の影響を受けているため、岩石中の鉱物が変化していることがあります。その結果、長良川本流沿いとは異なる岩石、鉱物が露出している場所があります。 関市洞戸事務所東の国道256号を北進し、洞戸尾倉の集落を越したところに尾倉消防団の車庫があります。そこを越え、800mほど進むと、右側の道路わきにスペースがあり、川原へ下りる細い道があります。尾倉と阿部の境界の表示板の100mほど南(手前)です。川原へ下りると、岩石が露出していますが、全体的にはチャートです。ただし、奥美濃酸性岩類による接触変成作用(熱変成作用)のため、チャートは高熱により再結晶し、より硬いホルンフェルスになっています。中には、より白っぽくなっている岩石がありますが、よく見ると白い鉱物が繊維状に入っているのがわかります。この繊維状の鉱物は珪灰石です。珪灰石は石灰岩(C a CO 3 )に珪酸(S i O 2 )が加わってできた変成鉱物(スカルン鉱物)です。ふつうは繊維状の塊で、色は白色です。 地質図において、×地点が露頭の位置ですが、オレンジ色( Mch )の中にあり、オレンジ色はおもにチャートからなる地層です。写真は五種類ありますが、上の写真は露頭を北からパノラマで撮ったもので、中上の写真は上の写真の中央上の部分に近づいて撮ったものです。真中の写真は中上の写真(または上の写真)に写っているハンマー頭部の左上をより近づいて撮ったもので、白く繊維状に写っているのが珪灰石です。中下の写真は、上の写真の露頭から北へ15mほど離れたところにある露頭を南から撮ったものです。露頭の下部は白っぽく写っていますが、珪灰石です。下の写真は珪灰石を接写したもので、写真の縦は3cmです。スケールとして置いてあるハンマーと定規の長さは、それぞれ約28cmと約17cmです。中上と中下の写真は、同じような写真が2枚並んでいますが、写真の下の●を、左の写真は左目で、右の写真は右目で見て、重ね合わせ

板取川沿いの地質、露頭 その31 関市洞戸尾倉右岸の破断した砂岩泥岩互層の熱変成 :関市洞戸尾倉の集落の北東右岸露頭

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前々回「板取川沿いの地質、露頭その29」で紹介した露頭は、尾倉消防団の車庫の脇から川原へ下り、下流に進むとありますが、今回は同じところを下り、川原を上流に向かって進みます。上流へ100m弱進んだところの崖の露頭です。破断した砂岩泥岩互層が熱変成していると思います。 板取川も長良川本流と同様に、主に美濃帯堆積岩類の中を流れています。ただし、板取川やその支流沿いには奥美濃酸性岩類が分布していて、過去に火山活動があったことを示しています。特に、高賀地区には花崗岩が広く分布しており、その熱の影響を美濃帯堆積岩類も受けています。地質図を見ると、右上の濃いピンク色が花崗岩ですが、現在の地表からしても花崗岩の端から露頭まで1 . 8kmほどです。 この露頭は河床露頭ではなく、崖の露頭ですが、節理面が2方向に顕著に見られます。一つは北北東-南南西に軸をもち、東南東に20°ほどの傾斜です。またもう一つは東北東-西南西に軸をもち、北北西に40°ほどの傾斜です。ハンマーでたたくと、硬く、金属音を出します。熱変成を受けているためだと考えられます。風化面を見ると、暗青灰色の泥岩層中に灰色の砂岩がレンズ状に入っているのがわかります。  地質図において、×地点が露頭の位置ですが、白色( a )の中にあり、白色は第四紀の堆積物です。周囲はうす茶色( Mal )が広く分布していて、砂岩泥岩互層からなる地層です。第四紀の堆積物の下に分布している砂岩泥岩互層が露出しているのです。写真は五種類ありますが、上の写真は北東からパノラマで撮ったもので、中上の写真は上の写真の中央付近を撮ったものです。真中の写真は、上の写真(または中上の写真)に写っているハンマー付近を近づいて撮ったものです。中下の写真は、岩石の表面で見やすいところを北上から撮ったもので、暗青灰色の泥岩の中に灰色の砂岩が入っています。レンズ状であったり、ちぎれた形状であったりします。写真の縦は4cmです。下の写真は割った面を接写したもので、写真の縦は2 . 5cmです。スケールとして置いてあるハンマーの長さは約28cmです。中上と真中の写真は、同じような写真が2枚並んでいますが、写真の下の黒丸または白丸を、左の写真は左目で、右の写真は右目で見て、重ね合わせるようにすると立体的に見えます。(地質図はHP「ジオランドぎふ」より 岐阜県博物館

板取川沿いの地質、露頭 その30 関市洞戸尾倉右岸の破断した砂岩泥岩互層中の混在岩 :関市洞戸尾倉右岸河床露頭(「板取川沿いの地質、露頭その29」の下流200mほど)

