一枚の写真から その12 普通の堆積では考えにくいチャート石灰岩互層

この写真は、美濃市横持の長良川左岸の河床露頭を撮ったもので、美濃帯堆積岩類中のチャート石灰岩互層です。白い岩石と灰色の岩石が交互に堆積しているように見えます。白い岩石は石灰岩で、灰色の岩石はチャートです。国道156号の美濃市保木脇新部交差点から県道324号を東へ進み、長良川支流の杏谷合流部の南50mほどの露頭ですので、アクセスはよい露頭です。










「交互に堆積しているように見えます」とまわりくどい書き方をしたのは、研究者によっては、チャートの間に石灰岩が後から入り込んで(貫入して)、見かけ上互層になっていると考えている方もみえるからです。普通に考えると、存在しないはずの岩石なのです。美濃帯堆積岩類中の石灰岩やチャートは、過去に海洋で堆積したものです。石灰岩はサンゴ礁が岩石となったもの、チャートは深海で堆積した放散虫などの生物の遺骸が堆積したものです。石灰岩はサンゴ礁が岩石となったものなので浅い海で堆積し、チャートは深海で堆積します。堆積の場所が違うものが交互に堆積しているというのはおかしくないでしょうか。かつ、石灰岩はCCD(炭酸塩補償深度)という深さより深くなると、水に溶けてしまうため、チャートが堆積するような環境では形成されないのです。ですから、チャートと石灰岩が繰り返して堆積しているチャート石灰岩互層は考えにくいのです。しかし、実際にはチャート石灰岩互層はけっこう存在します。このように、チャート石灰岩互層はまだ形成過程がわかっていないのです。地学(地質)には、身近で見られることであってもまだまだわかっていないことがあるのです。

同じ露頭を少し離れて撮ったもの

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