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一枚の写真から その14 露頭で見られる玄武岩とチャートのマーブル模様

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  この写真は、岐阜県郡上市貝付の東海北陸自動車道の橋脚近くの露頭(長良川右岸の河床露頭)を撮ったものです。灰色に写っているのが玄武岩質溶岩、エンジ色に写っているのがチャートです。インクが混ざったようなマーブル模様をつくっているのがわかります。 この玄武岩質溶岩とチャートは、美濃帯堆積岩類の中の岩石です。美濃帯堆積岩類は、玄武岩質溶岩などの火山岩類とチャートなどの海洋に堆積した堆積岩類からなります。海洋プレートの上に噴出した玄武岩質火山岩類は海底や火山島を形成し、その上に石灰岩、チャート、珪質泥岩などを徐々に堆積させながら大陸へ向かって移動します。海洋プレートは海溝部で大陸の下に沈み込みますが、堆積物は一部が剥ぎ取られ、大陸側から運び込まれた砂岩、泥岩とともに大陸側へ押し付けられ、混じり合った堆積物となります。これが付加体堆積物です。 ここで見られる玄武岩質溶岩とチャートは、マーブル模様のように混ざっていますので、両方がやわらかい状態の時に混ざったと考えられます。ですから、海洋プレート上に堆積したチャート層が固結していないやわらかいうちに、火山島を形成する玄武岩質マグマが噴出し混ざったのだろうと想像できます。高速道路の橋脚の建設のため見られなくなりましたが、建設以前の露頭では玄武岩質溶岩中にチャートの大きな岩塊が入っているのが確認できました。 郡上市貝付の東海北陸自動車道の橋脚近くの露頭 以前見られた玄武岩質溶岩中のチャートの岩塊 美濃地学 - 地学のおもしろさを、美濃から (minotigaku.com)

一枚の写真から その13 珪灰石とチャート石灰岩互層

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  上の写真は、岐阜県関市洞戸尾倉と阿部の境界付近の板取川右岸露頭の一部を撮ったものです。この近辺には、珪灰石という鉱物が見られます。一般的に、珪灰石は石灰岩に花崗岩などのもととなるマグマが貫入し た際、その接触部付近にできる鉱物です。化学式は CaSiO 3 なので、石灰岩中のカルシウム( Ca )とマグマ中の珪酸塩( SiO 2 )が反応してできるのです。この付近に分布するのは美濃帯堆積岩類なので、石灰岩が存在していてもおかしくはないです。しかし、近くに花崗岩体(奥美濃酸性岩類)が分布し熱源はあるものの、直接花崗岩が接触しているわけではなく、花崗岩 などのもととなるマグマ からは珪酸塩( SiO 2 )が供給されていないはずです。そのため、露頭付近に多く分布するチャートから珪酸塩( SiO 2 )が供給されて、珪灰石が形成されたのだろうと漠然と考えていました。しばらく川沿いを歩いていると、下の1枚目の写真に写っている大きな岩塊(赤丸)を見つけました。チャート石灰岩互層の岩塊(転石)です。チャート石灰岩互層があれば、石灰岩から Ca が、チャートから SiO 2 が供給されるので、それが高温による変成で珪灰石( CaSiO 3 )が形成したのではないかと考えました。そして、この岩塊の近くで、上の写真のような露頭に出会ったのです。 詳しく調べたわけではありませんが、肉眼観察からすると、チャート石灰岩互層の石灰岩の部分が珪灰石になっているようです。  下の2枚目の写真は上の写真を少し離れて撮ったもので、下の3枚目の写真は近くの露頭で接写した珪灰石です。 美濃地学 - 地学のおもしろさを、美濃から (minotigaku.com)

