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板取川沿いの地質、露頭 その43 関市洞戸阿部右岸のチャート層と破断した砂岩泥岩互層(熱変成) :関市洞戸阿部板取川の曲流部右岸露頭

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  地質図を見ると、露頭の場所(洞戸阿部の板取川曲流部外側)周辺はオレンジ色( Mch )が分布しています。オレンジ色はおもにチャートからなる地層です。しかし、露頭を見ると破断した砂岩泥岩互層も存在しています。美濃帯堆積岩類は、海洋プレートの上に堆積したり噴出したりしたものが、大陸の縁に移動し、砂や泥など大陸側からの堆積物と一緒になって大陸(現在の日本列島)に付加した付加体堆積物です。そのため、全く別のところで形成したチャートと砂岩泥岩互層が隣り合って分布していたり、チャートの中に砂岩泥岩互層が小規模で入っていたりするのです。この露頭ではチャートが広く分布していますが、砂岩泥岩互層も部分的に見られます。 前回「板取川沿いの地質、露頭その42」で紹介しましたが、国道256号を北進し、新高賀橋を渡ることなく、500m少し進むと右側に空き地があります。車を停め、そこから250m弱国道を西へ進むと、水難死亡現場の表示板があり、その脇に川へ下りる小道があります。川へ下りると露頭があります。東から続いている露頭の西のかどです。ほとんどはチャートですが、破断した砂岩泥岩互層も見られます。砂岩泥岩互層は表面では、楕円形や不定形をした褐色の砂岩が黒色の泥岩の中に入っている形状を示します。砂岩の褐色は、酸化による色だと思います。 地質図において、×地点が露頭の位置です。オレンジ色( Mch )の中にあり、オレンジ色はおもにチャートからなる地層です。右上(北東)には濃いピンク色( OKg )が広く分布しており、高賀花崗岩です。この花崗岩による熱で、変成作用を受けています。写真は五種類ありますが、上の写真は国道256号から東を望んで露頭を撮ったもので、中上の写真は川原へ下りて、北からパノラマで露頭を撮ったものです。中上の写真の露頭は、連続露頭の西の端にあたります。真中の写真は、中上の写真の中央付近を撮ったものです。中下の写真は破断した砂岩泥岩互層に近づいて撮ったもので、位置は中上の写真に書かれてある「砂岩泥岩互層」の「砂」の左上あたりです。下の写真はチャートを北西から撮ったもので、中上の写真に書かれてある右側の「チャート」付近を撮りました。スケールとして置いてあるハンマーと定規の長さは、それぞれ約28cmと約17cmです。真中と下の写真は、同じような写真が2枚並んでいますが、写真の

板取川沿いの地質、露頭 その42 関市洞戸阿部左岸の砂岩泥岩互層の破断とチャート層(熱変成) :関市洞戸阿部左岸の連続露頭

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地質図を見ると、露頭の位置(×地点)の左側はうす茶色( Mal )、右側はオレンジ色( Mch )が分布しています。うす茶色は砂岩泥岩互層からなる地層、オレンジ色はおもにチャートからなる地層です。×地点はそれらの境界部にあたります。関市洞戸栗原から洞戸高見にかけては、砂岩泥岩互層が広く分布し、その中にチャートからなる地層が細長いレンズ状で入っているのがわかります。そのため、板取川沿いには砂岩泥岩互層とチャートが交互に露出しています。 国道256号を北進し、新高賀橋を渡ることなく、新高賀橋から300m強進むと鮎料理店の入口が、さらに200m強進むと右側に空き地があります。車を停め、空き地から徒歩で川へ下りる小道を進むと、川の対岸に連続露頭が見られます。露頭に近づくには川を渡らないといけません。上の写真に写っているのは連続露頭の東端に近いところで、チャートと砂岩泥岩互層が接しているのがわかります。ここの露頭は花崗岩の熱で熱変成を受けています。地質図を見るとわかるように、濃いピンク色で示される花崗岩(高賀花崗岩)が北東に広く分布しています。層状チャートが熱変成を受けたものは、白色をした3cm~10cm厚のチャート層に、灰色をした1mm~2cm厚の泥岩層がはさまれています。全体的に波をうった感じで変形しています。砂岩泥岩互層が熱変成を受けたものは、淡灰色をしたレンズ状の砂岩(幅数mm~3cm、長さ数cm~10cm)が、暗灰色をした泥岩の中に多く入っています。チャートと砂岩泥岩の境界部は、明確な境界ではなく、チャート中に砂岩泥岩互層が入り込んでいるのは確認できます。  写真は五種類ありますが、上の写真は南からパノラマで撮ったもので、中上の写真は上の写真の中央付近を撮ったものです。真中の写真は上の写真(または中上の写真)に写っているハンマー付近を近づいて撮ったもので、チャートと砂岩泥岩互層の境界部です。中下の写真は砂岩泥岩互層の部分を南から撮ったもので、上の写真の白丸がハンマーの位置です。下の写真は、中下の写真のハンマーの左少し下を撮ったもので、淡灰色の砂岩がレンズ状で多く入っているのがわかります。スケールとして置いてあるハンマーと定規の長さは約28cmと約17cmです。中上と真中、中下の写真は、同じような写真が2枚並んでいますが、写真の下の黒丸または白丸を、左の写真は

