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展示物と立体視その6(化石の出土状態復元と立体視)

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  化石発掘などの現場は、発掘中の一度限りのもので、普通発掘している者しか見ることができません。発掘現場の化石の埋設状態は、その化石となった生物がどのような状況で死に、その後どのような経過で埋まり、どのように化石となったかを明らかにするために非常に大切なものです。普通は、図面や写真によって記録が取られ、保存されます。骨格などの化石はクリーニングや補修などの後、保存されますが、化石が埋まっていた状態はなかなか保存されないのが実情です。しかし最近では、化石が出土した状態を保存するために、化石の出土状態の型取り作業後、レプリカを作成し、保存、展示することが多くなってきたように感じます。 岐阜県瑞浪市釜戸町で 2022 年に発見されたパレオパラドキシア、兵庫県丹波市山南町で 2006 年に発見された丹波竜(タンバティタニス)は、その後発掘され、多くの全身骨格が見つかりました。また、その骨格を展示する博物館(瑞浪市化石博物館、たんば恐竜博物館)がリニューアルされ、両館とも現在は化石の出土状態復元のレプリカも展示されています。特に、たんば恐竜博物館では、2人の発見者が最初見つけた肋骨がどのように出土していたかもレプリカで示されています。 最近のレプリカは非常に高精度で、化石の出土状態がリアルに復元してあります。そのため、立体感がわかるように立体写真を作成すると、よりリアルに化石の出土状態がわかります。また、立体写真は左右の距離を調整することで、立体感がより強調できます。回転させることなく、平行移動で撮る必要はありますが、うまく撮れれば、写真で発掘現場の立体感を伝えることができるのです。 下の5種類の写真は、たんば恐竜博物館(上と中上、真中の写真)と瑞浪市化石博物館(中下と下の写真)に展示されてある出土状態の復元レプリカです。上の写真は最初に発見されたタンバティタニスの肋骨の再現レプリカで、中上の写真はタンバティタニスの全身骨格の出土状態です。真中の写真は、中上の写真に写るレプリカに近づいて、肋骨と恥骨部の出土部分を撮ったものです。中下と下の写真はパレオパラドキシアの出土状態ですが、中下の写真を左側から撮ったものが下の写真です。 下の3種類の写真は、発掘現場のレプリ...

展示物と立体視その5(鉱物の結晶と立体視)

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博物館に展示された鉱物は、基本的に小さいものが多いので、左眼用と右眼用写真を撮るにはそれほど離す必要がないです。そのため、カメラを平行に数cm~10数cm移動して、2回撮れば立体写真の撮影はできます。2回撮りは、カメラを回転させずに、平行に動かすことが重要になりますが、カメラを展示ガラスに対して垂直にすると、平行に動かして撮ることがわりと楽にできます。 鉱物の立体視のよさは、何といっても、結晶形の美しさを立体感もって見られることです。特に、結晶の形が明確な鉱物(水晶、黄鉄鉱、蛍石など)は立体視で見ると、1枚の写真で見るよりもよりリアルに見えます。立体視によって、鉱物の独自の結晶の形である六角柱状、立方体、正八面体などの立体をとらえることができます。立体でとらえることによって、直線と平面によって構成される結晶の美しさが強調されます。また鉱物によっては、ある決まった平面で割れやすい場合があり、その面を劈開(へきかい)面と呼びますが、立体視で見ることによって、その平面の美しさが強調されます。ただし、結晶面は光を反射するため、写す角度によっては結晶面全体が光って、立体視に違和感が出てくる場合があります。  写真は6種類ありますが、上から順番にカリ長石と石英“煙水晶”(中津川市鉱物博物館)、黄鉄鉱(中津川市鉱物博物館)、蛍石(岐阜県博物館)、トパーズ(ミュージアム鉱研地球の宝石箱)、石英“水晶”(中津川市鉱物博物館)、鉄ばんザクロ石(ミュージアム鉱研地球の宝石箱)です。   美濃地学 - 地学のおもしろさを、美濃から (minotigaku.com)

展示物と立体視その4(現在生きてはいない生物の化石の展示物と立体視)

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名古屋などの都市の建物や施設には、外国産の大理石が使用されていることがあり、その中にはアンモナイトやべレムナイト、厚歯二枚貝、貨幣石(大型有孔虫)など現在生きてはいない生物の化石が見られることがあります。しかし、これらの化石は断面でしか見られないため、なかなか生物全体の形がイメージできません。アンモナイトは有名ですのでイメージはつくと思いますが、厚歯二枚貝が多く入っていると言われて、上の写真のような壁を見ても生物全体のイメージがつかめないと思います。この写真は、JR名古屋駅の前にあるミッドランドスクエア3階の壁を撮ったもので、アウリジーナフィオリータというイタリア産の石材です。多くの厚歯二枚貝が入っています。福井県立恐竜博物館には、常設展示で厚歯二枚貝が展示されています。その姿(中上の写真)を立体視で見ると、円錐を逆さにしたような形であり、壁で見られる厚歯二枚貝は縦断面や横断面などを見ていることがわかります。生物の姿全体をイメージしながら、大理石の壁にある生物の断面を見ると、どこの断面かがわかってきます。 大型有孔虫の一種である貨幣石(ヌンムリテス)は古第三紀に生息した生物で、現在は生きていません。形状が貨幣に似ていることから、この名で呼ばれたのですが、大理石の壁では断面となるため、円形や長細いレンズ形などで見えます。真中の写真は、愛知県豊橋市のJR豊橋駅構内の柱で、石材はスペイン産のクレママルフィルです。円状やレンズ状のものが見えると思います。貨幣石の展示は、大阪市立自然史博物館にあります。中下と下の写真が貨幣石ですが、円形でかなり薄く、全体の姿は写真を立体視で見るとわかると思います。 ウニは現在も生きていますが、ウニの化石が建物や施設の石材の中で見られます。名古屋で代表的な場所が、JR名古屋駅新幹線乗り場の待合室床で、多くのウニが見られます。ウニといえば、棘を思い浮かべますが、死ぬと棘は本体から離れてしまいますので、ウニの本体は中華まんのような見かけです。上の写真は新幹線の待合室床を撮ったもので、円盤型をしているのがウニの断面です。中と下の写真は、福井県立恐竜博物館に展示されているジュラ紀中期のウニの化石です。中の写真は上から見たところ、下の写真は斜め上から見たところで、立体視で見ると立体感がわかると思います。 展示物の立体写真を撮る場合、撮影者の影が入ると...