一枚の写真から その12 普通の堆積では考えにくいチャート石灰岩互層

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この写真は、美濃市横持の長良川左岸の河床露頭を撮ったもので、美濃帯堆積岩類中のチャート石灰岩互層です。白い岩石と灰色の岩石が交互に堆積しているように見えます。白い岩石は石灰岩で、灰色の岩石はチャートです。国道 156 号の美濃市保木脇新部交差点から県道 324 号を東へ進み、長良川支流の 杏谷合流部の南 50 mほどの露頭ですので、 アクセスはよい露頭です。 「交互に堆積しているように見えます」とまわりくどい書き方をしたのは、研究者によっては、チャートの間に石灰岩が後から入り込んで(貫入して)、見かけ上互層になっていると考えている方もみえるからです。普通に考えると、存在しないはずの岩石なのです。美濃帯堆積岩類中の石灰岩やチャートは、過去に海洋で堆積したものです。石灰岩はサンゴ礁が岩石となったもの、チャートは深海で堆積した放散虫などの生物の遺骸が堆積したものです。石灰岩はサンゴ礁が岩石となったものなので浅い海で堆積し、チャートは深海で堆積します。堆積の場所が違うものが交互に堆積しているというのはおかしくないでしょうか。かつ、石灰岩はCCD(炭酸塩補償深度)という深さより深くなると、水に溶けてしまうため、チャートが堆積するような環境では形成されないのです。ですから、 チャートと石灰岩が繰り返して堆積しているチャート石灰岩互層は考えにくいのです。 しかし、実際にはチャート石灰岩互層はけっこう存在します。このように、チャート石灰岩互層はまだ形成過程がわかっていないのです。地学(地質)には、身近で見られることであってもまだまだわかっていないことがあるのです。 同じ露頭を少し離れて撮ったもの 美濃地学 - 地学のおもしろさを、美濃から (minotigaku.com)

一枚の写真から その11 玄武岩のハイアロクラスタイト

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  この写真は、岐阜県美濃市上河和の長良川左岸沿いで見られる露頭を撮ったものです。玄武岩質岩石ですが、中に多くの角礫状の岩石が入っていて、全体的に同じ色をしているのがわかります。高温のマグマが十分な量の水に急に接すると、急激に冷却し、収縮しばらばらに破砕され、そして固結します。このようにしてできた岩石をハイアロクラスタイトと呼びます。高温の玄武岩質マグマが水中に噴出した場合、主に岩塊として形成したものが枕状溶岩で、主に破砕された破片などが堆積して形成したものがハイアロクラスタイトです。 急激に冷却し、破砕されたため、入っている礫状の岩石(玄武岩)はすべて角礫で、角礫を埋めている部分もすべて玄武岩です。このハイアロクラスタイトが見られると、枕状溶岩と同じように、高温のマグマが水中で噴出したことがわかります。 ハイアロクラスタイトは日本語では水冷破砕岩、水砕岩となりますが、ハイアロクラスタイトと呼ばれることの方が多いようです。水によって急冷し、壊されたものが中に入っているため、一般的な礫岩とは異なり、礫の部分も基質の部分も同じ岩石です。そのため、肉眼では確認できても、写真ではなかなかはっきりとは写りにくいものです。上の写真はバラバラになった玄武岩がわかりやすいと思って載せましたが、いかがでしょうか。下の写真は、同じ露頭を少し離れて撮ったものです。 美濃地学 - 地学のおもしろさを、美濃から (minotigaku.com)

一枚の写真から その10 見事な枕状溶岩

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  上の写真は、岐阜県郡上市八幡町浅柄の長良川右岸の河床露頭を撮ったものです。対岸の道路は国道 156 号で、そのほぼ上を長良川鉄道が通っています。河床露頭では、楕円形の岩石がいくつも組み合わさっているのがわかります。スケールとして置いてあるコンベクスは1mです。この露頭の岩石は玄武岩質溶岩で、平面では楕円形ですが、実際には枕のような形をしているということで、枕状溶岩と呼ばれます。この形が形成されるのは、溶岩の噴出した場所が空気中ではなく水中のためです。溶岩は水と接触すると、外側が急冷し殻をつくります。しかし、内部がまだ熱いため、溶岩は外側の殻を突き破り、まるで歯磨き粉がチューブから搾り出されるように出てくるのです。すると、水によって外側が急冷し殻ができ、再び内部の熱い溶岩が殻を突き破って出てくる…ということを繰り返して、形成されたのです。だから、この枕状溶岩が見られると、水中で噴出したということがわかるのです。 この露頭は以前から見つけられていたのかもしれませんが、私が長良川沿いを歩いて見つけたのは 2004 年 3 月 7 日です。八幡町浅柄から貝付にかけて、美濃帯堆積岩類の玄武岩が分布しているのは知られていましたので、玄武岩の見やすい露頭がないか川沿いを歩いていると、浅柄地区のゴミステーションを川へ降りたところに枕状溶岩の見事な露頭が見られたのです。そして、 2011 年 7 月に出版された「みのひだ地質 99 選(岐阜新聞社発行)」にこの露頭を紹介しました。 長良川沿いで一番見事な枕状溶岩です。 2024 年 12 月に出版された「楽しい溶岩図鑑(小白井亮一著、草思社)」には、日本各地の代表的な枕状溶岩が何箇所か載っており、古い枕状溶岩としてここの露頭が最初に紹介されています。国道 156 号からも、長良川鉄道からも見ることができる露頭で、見事な枕状溶岩が見られる割にはアクセスのよい場所です。 同じ露頭に少し近づいて撮ったもの 長良川鉄道から見た露頭 八幡町浅柄対岸枕状溶岩上り深戸駅出発後約 1 分 50 秒の位置 美濃地学 - 地学のおもしろさを、美濃から (minotigaku.com)