板取川沿いの地質、露頭 その41 関市洞戸阿部新高賀橋上流の破断した砂岩泥岩互層(熱変成) :関市洞戸阿部新高賀橋上流300mほど左岸河床露頭、鮎料理店裏の右岸河床露頭

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 「板取川沿いの地質、露頭その38」で紹介した露頭をさらに上流へ150mほど進んだところにある露頭です。150mほど進んでいる間に、砂岩泥岩互層の河床露頭が何ヶ所かで見られ、また支流(高賀川)を渡ります。 美濃帯堆積岩類中の砂岩泥岩互層は、河川によって陸地から海洋へ運ばれた砂や泥がもとになっています。一度海洋底で堆積した砂と泥がより深い海洋底へ移動すると、下に粒子の粗い砂が堆積し、その上に粒子の細かい泥が堆積します。それが繰り返されることによって、砂と泥が交互に堆積する砂泥互層がつくられ、それが固結することによって砂岩泥岩互層になります。ここで見られる砂岩泥岩互層は、全体的には互層がきれいに見られるわけではなく、砂岩層が平面上では細長いレンズ状になったり、楕円形になったりしています(破断した砂岩泥岩互層と表現します)。互層がわかる部分では、灰色をした1cm~数cm厚の砂岩層と暗灰色をした1cm~10cm弱厚の泥岩層が確認できます。また、砂岩泥岩互層の層理面は、北東-南西を軸として、北西に55°ほどの傾斜をもっています。この露頭の上流の右岸側沿いに鮎料理店があり、その裏手にも砂岩泥岩互層の露頭があります(この露頭から鮎 料理店裏 の露頭までは直線で160mほどです)。 地質図において、黒色×地点が新高賀橋上流300mほどの左岸河床露頭で、赤色×地点が鮎料理店の裏の露頭です。いずれも地表の堆積層(白色( a )、第四紀の堆積物)の下はうす茶色( Mal )が分布しています。うす茶色は砂岩泥岩互層からなる地層で、それが露出しています。写真は五種類ありますが、下の写真以外は新高賀橋上流300mほど左岸河床露頭で、下の写真は鮎料理店裏の露頭です。上の写真は西からパノラマで撮ったもので、中上の写真は上の写真の中央付近を撮ったものです。真中の写真は、上の写真(または中上の写真)に写っているハンマー付近を近づいて撮ったものです。中下の写真は、砂岩層(淡灰色)が 細長いレンズ状になったり、楕円形になったりしているのがわかるところを西から撮ったもの です。下の写真は、鮎料理店の裏の露頭を北東からパノラマで撮ったものです。スケールとして置いてあるハンマー、定規の長さは、それぞれ約28cm、約17cmです。中上と真中の写真は、同じような写真が2枚並んでいますが、写真の下の黒丸または

板取川沿いの地質、露頭 その40 関市洞戸高賀の渡造橋下流の高賀花崗岩 :関市洞戸高賀の渡造橋下流の露頭(下流50mほどの右岸河床露頭、下流100mほどの河床露頭)