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  前回「板取川沿いの地質、露頭その29」で紹介した破断した砂岩泥岩の露頭から下流へ200mほど進んだところの露頭を紹介します。泥岩の中にチャートと砂岩の礫がレンズ状に入った露頭です。「板取川沿いの地質、露頭その29」に紹介した破断した砂岩泥岩互層の露頭は、下流にほぼ連続して露出しています。破断した砂岩泥岩互層は、砂岩泥岩互層が何らかの力を受けて砂岩層が見かけ上レンズ状になったり、ちぎれた状態になったりしたものです。そのため、泥岩の中に砂岩が断片的に礫として入っているように見えます。 ここの露頭も、泥岩の中にほかの礫がレンズ状に入っているのですが、互層とは異なる点が2つあります。ひとつは、レンズ状の礫が砂岩だけではなく、チャートも入っていることです。そしてもうひとつは、レンズ状の礫を埋めている基質の部分が泥岩だけではなく、黒色の泥岩と少なめの灰色をした砂岩が混ざったものになっていることです。そのため、ここの岩石を混在岩と表現しました。入っているレンズ状の礫(砂岩とチャート)の大きさは、見かけ上幅が数cm~8cmで、長さが15cm~50cmのものが多く、最大は幅8cmで長さ77cmです。基質の部分は割れ目が発達していて、入っているレンズ状の礫の向きも割れ目の向きに調和的です。走向傾斜を測ってみると、N35°Eで、25°~40°Wです。 地質図において、×地点が露頭の位置ですが、白色( a )の中にあり、白色は第四紀の堆積物です。周囲はうす茶色( Mal )が広く分布していて、砂岩泥岩互層からなる地層です。第四紀の堆積物の下に分布している美濃帯堆積岩類が露出しているのです。写真は五種類ありますが、上の写真は混在岩と表現した露頭を南からパノラマで撮ったもので、中上の写真は上の写真の中央付近を撮ったものです。真中の写真は上の写真(または中上の写真)に写っているハンマー付近を近づいて撮ったものです。ハンマー頭部の上、グリップ部の左のレンズ状の礫はチャートです。ハンマー頭部の左の長いレンズ状の礫は砂岩で、幅が8cm、長さが77cmです。真中の写真とほぼ同じ場所を西(左側)から撮ったものが中下の写真です。下の写真はほかの場所を南から撮ったものですが、定規の右に写っている2つのレンズ状の礫はチャートです。スケールとして置いてあるハンマーと定規の長さは、それぞれ約28cm、約

板取川沿いの地質、露頭 その29 関市洞戸尾倉右岸の破断した砂岩泥岩互層 :関市洞戸尾倉の右岸河床露頭

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2020年11月30日「板取川沿いの岩石その10」で紹介した洞戸尾倉の破断した砂岩泥岩互層を再度紹介します。洞戸栗原から洞戸高見にかけて、板取川沿いに分布する美濃帯堆積岩類は、主にチャート層と砂岩泥岩互層です。洞戸尾倉では、板取川は東へ大きく曲がっています。その曲がっている板取川沿いには砂岩泥岩互層が露出していますが、本来層状である砂岩はレンズ状やちぎれた形状となっています。ここでは、破断した砂岩泥岩互層と表現しておきます。 関市洞戸事務所東の国道256号を北進し、尾倉の集落に入ると川が東へ大きく曲がっています。その北東の道路沿い(集落の北東端)に商店と尾倉消防団の車庫があります。消防団の車庫の脇から川原へ下りることができます。川原へ下り、下流に進むと破断した砂岩泥岩互層が露出しており、しばらく連続して見ることができます。 地質図において、×地点が露頭の位置ですが、白色( a )の中にあり、白色は第四紀の堆積物です。周囲はうす茶色( Mal )が広く分布していて、砂岩泥岩互層からなる地層です。第四紀の堆積物の下に分布している砂岩泥岩互層が露出しているのです。写真は五種類ありますが、上の写真は破断した砂岩泥岩互層の河床露頭を南からパノラマで撮ったもので、中上の写真は上の写真の中央付近を撮ったものです。真中の写真は、上の写真(または中上の写真)に写っているハンマー付近を近づいて撮ったものです。中下の写真は、他の場所ですが、南から近づいて撮ったものです。暗灰色が泥岩で、淡灰色が砂岩です。砂岩の地層がレンズ状になったり、ちぎれた形状になったりしています。下の写真は南(下流)へ進んで、少し離れて南から露頭を撮ったものですが、露頭が一面に広がっているのがわかります。すべて破断した砂岩泥岩互層です。スケールとして置いてあるハンマーの長さは約28cmです。中上と真中の写真は、同じような写真が2枚並んでいますが、写真の下の白丸を、左の写真は左目で、右の写真は右目で見て、重ね合わせるようにすると立体的に見えます。(地質図はHP「ジオランドぎふ」より 岐阜県博物館提供) 美濃地学 - 地学のおもしろさを、美濃から (minotigaku.com)