展示物と立体視その3(動物の骨格と立体視)

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立体写真のよさは、立体である被写体を立体感をもって見られることです。自然系の博物館で展示の目玉である全身骨格標本(ティラノサウルスやトリケラトプスなど恐竜骨格、ナウマンゾウやマンモスゾウなどの大型哺乳類の骨格など)は、立体で見るからこそ迫力があり、また骨格の構造がわかります。ただし、全身骨格はけっこう人気があり、見学者に絶え間がないため、人が写らない写真がなかなか撮れません。時間差で左眼用と右眼用の写真を撮影する場合、人が写ると移動のため左右の写真で人の位置が異り、適した立体写真を撮ることができないのです。 下の3枚の写真は、豊橋市自然史博物館の入口入って少し先のロビー(自然史スクエア)に展示してあるティラノサウルスとトリケラトプスの全身骨格です。立体視で見ると、立体で見えるからこその臨場感があると思います。この写真は見学者が少ない平日の早い時間に撮りました。 恐竜などの現在生きていない動物の全身骨格復元は、発見された骨格の情報をもとに、過去に発見された同じ又は似た動物の骨格で足らない部分を補うなどして、行われています。特に、骨がどのように関節するかについては、論文やその他の資料を参考にして行われます。最近では、力学的な検討(例えば、重い頭を支えるための力学的なバランスをとることがどうすれば可能かなど)や生理学的構造の検討(例えば、関節のつき方や骨の丈夫さなどによって脱臼する可能性があるかどうかなど)によって、復元骨格の検討がなされています。そのため、科学が進歩するにしたがって、復元骨格は変わることがあります。  昔の定説では、アロサウルスは長い尻尾を引きずって歩くゴジラ型でした。しかし長年の研究により、重い頭とのバランスをとるために尻尾を上げながら歩いていたことが明らかになり、現在では頭と尻尾でバランスをとるつり橋型が定説です。下の2種類の写真はいずれもアロサウルスの全身骨格で、上の写真は昔の説によって復元された大阪市立自然史博物館のアロサウルス、下の写真は現在の説によって復元された岐阜県博物館のアロサウルスです。立体視によって、全身骨格がより理解できると思います。ちなみに、大阪市立自然史博物館では寄附を募って、現在のつりばし型の復元も展示しようとしてみえます。    下の5種類の写真は、昔生きていた大型動物の全身骨格です。上から福井県立恐竜博物館...

展示物と立体視その2(展示模型の立体写真)

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  下の2種類の写真は、古生代ペルム紀の大型2枚貝であるシカマイアの模型です。シカマイアは、美濃帯堆積岩類中の石灰岩から見つかっています。しかし、化石ではシカマイアの断面しか見られないため、全体の形はわかっていませんでした。研究によって、いくつもの断面を検討し、全体の形が推定されました。その模型が2種類の写真なのです。上の写真は岐阜県博物館に展示してある模型ですが、1枚の写真では、何となく膨らんでいる部分があるように見えても、どのように膨らんでいるかはわかりにくいです。立体視をすると、中央より左下が膨らみ細長い穴が開いていることがわかります。 復元模型は、化石から得られた3次元推定なので、研究者によってはやや異なります。下の写真は豊橋市自然史博物館に展示してある模型です。同じシカマイアという巨大二枚貝であっても、上の写真と下の写真では少し異なります。全体の形を把握できる立体模型は、立体写真によってより理解できるでしょう。 岐阜県博物館に展示してあるシカマイアの模型 豊橋市自然史博物館に展示してあるシカマイアの模型 下の4種類の写真は、化石で見つかっている生き物の模型を撮ったものです。模型は生きていた時の姿をイメージするために立体で作成したものです。1枚の写真ではなかなか立体感が伝わりませんが、2枚のとなり合う写真を立体視で見ることによって、博物館で展示されている立体模型を感じることができると思います。上の写真は群馬県立自然史博物館のフズリナの模型、中上の写真は豊橋市自然史博物館の放散虫の模型、中下の写真は九頭竜化石ラボガ・オーノのベレムナイトの模型、下の写真は豊橋市自然史博物館のアノマロカリスの模型です。 フズリナ(レピドリナ)の模型 群馬県立自然史博物館 放散虫(エンタクティニア)の模型 豊橋市自然史博物館 ベレムナト復元模型 九頭竜化石ラボ ガ・オーノ アノマロカリスの模型 豊橋市自然史博物館 他にも、ミクロであるために全体の形がわかりにくい花粉の模型と放散虫の模型を載せておきます。花粉の模型は滋賀県立琵琶湖博物館で撮ったもの、放散虫の模型は地質標本館で撮ったものです。同じような写真が2枚並んでいますが、写真の下の白丸や黒丸を、左の写真は左目で、右の写真は右目で見て、重ね合わせるようにすると立体的に見えます。  花粉の模型 滋賀県立琵琶湖博物館 カシの仲間の...