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  前回「板取川沿いの地質、露頭その39」で紹介した高賀渓谷の近くにある高賀自然公園休憩所・駐車場を、さらに北へ300mほど進むと、橋(渡造橋)を渡ります。近くに車を停め、橋の脇から川原へ下り、下流へ進むと花崗岩が露出しています。 花崗岩は、同じような大きさの鉱物結晶が集まってできている岩石です。風化には弱く、構成する鉱物がばらばらになり、表面からはがれていくため、なだらかな面をつくることが多いという特徴があります。そのため、風化がきわだつところや全体的に浸食を受けるところでは、なだらかな、なめらかな曲線的な地形を造り出します。花崗岩は、前回述べたように方状節理がきわだって直線的な造形美を造り出す場合と、今回述べたように風化のため曲線的な造形美を造り出す場合があります。 地質図において、×地点は露頭の位置ですが、白色( a )の中にあり、白色は第四紀の堆積物です。周囲は濃いピンク色( Okg )が広く分布していて、高賀花崗岩です。第四紀の堆積物の下に分布している高賀花崗岩が露出しているのです。写真は五種類ありますが、上の写真は渡造橋から下流に50m弱に露出する花崗岩を南からパノラマで撮ったもので、上の写真の中央部を撮ったものが中上の写真です。真中の写真は、上の写真(または中上の写真)に写っているハンマー付近を近づいて撮ったものです。岩石の表面は風化しています。中下の写真は、さらに下流へ50mほど進んだところから上流に向いて南からパノラマで撮ったものです。下の写真は、中下の写真に写っている露頭を西から撮ったものです。いずれの写真でも、花崗岩の丸みあるなだらかな表面がわかると思います。スケールとして置いてあるハンマーの長さは約28cmです。中上と真中の写真は、同じような写真が2枚並んでいますが、写真の下の白丸を、左の写真は左目で、右の写真は右目で見て、重ね合わせるようにすると立体的に見えます。(地質図はHP「ジオランドぎふ」より 岐阜県博物館提供) 美濃地学 - 地学のおもしろさを、美濃から (minotigaku.com)

板取川沿いの地質、露頭 その39 関市洞戸高賀の高賀渓谷(花崗岩) :関市洞戸高賀の高賀渓谷両岸露頭(橋の上から)

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高賀渓谷は板取川の本流沿いではありませんが、板取川沿いでは見られない花崗岩が露出しています。そこで、今回と次回で高賀地区に広く分布する花崗岩(高賀花崗岩)を紹介します。高賀花崗岩については、2020年12月3日「板取川沿いの岩石その13」でも紹介しました。国道256号を関市洞戸事務所から北進し、約5 . 3km進むと右側に新高賀橋があります。その橋を渡って左折し、さらに2 . 1km進むと高賀自然公園休憩所・駐車場がありますので、そこに車を停めます。川の方(東)へ進むと橋があり、そこから北東(上流側)を眺めると、美しい景色が現れます。高賀渓谷です。 板取川やその支流沿いのところどころには、奥美濃酸性岩類と呼ばれる火山岩類が分布しています。この火山岩類は、マグマが噴出して広範囲に広がったものです。そのもとになったマグマが、噴出することなく地下のマグマだまりで冷え固まりました。それが高賀花崗岩だと考えられています。現在地表で見られる花崗岩は、形成された時点では地下深くにあり、それが隆起することによって地表にまで現れたのです。マグマだまりの冷え固まったものが地表で見られるように、この周辺はかなり隆起していて、奥美濃酸性岩類の多くの部分が浸食されています。そのため、連続的に広く分布しているはずの奥美濃酸性岩類は、現在では不連続に分布しているように見えるのです。 花崗岩は地下深くでゆっくり冷え固まった岩石であるため、方状節理が発達しています。立方体や直方体に割れやすく、割れ目に沿って浸食すると、立方体や直方体が目立つ独特な地形をつくり出します。水平面と垂直面をつくり、角がはっきりとした直線的な美しさをもった渓谷という自然の造形美が生まれるのです。  地質図において、×地点が高賀渓谷の位置ですが、白色( a )とうす水色の中に記号あり( a2 )の境目あたりにあります。白色とうす水色の中に記号ありは第四紀の堆積物です。周囲は濃いピンク色( Okg )が広く分布していて、高賀花崗岩です。第四紀の堆積物の下に分布している高賀花崗岩が露出しているのです。写真は五種類ありますが、下の写真以外は高賀渓谷を橋の上から北東を望んで撮ったものです。上の写真はパノラマで、中上の写真は縦長で撮りました。真中の写真は上の写真の中央付近を、中下の写真は中上の写真の中央付近を撮ったものです。

板取川沿いの地質、露頭 その38 関市洞戸阿部新高賀橋上流左岸のチャートと砂岩泥岩互層、角礫を含む泥岩の貫入 :関市洞戸阿部の新高賀橋上流200m弱の左岸河床露頭

