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一枚の写真から その9 変形構造であるブーディン構造

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  上の写真は、岐阜県関市洞戸栗原と飛瀬の境界部付近にある露頭の一部を撮ったものです。板取川沿いの右岸露頭で、全体的には層状チャートです。 ここの層状チャートは、チャート層の間にはさまっている泥岩層が厚いです。チャート層は白色~淡青灰色をしていて、数cm~10cmほどの厚さです。間にはさまる泥岩層は灰色(部分的に暗青灰色)をしていて、1cm~15cmほどの厚さです。よく見かける層状チャートとは異なり、チャート層の部分が途切れたり、変形したりしています。 この写真では、白っぽいチャートが横に連なるウインナーソーセージのようになっています。このような連なったソーセージのように見える構造のことを、フランス語でソーセージを指すブーディンをとって、ブーディン構造と言います。層状チャートは本来チャート層と泥岩層が交互に積み重なったものですが、この露頭では地層面に平行な引張力(ひっぱりの力)によって、割合硬いチャート層が引きちぎられ、その間を流動性のある泥の層が埋めたと解釈できます。チャート層の間に挟まる泥岩層がまだ固結していない時の変形だと思われます。 露頭の他の部分では、下の写真のようなところもあり、チャート層が変形しているのがわかります。変形したチャートの間を泥岩層が埋めていますので、ブーディン構造と同様に泥岩層はまだ固結していない流動可能な状態の時の変形でしょう。 露頭全体をパノラマで撮ったもの 美濃地学 - 地学のおもしろさを、美濃から (minotigaku.com)

一枚の写真から その8 滝にかかる虹

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この写真は、岐阜県郡上市高鷲町西洞の国道 156 号沿いすぐ西側で見られる駒ヶ滝を撮ったものです。10月初旬、よく晴れた昼ごろに撮りました。滝にかかる虹が写っています。虹は、自然現象としては雨上がりに太陽と反対方向に出ること、また、屋外のプールのシャワーでは太陽光が上から降り注いでいる時に足もとのコンクリートなどに現れることが知られています。水滴によって、プリズムと同じはたらきで光が7色 (本当は、連続したもので7色と分けられませんが) に分かれて見えるということは知られていますが、なぜ虹が見られるかを説明しようとするとなかなか難しいものです。 太陽光線が雨粒(水粒)に入って、その光が屈折や反射をして、人の眼に届くと虹が見えます。まず、ある角度で水滴に入った光が屈折をし、光の波長によって屈折率が異なるため、7色に分かれます。その色に分かれた光が水滴の中を進み、水滴の端(水と空気の境)で反射をし、最終的に空気中へ出てきます。空気中に出た7色の光は真っすぐ進みます。そして、その光が人の目に届いたとき、虹が見えるのです。そのため、太陽の位置と水滴、そして人の位置によって、虹が見えるかどうかが決まるのです。 あまり知られていないかもしれませんが、虹の外側には色の並びが逆のうすい虹がもう1本かかります。太陽光線が水滴中で屈折したり反射したりして、最終的に人の目に届くのですが、水滴に入る光の角度によって2通りの通り道があるのです。1本は水滴に入って屈折→反射→屈折して空気中に出てくる光、もう1本は水滴に入って屈折→反射→反射→屈折して空気中に出てくる光です。前者の光と比べて、後者の光は反射が2回起こるため、光の強さが弱くなり、かつ光の並び方が逆になってしまうのです。そのため、うすい虹(副虹)は鮮やかに見える虹(主虹)の外側に逆の色の並びで見えるのです。 このように、虹が見えるしくみを説明するのはなかなか難しいのですが、虹が見える条件としては、 ・太陽の位置は虹が見える場所の反対側にあり、強い太陽光線が雨粒、水粒に当たること。そのため、虹を見るには太陽光を背にすることになります。 ・虹が見える場所にプリズムと同じはたらきをする雨粒、水粒が多くあること。 ...