一枚の写真から その9 変形構造であるブーディン構造

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  上の写真は、岐阜県関市洞戸栗原と飛瀬の境界部付近にある露頭の一部を撮ったものです。板取川沿いの右岸露頭で、全体的には層状チャートです。 ここの層状チャートは、チャート層の間にはさまっている泥岩層が厚いです。チャート層は白色~淡青灰色をしていて、数cm~10cmほどの厚さです。間にはさまる泥岩層は灰色(部分的に暗青灰色)をしていて、1cm~15cmほどの厚さです。よく見かける層状チャートとは異なり、チャート層の部分が途切れたり、変形したりしています。 この写真では、白っぽいチャートが横に連なるウインナーソーセージのようになっています。このような連なったソーセージのように見える構造のことを、フランス語でソーセージを指すブーディンをとって、ブーディン構造と言います。層状チャートは本来チャート層と泥岩層が交互に積み重なったものですが、この露頭では地層面に平行な引張力(ひっぱりの力)によって、割合硬いチャート層が引きちぎられ、その間を流動性のある泥の層が埋めたと解釈できます。チャート層の間に挟まる泥岩層がまだ固結していない時の変形だと思われます。 露頭の他の部分では、下の写真のようなところもあり、チャート層が変形しているのがわかります。変形したチャートの間を泥岩層が埋めていますので、ブーディン構造と同様に泥岩層はまだ固結していない流動可能な状態の時の変形でしょう。 露頭全体をパノラマで撮ったもの 美濃地学 - 地学のおもしろさを、美濃から (minotigaku.com)

一枚の写真から その8 滝にかかる虹

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この写真は、岐阜県郡上市高鷲町西洞の国道 156 号沿いすぐ西側で見られる駒ヶ滝を撮ったものです。10月初旬、よく晴れた昼ごろに撮りました。滝にかかる虹が写っています。虹は、自然現象としては雨上がりに太陽と反対方向に出ること、また、屋外のプールのシャワーでは太陽光が上から降り注いでいる時に足もとのコンクリートなどに現れることが知られています。水滴によって、プリズムと同じはたらきで光が7色 (本当は、連続したもので7色と分けられませんが) に分かれて見えるということは知られていますが、なぜ虹が見られるかを説明しようとするとなかなか難しいものです。 太陽光線が雨粒(水粒)に入って、その光が屈折や反射をして、人の眼に届くと虹が見えます。まず、ある角度で水滴に入った光が屈折をし、光の波長によって屈折率が異なるため、7色に分かれます。その色に分かれた光が水滴の中を進み、水滴の端(水と空気の境)で反射をし、最終的に空気中へ出てきます。空気中に出た7色の光は真っすぐ進みます。そして、その光が人の目に届いたとき、虹が見えるのです。そのため、太陽の位置と水滴、そして人の位置によって、虹が見えるかどうかが決まるのです。 あまり知られていないかもしれませんが、虹の外側には色の並びが逆のうすい虹がもう1本かかります。太陽光線が水滴中で屈折したり反射したりして、最終的に人の目に届くのですが、水滴に入る光の角度によって2通りの通り道があるのです。1本は水滴に入って屈折→反射→屈折して空気中に出てくる光、もう1本は水滴に入って屈折→反射→反射→屈折して空気中に出てくる光です。前者の光と比べて、後者の光は反射が2回起こるため、光の強さが弱くなり、かつ光の並び方が逆になってしまうのです。そのため、うすい虹(副虹)は鮮やかに見える虹(主虹)の外側に逆の色の並びで見えるのです。 このように、虹が見えるしくみを説明するのはなかなか難しいのですが、虹が見える条件としては、 ・太陽の位置は虹が見える場所の反対側にあり、強い太陽光線が雨粒、水粒に当たること。そのため、虹を見るには太陽光を背にすることになります。 ・虹が見える場所にプリズムと同じはたらきをする雨粒、水粒が多くあること。 ...