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  2020年12月2日「板取川沿いの岩石その12」で紹介した洞戸阿部の新高賀橋上流左岸河床で見られるチャートと砂岩泥岩互層の露頭を再度紹介します。関市洞戸事務所東の国道256号を北進し、約5 . 3km進むと右側に新高賀橋があります。右折して橋を渡って進むと高賀渓谷に通じます(次回紹介します)。新高賀橋を渡って左折し、50mほど進んだ左手に川原へ下りる階段があります。高賀神水庵の駐車場入口の手前100mほどのところです。階段を下りて川原に出て上流へ進むと、白っぽい岩石が露出しています。チャートです。熱変成を受けていると思われます。対岸(右岸)に露出している岩石(前回紹介)も同様にチャートです。また、近く(北側)に黒っぽい岩石が何箇所か露出していますが、破断した砂岩泥岩互層です。チャートと砂岩泥岩互層が接触している部分もあります。また、チャートの中に数mm~数cm径のチャートの角礫を含む泥岩が入り込んでいる(貫入している)部分もあります。 地質図において、×地点が露頭の位置ですが、オレンジ色( Mch )とうす茶色( Mal )の境界部です。オレンジ色はおもにチャートからなる地層で、うす茶色は砂岩泥岩互層です。写真は五種類ありますが、上の写真は南からパノラマで撮ったもので、中上の写真は上の写真の中央付近を撮ったものです。真中より左側に露出している全体的に白っぽい岩石はチャートで、右端に近いところで川原から少し露出している黒っぽい岩石は砂岩泥岩互層です。真中の写真は、上の写真の中央の露頭(または中上の写真の露頭)を南東から撮ったものです。写真の中央左において、白っぽいチャートの中に角礫を含む灰色の泥岩が25cm~30cmの幅で貫入しています。前述しましたが、貫入している泥岩には、数mm~数cm径のチャートと思われる角礫が点在しています。中下の写真は同じ露頭の下部を北東から横長で撮ったもので、チャートと砂岩泥岩互層の接触部です。真中の写真の右下の部分を右側から撮りました。中下の写真の中央部を撮ったものが下の写真です。チャートと砂岩泥岩互層の接触部ははっきりしていて、接触面は北東-南西~北北東-南南西に軸をもち、西北西~北西に50°ほど傾いています。スケールとして置いてあるハンマーの長さは約28cmです。中上と下の写真は、同じような写真が2枚並んでいますが、写真の下の

板取川沿いの地質、露頭 その37 関市洞戸阿部新高賀橋上流右岸の層状チャートの熱変成 :関市洞戸阿部の新高賀橋上流100mほどの右岸露頭

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国道256号で洞戸尾倉の集落を過ぎ、しばらくすると尾倉と阿部の境界表示板があります。そこから、400mほど東へ進むと、右手に板取川を渡る新高賀橋があります。近くに車を止め、バス停の脇にある階段を使って川原へ下ります。上流へ向かい、橋の下をくぐって、橋から100mほど進むと露頭があります。熱変成している層状チャートです。 洞戸阿部の新高賀橋周辺の岩石は、北東に分布する花崗岩(高賀花崗岩)による熱の影響で熱変成を受けています。層状チャートも熱変成を受け、石英などが再結晶していますが、層状チャートであった痕跡を残しています。露頭の表面を見ると、白色~淡灰色の中に、何本もの灰色をした帯が入り、縞模様(層状)になっています。白色~淡灰色はチャート層が熱変成したもので、1cm~5cmの層厚の部分が多いです。また、灰色はチャート層の間にはさまる泥岩層が熱変成したもので、0 . 5cm~2cmの層厚の部分が多いです。その縞模様の面の走向・傾斜を測ると、N60°W35°Nでした。また、表面は白っぽく見えますが、割ると灰色~暗灰色をしていて、層状であることがわかりにくくなっています。  地質図において、×地点が露頭の位置で、オレンジ色( Mch )の中にあり、オレンジ色はおもにチャートからなる地層です。写真は五種類ありますが、上の写真は露頭を南西からパノラマで撮ったもので、中上の写真は上の写真の中央部を撮ったものです。真中の写真は、上の写真(または中上の写真)に写っているハンマー付近を近づいて撮ったものです。中下の写真は、ハンマーの下方を近づいて同じく北西から撮ったものです。真中と中下の写真を見ると、白いチャート層の中に、黒っぽい(灰色の)薄い泥岩層が右上から左下に縞模様のように入っているのがわかります。下の写真は、同じ露頭を西(ななめ左)から撮ったものです。スケールとして置いてあるハンマーと定規の長さは、それぞれ約28cmと約17cmです。中上と真中、下の写真は、同じような写真が2枚並んでいますが、写真の下の白丸または黒丸を、左の写真は左目で、右の写真は右目で見て、重ね合わせるようにすると立体的に見えます。(地質図はHP「ジオランドぎふ」より 岐阜県博物館提供)   美濃地学 - 地学のおもしろさを、美濃から (minotigaku.com)