一枚の写真から その7 火成岩の急冷周縁相

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上の写真は、郡上市美並町黒地の長良川沿い左岸露頭の写真で、美濃帯堆積岩類のチャートに貫入している花崗斑岩です。シャープペンが置いてある周辺は鉱物の結晶がほとんど見えなくて、縦に灰色のラインが何本か入っています。一方、写真の左端近くには白い鉱物(長石)が点在しているのがわかります。シャープペンが置いてある周辺は、花崗斑岩(貫入岩)の急冷周縁相だと思われます。 学生の頃、大学の先生から、「急冷周縁相とは、教科書では『貫入岩などの岩石が他の岩石に入り込んだとき、接触部は他の岩石に急に冷やされるために鉱物が成長できずに小さくなる』と書かれてあるけれど、あれは間違いだ。貫入岩がマグマとして他の岩石に入り込むときは、すでにマグマ中に鉱物の一部が結晶として晶出している。だから、その晶出した結晶が小さくなるはずがない。これは流体力学の問題で、一定の方向にマグマが流れている時、接触面は冷やされて粘性が高くなる。そのため、マグマの動きが遅くなり、大きな結晶は流れの速い中央部の方にもっていかれてしまう。そのため、冷えやすい接触部に近い部分(周縁部)は大きな結晶が存在しないのだ。」と聞き、今でも印象に残っています。 急冷周縁相は地質現象のよく知られたものの一つです。露頭観察では見られることがあっても、一目でわかるような場所は少なく、明確にわかるような写真はなかなか撮りにくいものです。下の写真は、上の写真と同じ露頭で、急冷周縁相の部分(右側の写真)とその他の部分(左側の写真)を並べたものですが、鉱物の大きさの違いがよくわかると思います。 美濃地学 - 地学のおもしろさを、美濃から (minotigaku.com)

一枚の写真から その6 貫入岩中の流理構造

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  以前、郡上市美並町の中学校に勤務していた先輩教員から、「珪化木のように年輪のようなものが見える石が学校に以前から置いてあり、美並町内で採集したということだけれど、何だと思う?」と聞かれ、実物を見せられました。どっしりした柱状の石でした。縦に平行の細かい縞模様が何本もあり、年輪のように見えましたが、縞模様の中に細かい石英の粒が点在していることは確認できましたので、「石英が入っているので、流紋岩質の溶岩で流理構造が年輪のように見えていると思う。」と答えました。しかし、美並町に流紋岩質の溶岩ってあったかなぁ、とそのときは疑問をもちながらも、流理構造は溶岩にのみ見られるものだと決めつけていました。それから10年以上だった後に、その珪化木のような石の正体を突き止めたとともに、流理構造は貫入岩でも見られることに気付かされました。 上の1枚の写真は、郡上市美並町下田の南の長良川右岸で撮ったものです。貫入岩である花崗斑岩に見られる流理構造だと思われます。流理構造は、中に入っている鉱物の結晶などが平行に配列して縞模様をなす岩石の構造です。粘性の高い流紋岩質マグマが流動している場合、粘性が高いためマグマは均質になることなく、引き伸ばされたり、押し縮められたりすることによって、中に入っている鉱物などが平行に並び、不均質が縞模様として残るのです。流紋岩という言葉自体、流理構造を示す岩石という意味です。そのため、溶岩で見られる構造と思い込んでいましたが、ここでは花崗斑岩という貫入岩で見られるのです。 流理構造は、他の岩石(ここでは美濃帯堆積岩類中の混在岩)との接触部から40 cm ~75 cm の幅で存在しています。流理構造の見られる部分は、鉱物結晶は1 mm 以下でわかりにくいです。この流理構造の見られる部分は接触部近辺であるため、他の部分と比べると冷えやすく、粘性をもちながら流動し、その跡が縞として残ったのだと思います。 下の写真は、流理構造が見える露頭を少し離れて撮ったもので、下半分の黒い岩石は混在岩(泥岩の中に砂岩などの岩塊が混ざっている岩石)、上半分の白っぽい岩石は花崗斑岩です。 美濃地学 - 地学のおもしろさを、美濃から (minotigaku.com)...

