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10月, 2025の投稿を表示しています

一枚の写真から その7 火成岩の急冷周縁相

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上の写真は、郡上市美並町黒地の長良川沿い左岸露頭の写真で、美濃帯堆積岩類のチャートに貫入している花崗斑岩です。シャープペンが置いてある周辺は鉱物の結晶がほとんど見えなくて、縦に灰色のラインが何本か入っています。一方、写真の左端近くには白い鉱物(長石)が点在しているのがわかります。シャープペンが置いてある周辺は、花崗斑岩(貫入岩)の急冷周縁相だと思われます。 学生の頃、大学の先生から、「急冷周縁相とは、教科書では『貫入岩などの岩石が他の岩石に入り込んだとき、接触部は他の岩石に急に冷やされるために鉱物が成長できずに小さくなる』と書かれてあるけれど、あれは間違いだ。貫入岩がマグマとして他の岩石に入り込むときは、すでにマグマ中に鉱物の一部が結晶として晶出している。だから、その晶出した結晶が小さくなるはずがない。これは流体力学の問題で、一定の方向にマグマが流れている時、接触面は冷やされて粘性が高くなる。そのため、マグマの動きが遅くなり、大きな結晶は流れの速い中央部の方にもっていかれてしまう。そのため、冷えやすい接触部に近い部分(周縁部)は大きな結晶が存在しないのだ。」と聞き、今でも印象に残っています。 急冷周縁相は地質現象のよく知られたものの一つです。露頭観察では見られることがあっても、一目でわかるような場所は少なく、明確にわかるような写真はなかなか撮りにくいものです。下の写真は、上の写真と同じ露頭で、急冷周縁相の部分(右側の写真)とその他の部分(左側の写真)を並べたものですが、鉱物の大きさの違いがよくわかると思います。 美濃地学 - 地学のおもしろさを、美濃から (minotigaku.com)

一枚の写真から その6 貫入岩中の流理構造

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  以前、郡上市美並町の中学校に勤務していた先輩教員から、「珪化木のように年輪のようなものが見える石が学校に以前から置いてあり、美並町内で採集したということだけれど、何だと思う?」と聞かれ、実物を見せられました。どっしりした柱状の石でした。縦に平行の細かい縞模様が何本もあり、年輪のように見えましたが、縞模様の中に細かい石英の粒が点在していることは確認できましたので、「石英が入っているので、流紋岩質の溶岩で流理構造が年輪のように見えていると思う。」と答えました。しかし、美並町に流紋岩質の溶岩ってあったかなぁ、とそのときは疑問をもちながらも、流理構造は溶岩にのみ見られるものだと決めつけていました。それから10年以上だった後に、その珪化木のような石の正体を突き止めたとともに、流理構造は貫入岩でも見られることに気付かされました。 上の1枚の写真は、郡上市美並町下田の南の長良川右岸で撮ったものです。貫入岩である花崗斑岩に見られる流理構造だと思われます。流理構造は、中に入っている鉱物の結晶などが平行に配列して縞模様をなす岩石の構造です。粘性の高い流紋岩質マグマが流動している場合、粘性が高いためマグマは均質になることなく、引き伸ばされたり、押し縮められたりすることによって、中に入っている鉱物などが平行に並び、不均質が縞模様として残るのです。流紋岩という言葉自体、流理構造を示す岩石という意味です。そのため、溶岩で見られる構造と思い込んでいましたが、ここでは花崗斑岩という貫入岩で見られるのです。 流理構造は、他の岩石(ここでは美濃帯堆積岩類中の混在岩)との接触部から40 cm ~75 cm の幅で存在しています。流理構造の見られる部分は、鉱物結晶は1 mm 以下でわかりにくいです。この流理構造の見られる部分は接触部近辺であるため、他の部分と比べると冷えやすく、粘性をもちながら流動し、その跡が縞として残ったのだと思います。 下の写真は、流理構造が見える露頭を少し離れて撮ったもので、下半分の黒い岩石は混在岩(泥岩の中に砂岩などの岩塊が混ざっている岩石)、上半分の白っぽい岩石は花崗斑岩です。 美濃地学 - 地学のおもしろさを、美濃から (minotigaku.com)...

一枚の写真から その5 溶結凝灰岩中の柱状節理

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   この写真は、岐阜県郡上市高鷲町穴洞の長良川左岸露頭を撮ったものです。白鳥流紋岩の溶結凝灰岩中に見られる柱状節理で、長良川沿いで見られる柱状節理では一番見事な露頭だと思います。 この露頭では、柱状節理が高さ10m弱で、数10mにわたって見られます。柱状の岩石の幅は70cm~1m数10cmです。 前回紹介した露頭は、同じ溶結凝灰岩の柱状節理の断面と思われる露頭でしたが、ここでは柱状節理が側面から見られ、まさに岩石の柱が連続しているのがわかります。 柱状節理は、火山噴出物が冷却する際に体積が小さくなる(縮む)ため隙間ができ、それがもとになって連続的な割れ目が形成されたものです。その割れ目によって、岩石の柱が束ねられたような状態で露出しています。 柱状節理で有名なのは、兵庫県豊岡市の玄武洞公園内の玄武洞や青龍洞などでしょう。六角柱状の玄武岩の柱が連続的に規則正しく並んでいるのが見られます。 前回紹介した溶結凝灰岩の柱状節理の断面と考えられるものは、三角形、四角形などをしていたように、上の写真の柱状節理も見えている柱の角の大きさからすると三角柱や四角柱(直方体)をしているように思われます。 岐阜県では、溶結凝灰岩の柱状節理は、 郡上市和良町鹿倉の濃飛流紋岩が知られています(下の写真)。ここの柱状節理も柱の 角の大きさからすると三角柱や四角柱(直方体)をしているように思われます。 美濃地学 - 地学のおもしろさを、美濃から (minotigaku.com)

一枚の写真から その4 溶結凝灰岩の柱状節理の断面でしょうか?

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  上の写真は、郡上市白鳥町中切の長良川沿い右岸河床、つり橋の上流に見られる溶結凝灰岩(白鳥流紋岩)を撮った一枚です。この露頭を初めて見た時、正直、「なんだろう?」と思いました。分布状況から、溶結凝灰岩であることは間違いないです。しかし、割れ目で囲まれた三角形や四角形、五角形の中に白くて丸っこいものが一つずつ入っています。平面でとらえると、核の部分をもつ三角形や四角形、五角形が隙間なく組み合わさったものです。一辺の長さは 1 m~ 2.5 mほどです。 立体でとらえるとどうでしょうか。この断面が柱状につながっていれば、柱状節理でしょうか。その中心付近に丸っこく同じ材質の白っぽい岩石が入っています。露頭を見て回ると、違う場所では、丸っこい白っぽい岩石が円柱状に伸びているところが確認できます(下の上写真)。また、丸っこい白っぽい岩石が放射状に割れているものもありました(下の下写真)。それらから判断すると、三角形や四角形、五角形というのは柱状節理の断面を見ていて、冷え方の違いから、それぞれの柱状節理の中央部分に円柱状の核の部分が見られるようになったのでしょうか。 美濃地学 - 地学のおもしろさを、美濃から (minotigaku.com)