一枚の写真から その23 川原の石により興味をもってもらえるように

 

上の写真は、今から24年前(西暦2002年)に、木曽川に架かる愛岐大橋下で川原の石観察会を行ったときの写真です。「岐阜県の地学を学ぶ会」の活動の一環です。地質を学んできた先輩や同年代の方々(主に教員)と1998年(平成10年)に「岐阜の地学を学ぶ会」という会を立ち上げ、一般を対象に地学に関する講演会と岐阜県内の地質見学会を年に2回ずつ行ってきました。14年間続きました。その中で、身近な川原の石についても、一般の方に石の見方を伝え、石に興味を持ってもらおうというねらいで、長良川沿いや木曽川沿いで数回川原の石観察会を行いました。

自然観察というと、植物観察、昆虫観察、野鳥の鳴き声を聞くバードウォッチング、夜空の天体観測、川や海の生物調査(カワゲラウォッチングなど)があげられます。なかなかそこに岩石や地層などが入りません。岩石の観察には、地質学的な知識が必要となり、専門的で少しハードルが高いと感じられるのかもしれません。しかし、岩石や地層の観察は、地球が歩んできた歴史の一部を観察しているのです。まさに自然観察です。地球の歩みの一部を理解するには、岩石や地層を知ることは欠かせないはずです。そのためにも岩石(石ころ)や地層の理解をもっと広めていかないと…と思うのです。

石(岩石)は、前回(一枚の写真からその22)も書きましたが、成り立ち(成因)に基づいて名前がつけられているため、岩石に残されている成り立ちを読み取ることができなければ、名前はなかなかわからないのです。図鑑による岩石の写真だけでは、成り立ちをなかなか読み取ることができません。そのため、川原の石の場合、次の2点が大切になってきます。

・どのような成り立ちが石のどこに表れているか、特徴を知った上で観察すること

・川の上流に石のふるさとがあるので、上流部がどのような地質でできているかを把握すること

後者については、川の上流の地質図が不可欠となります。全国的には産総研地質調査総合センターが地質図を整備しています。岐阜県の地質は、他の県と比べても詳しく調査研究されていますが、その今まで研究結果は岐阜県全体の詳細な地質図として整理され、かつそれを誰でも見られる形でWebの地質図として公開(2015年)されました。その立役者が岐阜大学の小井土名誉教授(故人)で、「ジオランドぎふ」で検索すればすぐ岐阜県内の地質図を見ることができます。

前者については、成り立ちは構成する粒子や鉱物の特徴、および石の組織に表れます。そのため、肉眼でもこのような見かけなので、きっとこのように形成されたのだろうと推理できるようになれば、石がわかってきます。詳しく調べるには、本来は石を光が通過するほどうすく削り、鉱物の光学的な性質を可視化できる偏光顕微鏡を使って観察する必要があります。しかし、肉眼でも成り立ちがわかりやすい典型的な石をくりかえして観察することによって、他の石でも成り立ちが読み取れるようになってきます。

今回(令和8年度前期)、岐阜県の関市(約8万人の市)で生涯学習として成人学校の講師の依頼を受け、少しでも石ころの魅力を伝え、興味をもってもらおうと準備しています。同じように行われる他の講座(スマホ講座、薬膳料理教室、切り絵アート講座、コーヒー教室、ヨガ教室など)は、募集期限内に定員20名に達しましたが、さすがに川原の石の観察では定員に達することはありませんでした。それでも14名の方が申し込まれました。5名以下の申し込みなら講座は開講されないということでしたので、心配でしたが、開催されることになり安心しました。定員に達しなかったため、募集を延長したところ、最終的には18名になりました。

川原や海辺の石ころの本については、フリーの編集ライターである渡辺一夫さんが何冊も書かれています。岩石や地質についての専門家ではなく、小さい頃から純粋に石が好きで、全国や海外を回って石の写真を撮り、それを図鑑的な書籍として何冊も出版されています。出版されたのが、2002年~2016年なので、私は教員として勤務しており、なかなか忙しい毎日を過ごしていた頃でした。そのため、定年退職したら、何とか連絡をとって渡辺さんにお会いして、石についてのお話を聞けないだろうかと思っていました。しかし、平成30年(2018年)に亡くなられてしまい、本当に残念です。2018年6月10日に「素敵な石ころの見つけ方(中公新書ラクレ626)」を出版されたのですぐ購入をしましたが、そこに亡くなられていることが書かれてあり、ショックを受けたものです。専門家ではない方が石の魅力に引かれ、石を探し回り、本として何冊も出版されているのです。

「素敵な石ころの見つけ方」の「はじめに」には次のように書かれてあります。「列島である日本の国土には、世界でもまれに見る、美しく変化に富んだ景観が広がっています。……川原でも海辺でも、水が切り刻んだ息を呑むような景観に思わず目を奪われてしまいます。ただし、見事な景観を前に、足元の石ころにまで目を留める人はほとんどいないのではないでしょうか。そこであえて、足元に目を向けてみませんか? なぜなら、「自然の営み」そのものを直接手に取ることができる存在こそ、転がっている「石ころ」だからです。景観の美しさとは、自然が途方もない時間をかけて刻み、生み出した、偉大な彫刻そのもの。そして彫刻作りの過程で刻まれた無数の岩片は、流れをくだり、磨かれ、ついには川原に広がり、海岸へと運ばれ、足元の石ころの一つとなります。」

石ころ一つ一つには、地球が生まれ歩んできた自然の営みの一部が刻まれています。そして、地球の一部が無数の岩片となり、流され運ばれ、磨かれ、直接手に取ることができる存在となります。それが石ころなのです。石ころは、地球が歩んできた歴史を語るという自然科学の面と、自然の造形が生み出した美しさという美術的な面を持ち合わせています。

渡辺一夫さんが書かれた書籍の一部

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