一枚の写真から その5 溶結凝灰岩中の柱状節理

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   この写真は、岐阜県郡上市高鷲町穴洞の長良川左岸露頭を撮ったものです。白鳥流紋岩の溶結凝灰岩中に見られる柱状節理で、長良川沿いで見られる柱状節理では一番見事な露頭だと思います。 この露頭では、柱状節理が高さ10m弱で、数10mにわたって見られます。柱状の岩石の幅は70cm~1m数10cmです。 前回紹介した露頭は、同じ溶結凝灰岩の柱状節理の断面と思われる露頭でしたが、ここでは柱状節理が側面から見られ、まさに岩石の柱が連続しているのがわかります。 柱状節理は、火山噴出物が冷却する際に体積が小さくなる(縮む)ため隙間ができ、それがもとになって連続的な割れ目が形成されたものです。その割れ目によって、岩石の柱が束ねられたような状態で露出しています。 柱状節理で有名なのは、兵庫県豊岡市の玄武洞公園内の玄武洞や青龍洞などでしょう。六角柱状の玄武岩の柱が連続的に規則正しく並んでいるのが見られます。 前回紹介した溶結凝灰岩の柱状節理の断面と考えられるものは、三角形、四角形などをしていたように、上の写真の柱状節理も見えている柱の角の大きさからすると三角柱や四角柱(直方体)をしているように思われます。 岐阜県では、溶結凝灰岩の柱状節理は、 郡上市和良町鹿倉の濃飛流紋岩が知られています(下の写真)。ここの柱状節理も柱の 角の大きさからすると三角柱や四角柱(直方体)をしているように思われます。 美濃地学 - 地学のおもしろさを、美濃から (minotigaku.com)

一枚の写真から その4 溶結凝灰岩の柱状節理の断面でしょうか?

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  上の写真は、郡上市白鳥町中切の長良川沿い右岸河床、つり橋の上流に見られる溶結凝灰岩(白鳥流紋岩)を撮った一枚です。この露頭を初めて見た時、正直、「なんだろう?」と思いました。分布状況から、溶結凝灰岩であることは間違いないです。しかし、割れ目で囲まれた三角形や四角形、五角形の中に白くて丸っこいものが一つずつ入っています。平面でとらえると、核の部分をもつ三角形や四角形、五角形が隙間なく組み合わさったものです。一辺の長さは 1 m~ 2.5 mほどです。 立体でとらえるとどうでしょうか。この断面が柱状につながっていれば、柱状節理でしょうか。その中心付近に丸っこく同じ材質の白っぽい岩石が入っています。露頭を見て回ると、違う場所では、丸っこい白っぽい岩石が円柱状に伸びているところが確認できます(下の上写真)。また、丸っこい白っぽい岩石が放射状に割れているものもありました(下の下写真)。それらから判断すると、三角形や四角形、五角形というのは柱状節理の断面を見ていて、冷え方の違いから、それぞれの柱状節理の中央部分に円柱状の核の部分が見られるようになったのでしょうか。 美濃地学 - 地学のおもしろさを、美濃から (minotigaku.com)

一枚の写真から その3 地質の違いと山の形

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  上の写真は、岐阜県美濃市の長良川東方にある松鞍山(標高 316m )を南から撮ったものです。南から見ると、台形の山の上に三角形の山が乗っているような山の形です。南から撮った写真ではわかりにくいのですが、山の左側にも山頂があり、左の山頂と右の山頂の間が凹むという山の形をしているのです。地形図では全体で松鞍山という記載になっていますが、地元では左の山頂を前平山と呼び、右側の高い方を松鞍山と呼んでいます。地質図を見ると、大部分はチャート層(地質図ではオレンジ色)でできていて、砂岩層(地質図では黄色)が南東から北西にかけて挟まっているという分布をしています。砂岩層がチャート層と比べて浸食されやすいため低くなり、その結果一般的な山のイメージとは違い、南から見ると左部分が削られたような形になっています。 このように、松鞍山は地質の違いで浸食が異なり、それが山の形をつくりだしているのです。地質が反映されている山の一例です。 下の写真は、松鞍山を北から撮ったものです。「松鞍山」の下に二つの山頂がありますが、「山」の下が前平山、「松」の左下が松鞍山です。南から見るよりも真中が凹んでいるのがわかると思います。長良川鉄道で美濃駅から郡上八幡方向へ向かい、美濃駅出発後約 1 分 20 秒後に撮った写真です。地質図は、 HP「ジオランドぎふ」(岐阜県博物館提供)からとったものです。 美濃地学 - 地学のおもしろさを、美濃から (minotigaku.com)